くるみの木のパン屋さん

雪村みおり

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「はい、おねがいします」

 きつねのスイートさんが、小銭こぜにをさし出します。

「おあずかりします。二百円ちょうどですね」

 くるみおばさんは、小銭こぜにをすぐさま、レジのひきだしにしまいました。


「あら、くるみさん、なんだかいそいでいらっしゃらない? いつもは出したお金が本物ほんものかどうか、たしかめるのに。どうかしましたの?」

 きつねのスイートさんは、さんかくの耳をピンと立てて、たずねました。
 くるみおばさんは、せかせかとレシートをわたしながら言いました。

「ええ、いそいでいるんです。電話でんわでメロンネさんとアップルさんから注文ちゅうもんが来てねえ。それも、今すぐと! ああ、いそがしいわ」

 スイートさんは少し考えてから、こう言いました。

「じゃあ、わたしがくるみさんのかわりに、お店のばんをしていますわ」

「なにを言うのですか。そうしたら、あなたのパンがつめたくなってしまいますよ。それに、店でおきゃくさんの相手あいてをするのは、たいへんなのよ」

 でも、スイートさんはにっこりわらって、自分のかばんとパンのふくろを、イスにおきました。

「だいじょうぶですとも! わたしがやっていてあげますから。さあ、行ってきてください」


 まるで「安心あんしんしなさい」と言っているかのようなスイートさんを見て、くるみおばさんは決めました。

「よし! わたし、これから行ってくるわ」
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