会長にコーヒーを☕

シナモン

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8話 そして神戸

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 朝を迎え、まあまあきれいに片付いた。ごみの袋は集積所に入れられ、ふうと息をつく香苗。

 不破了はやっぱりきれい好き男子か。ぴっちりペットボトル、缶、瓶、紙ごみ、その他と分けられ、結び目も美しい。幸い、アパートは一件当たりのゴミ出し制限はないようだった。

 そして警察の車で神戸の科捜研へ向かった。

「科捜研てほんとにあるんだあ・・」香苗はドラマと重ねる。「京都にしかないと思ってた…テレビの見すぎか。」

 不破了はふっと笑った。

「あるよ。科学捜査に場所は関係ないだろ」



 しかしその想像を上回る建物に香苗はビビった。



「ひえっ、県警~? 私、やっぱり逮捕されるんですか」


 立派な白亜の御殿…ならぬ、兵庫県警察だった。

 あの神社の木陰、薬物の売人、合言葉はトムブラウンのメガネ——全部が一気にそれっぽく見えてきた。 

「やっぱり逮捕されるの? マジで? え、待って本当に——」 

 廊下を進んで、バクバクだ。ここで待っててと言われて、白衣の女の人が奥から出てきた。不破了はその女性と話して、香苗はベンチに座るよう言われた。
 
「ご安心ください、鑑定だけです」

 そう言われても、安心するわけないのはなぜだろう。ドラマのせい、ドラマの…そう言い聞かせる。

 体とバッグから何かを採取しようとしてるが、飛び散った液が残っているのだろうか。もし本格的に調べるということになったら、あの坂道の破片を調べるのかな。そして経緯を逐一報告させられた。記憶がいちいち辛すぎて泣ける…。しまむらのブラウスとスカート、アセテート他の繊維まで提出されて一通り終わったのち、署の中にいた。
 こんな廊下…マジであるんだ。犯罪者になった気分。しかし不破了が気になることを言った。

「全員女か。俺の言うことが伝わるかなあ…」

 この変な香水は女子には一切感知されず、特定の時間、男がほにゃららしてしまうらしいのだ。それならここにいなくてもいいのではない?そう思ったが行くところなんてないし、こんなところで解放されても困る。というわけで待ち続けた。ランチは不破了がおごってくれて、鑑定結果は午後に判明した。


「あら、まだいたの」

 目がキラキラしたくるくる巻き毛のショートヘアーの女の人が出てきた。
 眼鏡が似合って可愛い。こういう人を美魔女っていうの? ドラマの女優とはちょっとタイプが違う。


「ええ。また来てもらうってわけにいかないので」

「そう。…結論から言うと、合成麻薬の類ではないわね。天然は天然だけど、昆虫由来のエキスね」

「それでは事件性は・・・」

「うーーん、なんとも。メスを引き寄せるというより、オスの攻撃性を弱めるという感じかしら。新種かしらね。他に検体がないのでこれ以上わからないわ」

 結局微妙な結果に終わったのか、晴れて自由の身になった。だけど、全然体感はありませんよね?
 むしろこれからどうすればいいの。

「すみませんでしたー」不破了は深く頭を下げた。

「お詫びに松江まで送ろうか」長らく追っていた犯人が捕まったので時間があるからと言われる。香苗は答えなかった。もうすっかり帰省の意思は消えていた。お盆も帰ったし・・・「なんか秘境に行ってみたい」ぽつりとつぶやく。
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