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人間の国に来ました2

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レオは私を抱き上げると、馬車から降りた。私を抱っこしたままでいいのかな。ここは魔王の威厳を見せる所じゃない?こんな可愛い幼女を小脇に抱えてて大丈夫?

「おい、なんだあれ?」
「人形…いや、人間の子供、か?」
「いやまさか…魔族の王が人間なんて連れてるわけないだろう。」
「じゃあドワーフか?」
「そうかもしれんな。しかし随分と整っているな。まるで人形だ。」

いやいや、人間だよ。ドワーフじゃないよ。あんなムキムキで四角い感じの種族と一緒にしないでちょうだい!あれ、でもドワーフの女性は見た事ないからな…もしかしたら幼女の見た目をしてるのか?そしたらあのムキムキドワーフの嫁は幼女って事に…?いやいや、変なことを考えるのはやめよう。私は人間の幼女よ!失礼しちゃう、プンプン。

「これはこれは。ようこそおいでくださいました、レオナール陛下。」
「うむ。」
「ご案内いたします。」

他国の王族にこの国の王太子が頭を下げるのはなんら不思議なことではない。表面上はとても礼儀正しく、セドリックはレオを城内に招き入れた。

「こちらが陛下にご滞在いただく貴賓室となっております。」
「うむ。」
「あの、失礼ですがそちらのご令嬢は…?」

セドリックがついに疑問を口にした。さっきからずっと、魔王の付属品のような状態の私をチラチラと見てたもんね。よく今まで我慢できたよ。流石王族。

「これは俺のペットだ。」
「ぺ、ペット…?失礼ですが、人間のように見えますが…」
「そうだ。拾ったから飼っている。」
「は、はは…ご冗談を…」
「俺のペットであるリナに不当な扱いをすることは許さん。城の者にそう伝えろ。」
「は、はい…」

セドリックだけでなく、背後をゾロゾロとついてくる護衛の人達も表情を隠すのも忘れて驚愕してる。でもその驚きにも色々な種類があるようだ。魔族の王が人間の幼女を可愛がっている事に純粋に驚く者、人間が魔族のペット扱いされている事に憤る者、囚われの幼女に憐む者、私の可愛さに興奮が隠しきれない者…いや最後の何!?私の首輪を見てハアハアしてるヤバい層がいる。これが人間の国か…なんて恐ろしい。
何が恐ろしいって、この国の王太子がこのハアハア派に属しているって事。見てよあの目…明らかに興奮してますわ。

「ペットの…リナ様でよろしいですか?」
「う、うん…」

私に対しても丁寧な言葉遣いを崩さないセドリックに対し、私は子供らしいフランクな言葉で返す。私は魔王のペットだから、スリチア王国の王族より上の立場にいるらしい。理屈がよく分からないけど、サムエルがそう言っていた。私がへり下るとレオの立場が低いって言っているようなものらしいから、しっかり偉ぶらないと。
私の態度に不快感を示した人間もいたけど、セドリック本人は気にした様子もない。魔族に対峙していたときとは違う優しい笑顔で、セドリックは話を続けた。

「リナ様には子供用の貴賓室をご用意いたします。」
「…レオと一緒にいる。」
「リナ様のお世話をしていたら魔王陛下もゆっくりお休みになられないのでは?」

え、そうなのかな。レオは私がいないほうが休める?セドリックの言葉でまんまと不安にさせられた私はレオの顔を見上げた。レオは私の視線を受け、代わりに口を開いた。

「勝手に決めるな。リナは俺と同じ部屋で良い。余計な事をするな。」
「…陛下がそう仰るのなら。」

セドリックは少し残念そうな顔をしたけど、しつこく食い下がるような事はしなかった。

「6カ国合同議会は明後日開催されます。それまではご自由におくつろぎください。」
「うむ。」
「それではまた晩餐会で。」
「魔族は飯を食わん。」
「ああ、そうでしたね。それでは人間のリナ様だけでもいかがですか?彼女には食事が必要でしょう。」
「餌を部屋に持ってくるだけでかまわん。」
「…分かりました。」

餌という言葉に反応する人達が結構いるな。私はそもそもペットという立場を受け入れてるし、もう慣れちゃったど、側から聞くとレオが非道な感じに聞こえるな。ほら、私を憐む層が増えたよ。
うーん、もう少し私可愛がられていますアピールをする必要があるな。魔王が大事にしているものだからこそ手を出す価値があるのであって、魔王にとって私はただのペットなのだと思われてしまったら予定が狂っちゃう。
思い立ったら行動のみ。私はレオの首にギュっと抱きついた。

「どうした。」
「知らない所だから怖い。」
「そうか。」
「今日はお風呂も一緒に入ろ?」
「分かった。」

どうよ、ただのペットは魔王様と同じ湯船なんかには入れなくってよ!私は観衆の反応を窺うためにチラリと彼等の方を見た。

うん、見なきゃよかった。本当にこの国はセドリックが王太子でいいの?他に子供はいないの?見てよ、もう興奮が隠しきれてないよ。鉄壁の王子スマイルは崩れてないけど、鼻の穴だけすごく大きくなっててそこからフンスフンスと荒い鼻息が漏れている。
違うんだよ。卑猥な意味で言ったんじゃないんだ。お風呂一緒に入るなんて家族みたいでしょ?って言いたかっただけなんだ。だって私まだ4、5歳だよ?そういう目で見る方がおかしいじゃん。ここはロリコン国家なの?
ブルリと寒気がして、私は今度は演技ではなくレオにしがみついた。レオは私の心情を察してくれたのか、私を宥めるように背中をポンポンと叩いてくれた。

「リナがお前を怖がっている。もう顔を見せなくていい。」
「…!他国への応対は私に一任されておりますから、またお会いすることもあるでしょう。ですがこれ以上リナ様を怖がらせるのは本意ではありません。本日はこれで失礼いたします。」

セドリックが護衛を連れて貴賓室を出ていく。彼は最後にチラリと私の方を見ると、扉の向こうに消えていった。

ロリコン変態王子の姿が見えなくなり、私は大きく息を吐いた。私が落ち着いたのを見て、レオが私を床に下ろす。うん、フカフカのいい絨毯だ。

「何をそんなに恐れる。」
「あの王太子絶対変態だよ。」
「変態とはどういうことだ。」
「異常な性癖を持っているということでしょう。確かにリナ様を見る王太子の目は興奮が隠せておりませんでしたね。」
「わ、サムエル。いたの?」
「ずっとおりましたよ。」
「何か不都合があるのか?リナの愛らしい姿を見て興奮する事の何がおかしいのだ。」

愛らしいですって、皆さんお聞きになって!?愛されペット計画は順調に進んでるな、ふっふっふ。
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