会長にコーヒーを☕

シナモン

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9話 残り香

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 支払いを終えるとすぐにモニターセットを送ってきた。配送先は別途借りてるキッチンスタジオ付きのビルだ。

「これを全部読まないといけないのか…」高広はつぶやく。

 規約書はオンラインでつながっており、事細かに読んでサインしなければ進めないようになっていた。その内容はとにかくプライバシー、プライバシー…プライバシー侵害について事細かく分かれていた。高広はそれを読み進め、最終チェックを終えたころにはゆうに○○半日過ぎていた。

「プライバシーにうるさいってことはこっちのプライバシーも守られてんのかな。」一瞬不安がよぎったが、目的が人探しと正当な理由であることから気にしないことにした。

 超高性能衛星監視システム―――。

 まあ、期限が切れれば、ただのハイスペックマシンだからな。やばいものを見たりすれば警告されたりするのかもしれないが、こっちは真剣に人探してるんだよ。やましいことは何もないぜ。

 セットアップは完了。あとは待つのみ。高広はひとまず家に戻った。




「あれ、エリザベス来てたんだ」

 屋敷に戻り広間にいた彼女の姿に驚いた。

「ハーイ、高広。あなたが家に戻ったと聞いて来たのよ」

「久しぶり」

 軽くハグをする。長らく行方不明だった会長弟。エリザベスとは旧知で家に戻って以来初のご対面だ。

「東京近郊の観光地を巡って来られたそうだ」

「へえ、一人で? レオは?」

「お仕事よ。シドニーで成明にお世話になったのでお礼を言いに来たの」

「兄さんが?」

 めずらし…めちゃくちゃ仲が悪いのに。
 二人が討論おっぱじめるとみんな黙り込んでしまう。(あーあ、またはじまったよ)…てな具合に。

「オーストラリアはこれから夏だけど、日本は紅葉がいっぱいね。北に行けばね」

「はじめてじゃない? 日本旅行なんて」

「そうね。エドワードがいっぱいいたわ」ニコニコと機嫌がいい。「エドワード?」高広はけげんな表情をした。

 誰? 知り合い? はじめて聞く名前だ。

「幼馴染なのだそうだ。よくわからないが、成明と似ているらしい」

 飲み物を持ってきた父は高広の前に置いた。エリザベスとティータイムを楽しんでいたところだった。「兄さんに?」

 なんか意味深だなあ。そう思ったが、兄は今それどころじゃない。

「ご盛況だなあ。旦那がいながら推し活? アメリカでもそういうの流行ってるの?」らしくないと思いつつ高広は聞いてみた。

「そうね。ずっと忘れていた大切な思い出ね」

「思い出の彼?」

「ええ、少し痛い思い出よ」

 なるほどね。エリザベスにもそういうのあったんだな。ふと、瀬尾の顔が浮かぶ。

「治療というより、いっぱい旅をしなさい、彼を心行くまで思い出すのもいいんじゃない?ってアドバイスされたの」

「そうなんだ」

 だけどそいつ、兄さんに似てるんだよな…。なんか気になるな。つーか、あんな状態で渡米なんかできるのかね、兄さんは。

 予定では来年、兄は会長職を辞めてレオのところに行く。

 あいつを連れて行くんだよな…?

 レオとエリザベスはいかにもな白人美男美女カップルだ。そんなパリピの横で…兄さん、大丈夫かあ?
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