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戯れる二人
しおりを挟む目蓋に光を感じて朝になったと理解しても、鈍い意識は微睡みから抜け出せなかった。
昨夜、夜会が終わった後ジェイデン様と離れる前、話しながら寝ようと言っていたのにレナとダフネと話したあとの記憶がない。でも近くにある温もりはジェイデン様だわ。
薄く目蓋を開けると目の前にいつもの夜着はなかった。それに私はなにも着ていなかった。 恐る恐る顔を上げると微笑むジェイデン様と視線が合った。
「おはよう、ロシェル」
「あ…おはよう…ございます」
ジェイデン様の手のひらが私の背中に触れ、引き寄せた。お互いのお腹が触れあう。
「私…」
私だけじゃない…ジェイデン様も裸だわ。
「湯のなかで眠ってしまったんだ」
「はい」
そうよね。それはわかっているのだけど…
「ロシェル…あまりの美しさに我慢ができなかった。怒っているかい?」
申し訳なさそうな顔をするジェイデン様の素肌に額をつける。怒ってなんかいないわ。恥ずかしいけれど人肌が心地いい。直接触れる熱がいつもと違って心が温かくなる。
「驚いただけです」
私たちは閨をしたの?私…ジェイデン様と…夫婦に…
「女性の肌に触れたことはあってもこうして抱き合って過ごしたことがなかった…気持ちのいいものだ」
触れあったことが…あるに決まっているわ…ね…ジェイデン様には妻が二人いたのだし…私が知らないだけで愛人もいたはずだわ。なんだか胸が苦しい…ジェイデン様の顔を見たくない。
「トマが離邸に泊まってね…一緒に朝食をとろうと…」
なぜこんな気持ちになるの?
「…ロシェル?」
「…はい」
「顔を見せてくれないか?」
私は見せたくなかった。でも逆らうことなどできない。戸惑いながらゆっくりと顔を上げる。真剣な臙脂の瞳が私を見つめた。
「どうした?」
「…なぜです?」
「なにを考えている?」
「なにも」
「本当は夜着を着せなかったことを怒っているのかい?嫌だったか…」
私はこの気持ちを上手く伝える自信がなくて体を伸ばしてジェイデン様に口づけをする。
「ロシェ…」
ジェイデン様の顔を両手で捕まえて何度も唇を合わせる。
「ロシェル」
私の願いがわかったようにジェイデン様は舌を入れてくれた。その舌を吸っては絡めて、伝わる唾液を飲み込む。
「ロシェル…瞳を…見せ…てくれないか」
口づけを交わしている合間に願われて、私は目蓋を上げる。
「なんだろう…君から甘い匂いがするようだ」
「…香油です…きっと」
「昨夜は香油をつけずに君をここへ運んだ。だから君の匂いだ…ロシェル」
「ジェイデン様…もっと」
こうして密着していればジェイデン様の子供を宿すかもしれない。いつかジェイデン様に飽きられても子供がいれば辛くない。わからない…子供がいても辛いかもしれない。私は子供を愛せるのかもわからないけどジェイデン様の子供だと思うだけで嬉しいなら…愛したい。
「ロシェル、そんな顔をするな」
顔を近づける私をジェイデン様の手が頭を掴んで止めた。その行動に瞳が潤む。
「どうしたんだ…ロシェル…不安そうな顔だ…私はなにを」
「不安ではありません」
納得をしていないと臙脂の瞳は言っているけど、自分でもこの気持ちが言葉にできないし意味がわからない。
「こうしていると…ジェイデン様の子供を宿してしまいます…いいですか?」
なんて答えてくれるのだろうか…困ると言う?いらないと言う?
「子供…」
「はい」
ジェイデン様は喜びも困惑もしていない。ただ呆けた顔をしている。 ブリアールの血筋…ジェレマイア様はいい顔をしないだろうけど……
「ロシェル、うん…一晩では無理だが…うん」
ジェイデン様を困らせてしまった。私が身籠ることはよくないことなのね。
「ごめんなさい…我が儘を…」
欲を出してしまった。ああ…駄目だわ…感情が抑えられない。出会った夜、子作りをできないと言っていたけどこうして裸で過ごしているわ。どうして…
「ロシェル」
ジェイデン様が私の顔を掴み額や目蓋、頬や鼻に口づけをしている。
「裸で共寝をするだけでは子は宿らない」
「…え…」
「そう簡単に子が宿れば便利だが」
「こうして…」
…いれば子供ができると思っていた…じゃあ…どうしたら?
「ロシェルは不勉強と言ったね…そうか…なにも知らないのか」
「…はい」
私はファミナに閨に関する知識を遮断されていたから……こうしていても子供は宿らないのね。少し寂しいけれど、私の子供として産まれても幸せにできないかもしれないと思うと気持ちが楽になったわ。
「知らなくていいです」
「ロシェル」
ジェイデン様の手が動き、私の胸に触れた。優しく撫でるように、柔らかさを確かめるように動く手のひらが指の合間に頂を挟んだ。
「ん…」
変な感覚が頂から広がる。
「ジェイデン様?」
どうして胸に触るのかしら?
「私は…子作りをできないと君に伝えた」
「はい。こうしていると宿ってしまうと勘違いしていました。よかったです。ジェイデン様とまたこうして過ごせる」
ジェイデン様が触れているように私も触れる。なにも身に纏っていない肌、肩や腕に触れる。固くて乾いた肌と鼓動が感じられる胸で手を留める。
「…鼓動が速いです」
「君が触れているのだから速くなるさ」
ジェイデン様も私の鼓動を感じてくれているのね。
「私は…ロシェル…君が欲しい」
真剣な臙脂の瞳に微笑む。
「ふふ、私はジェイデン様に渡しているつもりでした」
「ロシェル」
切ない声が名を呼び、私の頂を指先でつまんだ。
「ん…」
「ロシェル」
ジェイデン様は私の名を呼びながら何度も頂に触れて、私の体を手のひらで這うように触れ始めた。
「…ん…ぁ」
変な声が出てしまう。くすぐったいような、でも腰が疼くような感覚に戸惑う。
「君と繋がりたい」
繋がる?
「はい」
私は首を伸ばしてジェイデン様と唇を合わせる。ジェイデン様の願いを叶えたい。
夢中で口づけをしているといつの間にかジェイデン様の指が秘所に触れていた。
「だっ…汚い…ジェイデン様っ…汚い場所です…駄目です」
どうしてそんなところに…
「ここで…繋がるんだ」
「ジェイデン様…」
なにを言っているの?
「ロシェル、私は欲深い…」
ジェイデン様は私の秘所から手を離し、苦しいほど抱きしめた。
「ロシェル」
呼ばれるまま顔を上げるとジェイデン様の大きく開けた唇に食らい付かれ、呼吸もままならないほど激しく吸われ舐められた。苦しいのにそれが気持ちよくて、なぜかお腹の奥が疼いた。
私の足に触れているジェイデン様の一部が動いた気がした。
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