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7話 シドニーの休日
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ゴールドコーストの風は海の匂いを運びながら、完成披露の会場を静かに撫でていた。
真新しい市民センターの一角には、世界初の廃棄物処理プラントが併設されている。
“What you see here is a biological reactor that needs no fire, no fuel. The waste is broken down into water and oxygen—as if it disappears into thin air.” “This isn't magic. It's a colony of adaptive microorganisms, engineered to thrive in specific waste conditions.” “The residual heat? We reuse it. It powers our lighting, our cooling, even part of the ventilation system.”
施設内で出たゴミを即時分解し、その過程を特殊透明槽から可視化できるという設計は、環境に敏感な各国関係者の目を引いた。
モニターの前に立ったのは、T不動産設計部の御堂。
鮮やかなスーツに身を包み、真っ直ぐな声で説明を始める。
「内部槽の温度と分解速度は自動調整されていて、視認性と安定性を両立させています」
かつてはがん黒ギャルだったという過去も嘘のように、今は設計現場の新星だ。
隣に立つのは、プラント技師の柚木。
地方の設備会社出身ながら、現社長が自らスカウトした逸材で、重機の扱いは社内随一。
「これがゴミになるとは思えないほど、滑らかで静かな処理音でしょ。これは内部のノイズ緩衝素材を工夫していて…」
二人の言葉に、視察に来ていた各国代表団が頷く。
その後方、やや距離を取って控えていた会長は、静かに笑みを浮かべていた。
彼の視線は、プラントの奥ではなく——別の場所に、短く、揺れていた。
「順調ですね、会長」
「ああ」
一方、成明は、やはり香苗のことが不安であった。フライト中も、頭の中はそのことばかり。先日のように弟と泊まりの旅なんてされたら困る、しかし逆に、重度の甲殻類アレルギー持ちでもあり、意識を失えば命に係わる。弟を見張りにつけたい気もあった。
自覚もあるが、すっかり胃袋は香苗にとらわれていた。そればかりか頭の中も彼女のことでいっぱいとは……。
こけら落としでのプレゼンテーションは柚木と御堂に任せたが、中東某国の参謀の一人…石油相の娘、アナスタシア嬢の案内役は外せない。東京での会議後に名指しで指名を受けたからだ。
さすがに以前のような奇抜なファッションではない。トーブをまとった集団とともに一通り現場を見て回り、新たに自宅用の受注も承った。
早速商談に入るグループ、軽食程度の立食で、穏やかな会合は進む。社員は東京発とともに中東グループも加わり盛況であった。
その後場所を移りパーティは続いた。そのホテルは、要人と社員が一時の休息を取るために確保された最高級クラスの施設だった。自社の社員はここで2泊後、帰国する予定になっている。成明と御堂、柚木は翌日シドニーまで飛び、モールの視察予定だった。
真新しい市民センターの一角には、世界初の廃棄物処理プラントが併設されている。
“What you see here is a biological reactor that needs no fire, no fuel. The waste is broken down into water and oxygen—as if it disappears into thin air.” “This isn't magic. It's a colony of adaptive microorganisms, engineered to thrive in specific waste conditions.” “The residual heat? We reuse it. It powers our lighting, our cooling, even part of the ventilation system.”
施設内で出たゴミを即時分解し、その過程を特殊透明槽から可視化できるという設計は、環境に敏感な各国関係者の目を引いた。
モニターの前に立ったのは、T不動産設計部の御堂。
鮮やかなスーツに身を包み、真っ直ぐな声で説明を始める。
「内部槽の温度と分解速度は自動調整されていて、視認性と安定性を両立させています」
かつてはがん黒ギャルだったという過去も嘘のように、今は設計現場の新星だ。
隣に立つのは、プラント技師の柚木。
地方の設備会社出身ながら、現社長が自らスカウトした逸材で、重機の扱いは社内随一。
「これがゴミになるとは思えないほど、滑らかで静かな処理音でしょ。これは内部のノイズ緩衝素材を工夫していて…」
二人の言葉に、視察に来ていた各国代表団が頷く。
その後方、やや距離を取って控えていた会長は、静かに笑みを浮かべていた。
彼の視線は、プラントの奥ではなく——別の場所に、短く、揺れていた。
「順調ですね、会長」
「ああ」
一方、成明は、やはり香苗のことが不安であった。フライト中も、頭の中はそのことばかり。先日のように弟と泊まりの旅なんてされたら困る、しかし逆に、重度の甲殻類アレルギー持ちでもあり、意識を失えば命に係わる。弟を見張りにつけたい気もあった。
自覚もあるが、すっかり胃袋は香苗にとらわれていた。そればかりか頭の中も彼女のことでいっぱいとは……。
こけら落としでのプレゼンテーションは柚木と御堂に任せたが、中東某国の参謀の一人…石油相の娘、アナスタシア嬢の案内役は外せない。東京での会議後に名指しで指名を受けたからだ。
さすがに以前のような奇抜なファッションではない。トーブをまとった集団とともに一通り現場を見て回り、新たに自宅用の受注も承った。
早速商談に入るグループ、軽食程度の立食で、穏やかな会合は進む。社員は東京発とともに中東グループも加わり盛況であった。
その後場所を移りパーティは続いた。そのホテルは、要人と社員が一時の休息を取るために確保された最高級クラスの施設だった。自社の社員はここで2泊後、帰国する予定になっている。成明と御堂、柚木は翌日シドニーまで飛び、モールの視察予定だった。
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