ブリアール公爵家の第二夫人

大城いぬこ

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誘惑するロシェル






「ほら、寝かしつけてくれるんだろ?」 

「寝すぎて眠れないと言ったから、ピアノでも弾こうかと」 

「今夜はピアノではなくお前の声を聞きながら眠る」 

 私たちは一日、怠惰に過ごした。

 寝台の上でカード遊びをしたり、時折運ばれてくる報告書を読んで、指示を書き込むディオルド様の横で私は刺しかけの刺繍をしたり。

 今日、私たちが動いたのは寝室と浴室だけだった。 本当に離れず、少し手を伸ばせばすぐに触れるほど近くにいた。

 今は寝台に横になり、向かいあっている。 

「前に話してくれたろ?なんとかの化物」 

「…ふふ…涙を欲しがる怪物?」 

「怪物だったか、それだ。その続きを聞いてないぞ」 

「どこまで話したかしら?」 

「子供部屋に怪物が現れて使用人が駆け込んだところだ、だろ?」 

「ふふ!違います」 

「そんな内容だったろ?」 

「し…」 

 私はディオルド様の唇に人差し指で触れる。口を閉ざしたディオルド様の臙脂を見つめ、毛布のなかの熱い手を探し握る。 

「怪物は恐ろしい顔で子供を泣かせ、その涙をすすります。怪物はそうやって恐怖の涙を糧に生きてきました。ある夜も怪物は子供部屋の寝台の下にいました。大人が眠りにつき、家のなかが静寂に包まれた時、怪物はわざと寝台を揺らしながら這い出たのです」 

 私は繋いだ手を唇に近づける。私の手とは違う、大きくて硬く骨張っている手の甲に口づける。 ディオルド様はただ喉を鳴らしただけで黙っている。 

「その揺れで起きた子供は月明かりが映す怪物を見ても声を上げませんでした。怪物は手を広げ子供を襲う素振りを見せました。それでもその子は首を傾げただけ」 

「その子供は目が」 

 ディオルド様はすぐに口を閉じて、真剣な顔を作った。まるで怒られるのを覚悟したように。

「ふふ…当たり。その子供は目が見えなかったのです」 

 私は愛くるしいこの人に頬が緩んだ。 

「…涙は諦めるしかない」 

「いいえ。怪物は諦めません」 

「痛みでも与えるのか?」 

「し…怪物はどうしたら泣くのか子供に尋ねました。子供は考え、笑わせてと言ったのです」 

「無理なことを…子供を笑わせるのは至難の技だ」 

 …口を挟まずにいられないのね? 

