ブリアール公爵家の第二夫人

大城いぬこ

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焦らされた仕返し

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 ジェイデン様を思い出しても悲しみだけに支配されることはなくなった。 

 優しい微笑み、私の名を呼ぶ穏やかな声、半分白くなった髪も顔のしわも目蓋を閉じれば簡単に浮かび、触れた時の感触まで甦る。

 鮮明な記憶は、以前なら浮かべば涙が溢れたけれど、今は共に過ごして感じた喜びと愛しい想いが、懐かしさと共に沸き上がる。 

「会いたいです」 

 私を救い愛してくれた人… 

「…そうか」 

 またブリアール領地へ行きたい。だけど一人では行かない。 

「ディオルド様」 

 触れる膝に手を伸ばせば、足を引かれてしまった。触れてほしくないのかと思い、顔を見れば視線をそらされてしまった。 

「ディオルド様」 

 視線だけそらす顔に手を伸ばせば、横へ動いて触れられなかった。険しい顔をしながら、腕は組んだままおかしな体勢になってでも私の手を避けるディオルド様に頬が緩む。 

「ふふ、逃げていますのね」 

「なにを言っている」 

「面白いディオルド様…私も待ち遠しかった」 

 私の言葉にディオルド様は変な体勢のまま、臙脂の瞳だけ私に向けた。 

「…なにがだ」 

「閨です」 

 ディオルド様の顔が険しさを増していく。みるみるうちに顔が強ばり、眉間にしわが寄り眉尻まで上がっていく。 

「…繋がる…喜びが待ち遠しい」 

「ロシェル」 

「はい」 

「よせ」 

「…わかりました」 

 ディオルド様は前回の馬車でのことを繰り返さないようにしているのね。 

「ディオルド様が我慢しているのですから私も我慢します」 

 険しい顔に赤みが増し、唇が震えている。 

「…お…お前から触れるなら…い…いいぞ…俺は触れん」 

「我慢しますわ」 

「…ちょっとなら…いいぞ」 

 目尻を吊り上げ、睨むように見ている愛しい人に微笑む。

 手を伸ばす仕草をすると臙脂の瞳は目蓋を下ろして隠れてしまった。 

「いや!駄目だ…絶対に我慢できん…」 

「ふふふ!」 

 ディオルド様がこんなに楽しい人とは誰も知らないわ。私だけのディオルド様。 



「お前が淫らに誘った…わかるな…?ロシェル…」 

 誘ったのかもしれない…でもあれが淫らと言われるの?…ただ手を伸ばした…だけ… 

「ん…」 

「く…ぐ……お前の何倍も俺は我慢していたぞ…覚えたての欲の威力は…とてつもなくてな…なんて匂いだ…味までするようだな…」 

 ディオルド様の整えていた髪が乱れて揺れる。体に熱い液体が飛んできた感覚がしたけど、恥ずかしい体勢と光景に意識が鈍る。 

「ディオ……もう…」 

 私のお尻を抱え上げて秘所に顔を埋めながら話すディオルド様を止めたかった。 

「絶頂すると疲弊する…だが…お前を喜ばせたいんだ…」 

「あ…う…」 

「だからな…寸止め…してる…ロシェル…疲れないだろ?」 

 ディオルド様の舌が刺激の強いところを避けては舐めて、中に入れた指は動かしてくれず埋めたまま、時折舌が入れられ蠢いて叫んでしまっても、弾けるような快感を得る前に止めてしまうから、下腹がおかしくなっている。 

「気を失うと…気にしてたろ?」 

 果てしない快感ともどかしさが積み重なる。 

「ああ…指を締め付けているな…」 

 私の秘所を吸いながら、見つめる臙脂色に乞いたい。 

「ディオ……ほしい…です」 

 私からディオルド様の局部は見えない。準備ができたのかわからない。でも子種の匂いがするならきっと硬く大きくなっているはず。 

「…湯に入らねば…と…焦らしたろ」 

 離邸に入った途端、私を抱き上げ、諌めるエコーを振り切って寝室に入るや否や大きな口が私の口を覆って、力強い舌が強引に入って喉奥まで触れて、ドレスの留め具を壊して剥いでいくディオルド様に、夜まで待ってと、せめて湯で清めてからと止めたことが気に入らなかったようで、何度も責められている。 

