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8話 そして神戸
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「秘境?山陰方面でいいのか」
彼の口を突いて出たのは山陰。香苗は首を横に振った。
「どこでもいい、山陰じゃない所。」
別に行きたいわけでもないのになぜか呟いてた。何だか故郷方面に向かいたくない。
「まあ、今日は付き合うわ」
不破は何かを察したのか、何もないのか、車のエンジンをかけた。その車は不破の見た目にそぐわないかわいらしい外見をしていた。以前宇部に出張で行ったとき友達の彼氏の車に乗せてもらった、あの時のレトロカーのよう。あの彼氏もカッコよかったな。。ふと思う。
「この車、不破さんの?」
「いや、美影のだよ。乗らねえらしいけど。駐車場代もったいないとかで俺の駐車スペースに置きやがって💢。なんでも三宮の駅で事故りそうになって以来ペーパーなんだと。刑事のくせに。」
なあんだ、そうか。この人たち、付き合ってんの?と、つい、いつもの癖で妄想が始まる頭。中央区を出発し、高速道路へ。家また家、ビルビルビル…島根育ちの自分にはどこもかしこも都会に見えた。
「ついたぞ」
下ろされたのは、西宮から宝塚、と来て山に入った…というあたり。さびれたまさに秘境駅だった。こんな都会にこんなとこがあるの。香苗には新鮮な驚きだった。
「秘境って言うか、廃線…だけどな」「廃線?」「ああ。福知山線って知ってる?」聞いたことがある。
「遊歩道があって、まあまあ人が集まるよ。秋の紅葉とか」
香苗は歩いてるうち、なんともわびしい気持ちになって、うずくまってしまった。
「おいおい、あんた、大丈夫か」
大丈夫じゃない…大丈夫じゃないよぉ~~突然の感情に襲われる。つい先月もこんな裏寂しい所に連れて行かれた。高広くんのせい…と言うより、高広くんがお金を出してくれて。今回は公務員の世話になるのかい。
誤認とはいえ、麻薬の取引現場みたいなのに遭遇するなんて、自分の不運とドジさ加減に腹が立つ。そして何よりコイツ…何だコイツ。見た目は高広くんにそっくりで、中身はどっちかというと会長?きれい好きで神経質気味で…なんと声がそっくり!
アパートで…不覚にもときめいちゃったじゃないのー、バカヤロー。
あんなの会長にもされたことない…いやいやいや。
あれって…変な香水のせいですよね、たくもう!
あんなの使ってまで会長にあんなことされたくない!
もうやだ、なんでこんなことになってるの。かいちょ~。
涙がとめどなく溢れて止まらない。
それにまたスマホを落としたなんて…絶対おこられるー涙。
とんだ魔法だ! 不破了に会うなんて。
不破了が、こんな奴だったなんて。
正体不明の男にID貸すなよ、公務員のくせに何やってんだ。
会長みたいな声して、紛らわしいんだ、このやろ~~~!!!
――そうです、気になって、逃げだせなかったのは、コイツのせいです!!
「うっううう……」
「あのぅ……」
不破了はじりじり歩をすすめたが、彼女が起き上がる気配はなかった。
⦅何だ、コイツ…。変な女を引き当てちまったぜ。⦆
こういう場合の最高の時間つぶし、タバコを吸うわけにもいかず、公務員はただ佇む。
あーあ、久々に吸いてえ気分。
っても喫煙所なんてねえし、そもそも売ってねえんだよなぁ~~。
それなりに人はいて、楽しげな休日の風景だが、二人は浮いていた。
彼の口を突いて出たのは山陰。香苗は首を横に振った。
「どこでもいい、山陰じゃない所。」
別に行きたいわけでもないのになぜか呟いてた。何だか故郷方面に向かいたくない。
「まあ、今日は付き合うわ」
不破は何かを察したのか、何もないのか、車のエンジンをかけた。その車は不破の見た目にそぐわないかわいらしい外見をしていた。以前宇部に出張で行ったとき友達の彼氏の車に乗せてもらった、あの時のレトロカーのよう。あの彼氏もカッコよかったな。。ふと思う。
「この車、不破さんの?」
「いや、美影のだよ。乗らねえらしいけど。駐車場代もったいないとかで俺の駐車スペースに置きやがって💢。なんでも三宮の駅で事故りそうになって以来ペーパーなんだと。刑事のくせに。」
なあんだ、そうか。この人たち、付き合ってんの?と、つい、いつもの癖で妄想が始まる頭。中央区を出発し、高速道路へ。家また家、ビルビルビル…島根育ちの自分にはどこもかしこも都会に見えた。
「ついたぞ」
下ろされたのは、西宮から宝塚、と来て山に入った…というあたり。さびれたまさに秘境駅だった。こんな都会にこんなとこがあるの。香苗には新鮮な驚きだった。
「秘境って言うか、廃線…だけどな」「廃線?」「ああ。福知山線って知ってる?」聞いたことがある。
「遊歩道があって、まあまあ人が集まるよ。秋の紅葉とか」
香苗は歩いてるうち、なんともわびしい気持ちになって、うずくまってしまった。
「おいおい、あんた、大丈夫か」
大丈夫じゃない…大丈夫じゃないよぉ~~突然の感情に襲われる。つい先月もこんな裏寂しい所に連れて行かれた。高広くんのせい…と言うより、高広くんがお金を出してくれて。今回は公務員の世話になるのかい。
誤認とはいえ、麻薬の取引現場みたいなのに遭遇するなんて、自分の不運とドジさ加減に腹が立つ。そして何よりコイツ…何だコイツ。見た目は高広くんにそっくりで、中身はどっちかというと会長?きれい好きで神経質気味で…なんと声がそっくり!
アパートで…不覚にもときめいちゃったじゃないのー、バカヤロー。
あんなの会長にもされたことない…いやいやいや。
あれって…変な香水のせいですよね、たくもう!
あんなの使ってまで会長にあんなことされたくない!
もうやだ、なんでこんなことになってるの。かいちょ~。
涙がとめどなく溢れて止まらない。
それにまたスマホを落としたなんて…絶対おこられるー涙。
とんだ魔法だ! 不破了に会うなんて。
不破了が、こんな奴だったなんて。
正体不明の男にID貸すなよ、公務員のくせに何やってんだ。
会長みたいな声して、紛らわしいんだ、このやろ~~~!!!
――そうです、気になって、逃げだせなかったのは、コイツのせいです!!
「うっううう……」
「あのぅ……」
不破了はじりじり歩をすすめたが、彼女が起き上がる気配はなかった。
⦅何だ、コイツ…。変な女を引き当てちまったぜ。⦆
こういう場合の最高の時間つぶし、タバコを吸うわけにもいかず、公務員はただ佇む。
あーあ、久々に吸いてえ気分。
っても喫煙所なんてねえし、そもそも売ってねえんだよなぁ~~。
それなりに人はいて、楽しげな休日の風景だが、二人は浮いていた。
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