「どうしたら笑ってくれる?」 

 私は怪物の立場でディオルド様に聞いてみた。きょとんとした顔のディオルド様に笑いそうになるけれど耐えて待つ。 

「お…お前が…笑ってくれたり…へ…変な顔をして…」 

「ふふっ…子供はなんて言ったと思いますか?」 

「子供か…難題だな…目が見えん…のだから変な顔も無理だ……くすぐるのか?」 

 絵本の話を真剣に聞き、真剣に考えてくれるこの人が愛しい。 

 私は答えを当てたディオルド様の体に手を伸ばし、お腹の辺りをくすぐる。 

「何を…している…」 

 くすぐったくないのか、ディオルド様の顔は力んだだけだった。 私はくすぐるのを止めてディオルド様に近づき身を寄せる。 

「怪物は子供をくすぐり笑わせ、口に加えていた茎で頬を流れる涙を吸いました」 

 たくましい胸に顔をくっつけ、力強い鼓動を聞く。 

「その涙は今までの涙と味が違いました。とても甘くとても美味しくて怪物はまた子供をくすぐり笑わせ涙を吸いました」 

「困ったな…怪物はもう盲目の子供の涙しか飲めんだろう」 

「そう…怪物は夜明け前、笑い疲れて眠る子供の寝顔を見ながら…それを察して…生まれて始めて…涙を流すのです」 

「甘美なものを一度味わうとそれ以外は求められん。俺には怪物の絶望が理解できる」 

 ディオルド様の腕が静かに私を抱き締めた。

「おしまい」 

 私はそう言い顔を上げて、ディオルド様の顎に口づける。 

「とても古い絵本でした。幸せな最後ではないけれど…挿し絵の怪物は泣きながら笑っていたの」 

「素晴らしいものを見つけた喜びとそれは常には手に入らない絶望か」 

 密着している下半身には準備を終えた熱いものが触れている。 

「香っていますか?」 

「……ああ」 

「ふふ…性的接触はしなくても香る意味を?」 

「お…お前が欲情している」 

 緩く抱いていた腕に力がこもり、ますます体が密着する。 

「私…仲良し…好きです」 

「俺の方が好きだ。でも…お前の体が心配だ」 

「元気です」 

「ああ…わかっている。医師も問題ないと言った」 

 私は日中、寝台に座るディオルド様の膝に乗せられながら診察を受けた。 

「ある人には平気でも違う人には過剰に反応する毒の説明も受けました」 

「ああ…そういう者は受けてすぐに拒否反応を起こす…お前はもう丸一日経ったからな」 

「だめ?」 

 ディオルド様の下半身に手を伸ばし、硬く熱い局部に触れて握る。前に馬車のなかでやったように何度もしごくと手のなかで跳ねた。 

「く…ロシェル…くそ…俺は」 

 ディオルド様の手が動き、少し乱暴に私の頭を掴んだ。顔を上げさせられ、険しい臙脂の瞳が睨んでいた。 

「…くそ…そんなに欲しいか…?」 

 私の頭を掴む大きな手のひらの熱さが伝わり、臙脂の瞳に欲を見つけて秘所が濡れていく感覚がした。 

「欲しい」 

「俺は俺の感情を制御できんぞ…奪われたお前を取り戻してから…冷静さを失うなと努めたんだ…ロシェル…たがが外れ…お前が気絶しても腰を振り続けると想像できる…歩けなくなるぞ」 

「あなたに与えられるなら痛みも喜びです…ディオ」 

「もう限界だ」 

 掴まれた頭をそのまま引き寄せられ、勢いのまま唇が合わさると歯がぶつかり、本当に痛みを与えられた。でも痛みより私のなかに入り込んだ舌と送り込まれる唾液と頬を撫でる荒い鼻息にどんどん秘所は濡れていった。

 ディオルド様が覆い被さるように私を閉じ込めた。 

「手加減はできん」 

 そう言ったディオルド様は舌を絡めながら私の夜着を掴んで裂いた。破かれる音と唇から聞こえる淫らな水音に期待が湧き、私は無我夢中でディオルド様のトラウザーズの腰ひもを緩めていた。

 隙間に手を差し入れ、直接局部に触れる。すでに先端が滑っていた。その事にも秘所が何度もうずいた。 

「入れて」 

 無意識に言葉にしていた。無意識に足を広げてたくましい腰に巻き付けていた。 

「俺を煽るな!」 

 ディオルド様は片手を振るって毛布を落とした。私を跨ぐように膝立ちになったディオルド様の臙脂の瞳はつり上がり、歯を食い縛っているのか、頬は力んでいた。そしてディオルド様は上着を脱いで投げた。私は手を伸ばし、たくましく硬いお腹に触れ、へそに触れ、頂へ向けてもっと伸ばした。 

「ロシェル…お前が…誘惑したんだぞ」 

 ディオルド様は軽く頭を振って、荒く息を吐いた。そして私の秘所に手を伸ばし、臙脂の瞳を見開いた。 

「は…履いて…下着を履かなかったのか?」 

「はい」 

 ディオルド様は目蓋を閉じ、上体を倒して私の首に鼻を埋めて深く息を吸った。何度も吸っては吐いた。 

「あう!」 

 ディオルド様は私の秘所に指を入れた。突然のことで驚いて体が跳ねても、大きな体が押さえ込むようにいる。 

「…聞こえるか…?お前の…音だぞ」 

 聞こえている。ディオルド様の太い指が動く度に恥ずかしくなるほど水音が聞こえている。 

「ディ…ぁあ!ああ!」 

 熱く大きな局部が指の代わりに突き入れられ、声を抑えることもできずに叫んでいた。 

 ディオルド様は私の首を舐めながら、容赦なく腰を振った。苦しいのに、激しいのに、重いのに快感が全てを上回った。 

「ディオ!ああ!もっと!」 

 過去も未来もなにも考えなくていいほどの強い快感と衝撃が全て喜びになる。

 体を合わせること、それを愛する人としていることに幸せを感じている。もっと深くもっともっとと貪欲にあなたの全てが欲しくなる。








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