「悪い女だ…ロシェル…俺の忍耐力を試したな…」 

「ディオ…ド…さま」 

 待ってくれなかった、結局湯にも入らず外は明るいのに裸にされたわ。 

「なんて匂いだ…これだけで…」 

「ディオ…中に…中にお願い…」 

 上げられた秘所から、ディオルド様の唾液なのか私の出す膣液なのか混ざったものなのか、液体が伝い落ちてくる感覚にも喘いでしまう。 

「…中に…なにを…欲しい?」 

 愛しく思う臙脂の瞳が意地悪そうに見えるのは勘違いではないわ。 

「…局部で…埋めて…入れて…」 

「…ロシェル…ぐ…」 

 ディオルド様は苦しそうに呻き、体を強ばらせ私の中に入れていた指を動かした。 

「ああ!」 

「駄目だ…イクな…もう限界だ」 

 ディオルド様はやっと私のお尻を離して寝台に置き、開いた足の合間に腰を押し付け下腹に局部を乗せた。熱く大きな局部が先端から子種を垂らしている。 

「埋めてやる」 

 こんな大きなものが私に入っていたと感心しながら、喜びを思いだし、これから繋がる期待に頬が緩む。 

「中に…中に…奥に…」 

「ああ…」 

 口の周りを濡らしたディオルド様の顔が妖艶に見えて、早く欲しくて願う。 

「欲しい…」 

 ディオルド様は腰を引いて局部を秘所にあて容赦なく奥へ突き入れた。その瞬間、私は叫び弾けた。 




 快楽の入り口二巻…新たな世界への導き…寸止め… 

 俺は密室という馬車を耐え抜いた。ロシェルが欲しい触れたいと言い、誘う仕草にも耐えた。なのに離邸に戻れば、夜まで待てと湯をあびるだのと俺を止め、ドレスを破れば喜びよりも呆れがあったように見えたのは、俺のやましい思いがそう見せていたのか… 

 やましい…そうだ…俺は今夜は余裕を見せて…食事をした後…湯を浴びて…期待なんぞしていないと…月の物が終わったなど知らなかったという顔でロシェルの風呂上がりに間に合うようにと計画していたのに…これだ。 

 馬車で俺の陰茎が待ち遠しい…繋がりたい…喜びたい…ふふふ!!…と欲しがったロシェルに耐えられなかった…なんて匂いだ…この匂いを何度…思い出した…? 

 裸にして足を広げて、自分がなにをされているのかよく見えるような体勢にしてやれば、顔を赤くし、駄目だと顔を振り、舐めるなと言う言葉を聞きながら舐め啜ってやった。

 前戯という前戯をせず、すぐさま秘所に食らいついた時、濡れていなかったが、なぜかそれに興奮し、ならば俺が濡らしてやろうなどと考えながら唾液を送り、喜びといったくせに驚愕の顔をするロシェルに寸止めという上級者向けの戯れをやっていた。

 連続寸止めのせいで、ロシェルの中は突き入れた瞬間、すぐさま絶頂した。高い嬌声と高ぶり過ぎた体のせいで潮まで噴いた。 

 これほど妖艶な姿のロシェルは見たことがなかった。首と背をそらせ両手はシーツを掴み全身を強ばらせ悲鳴を上げるように啼いて子種を搾り取ろうと握りしめる中に抗えず耐えられず強烈な快感に腰を震わせ吐き出した。 

 俺の子種を受ける度に腟内が痙攣し、柔らかくされどきつく密着する肉が、硬いままでいろと言っているようだった。 

「すごいな…ロシェル…寸止めのせいか…ぐ…なんて締め付けだ…安心しろ…まだだ…はは…まだ夜は始まってもいないぞ」 

 今夜は寝かせん、と格好よく言う計画だった。だが夜まで待てなかった。俺は変態のケダモノだ。





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