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人間の国に来ました4
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「ふわわああ…」
「熱くないか。」
「うん。ちょうど良いよ。気持ちいい。」
結論から言うと、泡風呂は最高だった。お湯はあったかくて気持ちいいし、泡で遊ぶのは楽しいし。何よりレオの身体が泡に隠れて何も見えないのが良い。平常心が戻ってくる。
泡をつけた指で輪っかを作って息を吹きかけると、ポポポと小さなシャボン玉がたくさん出てくる。
「楽しいか。」
「うん!」
「そうか。」
「レオは…何してるの?」
レオは湯船の泡を集め、それを私の身体にどんどん貼り付けている。私はもうすでに毛刈りを拒否し続けた羊みたいになっていた。顔と腕だけ泡から出ている今の状況は、さぞかし滑稽に見えるだろう。いや、可愛いか。この顔が泡から出てたら、普通に可愛いか。それよりもレオにこんなユーモアがあったことに驚きだよ。それともなに、私の裸は目に毒かい?
「お前を洗っているに決まってるだろう。」
「…そうなんだー。ありがとう!」
え、これで洗ってるつもりなの?普段自分の身体どうやって洗ってんの?全身泡洗顔かよ。それともこっちの世界の石鹸ってやつは、泡乗せとけば綺麗になる仕様なの?矢継ぎ早に浮かんでくるツッコミを頭をプルプルと振る事で吹き飛ばす。笑顔だ笑顔。愛されペットはそんな事言わないのよ。
でもミーアはいつもゴシゴシ洗ってたよなあ。つまりレオが洗いの素人ってことか。魔王様だし、風呂のたびに毎回メイドをたくさん引き連れてバスルームに消えてくから、自分で洗ったことなんてないんだろうな。
コンコン
「お待たせして申し訳ありません。リナ様のお風呂のお世話に参りました。」
どんどん貼り付けられていく泡で私の顔が埋もれそうになったその時、待ちに待った助け舟がやって来た。
「入れ。」
「失礼いたします。」
礼をとりながらバスルームに入ってくるミーア。ついと顔を上げ、泡だらけの私と目が合う。ミーアは私の惨状に目を見開き、固まった。
「……それでは、リナ様のお身体を洗わせていただきます。」
数秒で再起動できるのは流石だよね。ミーアは何事もなかったかの様に、私の元にやってきた。
「泡が少々多いようですので、少し落としても?」
「いいよ。」
「ありがとうございます。それでは、洗い場で洗いましょうね。」
「うん。あのね、レオが洗ってくれたんだよ。」
「まあ。魔王様に洗っていただいたのですね。確かに綺麗になっておりますね。では私は最後の仕上げだけさせていただきます。」
流石ミーア。私の意図を容易く読み取り、話を合わせてくれた。このままミーアが一から私を洗い直したら、レオにあんた全然洗えてないのよ!!って言ってるようなものだからな。
最後の仕上げって言ってしまった以上、短時間で要所だけ洗わないとだな。まあ一日くらい隅々まで洗えてなくてもいいよ。それに私まだそんなに汚れてないし…それでもミーアはさすがプロ。わずか数分で、私の全身をピカピカにしてくれた。腕が早すぎて見えなかったよ。見えたと思ったら残像なんだもん。
「仕上げが終わりましたよ。また湯船に入られますか?」
「レオはまだ入ってるの?」
「ああ。」
「じゃあ、また入る。」
「かしこまりました。」
ミーアに抱っこで湯船に入れてもらう。アワアワを流した後のアワアワ再び。なんという背徳感!
そう言えばレオは体洗わなくて良いのかな。まだ羊さんになってないみたいだけど…はっ、これはもしや…私が洗うパターン!?やってやらあ!
私は湯船の泡をかき集め、レオの身体にペトペトと貼り付けた。うーん、面積が広い。あんなに沢山泡を集めたのに、肩しか覆えていない…
「何をしている。」
「レオを洗ってるの。」
「俺の事は気にするな。洗う必要もない。」
「でもお湯に浸かってるだけじゃ綺麗にならないよ?」
「ふん…」
レオが指をパチンと鳴らす。するとレオの身体が、心なしか綺麗になったような…髪もさっきよりサラサラだし。
「何したの?」
「洗浄魔法だ。」
「え…じゃあ、風呂必要なくない…?」
「気持ちいいから入っているに決まってるだろう。」
「え。」
な、なんてことだ…レオにもそんな感情があったなんて。生まれてこのかた食事もしたことがなかったって聞いたから、てっきりロボットみたいな生活してるのかと思ったら…ちゃんと息抜きとか考えてるんだ。ちょっと安心。
「お風呂好きなの?」
「そうだな。気に入っている。」
「そっか。」
まあ、好きなことがあるって良い事だよね。例えそれが美意識高い乙女みたいな趣味だとしてもさ。
「もう上がる。」
「じゃあ私も。」
「リナ様、お身体お拭きしますね。」
ミーアがフワフワのタオルで私の身体を拭いてくれる。レオは自分で拭いてる。そこは魔法じゃないんだね。使い時がわからないんだよなあ。おっと、レオのレオが丸見えだ。でも一緒にお風呂に入った仲だからな。もう取り乱したりしない。初めての体験を済ませ、私はまた一歩素敵なレディに近付いたのだった。
取り乱さないと言えば、ミーアは目の前にナニが揺れてるのに全く動じない。馬鹿には見えない服でも着てるのかな?ってくらい平常運転。さては経験豊富…な訳ないか、魔族に性欲はないんだっけ。レオは魔王様でお世話されるのに慣れてそうだったから、きっと使用人も主人の裸とか見慣れてるんだろうな。
ミーアに新しい服を着せてもらい、髪も可愛くしてもらう。艶々のピカピカ。もうお昼くらいかな?お腹が空いてきたな。
レオとのお風呂が恒例行事になってしまったのを知ったのは、その日の夜の事だった。
ーーーーーーーー
お風呂あがり、レオとソファで寛いでいると、扉がノックされた。
「お食事をお持ちいたしました。」
「こちらで給仕しますので置いておいてください。」
「かしこまりました。」
メイドが持ってきたワゴンをミーアが扉の前で受け取る。さて、人間の国ではどんなご飯が出るのかな。あまり脂っこくないと良いんだけど。
ミーアが皿に乗せられた銀の蓋を開ける。
「可愛い!」
お皿に乗っていたのは、可愛らしい猫ちゃんたち。猫耳のついたハンバーグ、チキンライス。サラダとスープも猫型の器に入っている。完全に幼児食。ケンジさんの作る食事も可愛いのが多いけど、これも負けてない。早速頂こうと、フォークを手に取る。おお、柄の部分まで猫だ。徹底してるな。
味はもちろん美味しかった。
「熱くないか。」
「うん。ちょうど良いよ。気持ちいい。」
結論から言うと、泡風呂は最高だった。お湯はあったかくて気持ちいいし、泡で遊ぶのは楽しいし。何よりレオの身体が泡に隠れて何も見えないのが良い。平常心が戻ってくる。
泡をつけた指で輪っかを作って息を吹きかけると、ポポポと小さなシャボン玉がたくさん出てくる。
「楽しいか。」
「うん!」
「そうか。」
「レオは…何してるの?」
レオは湯船の泡を集め、それを私の身体にどんどん貼り付けている。私はもうすでに毛刈りを拒否し続けた羊みたいになっていた。顔と腕だけ泡から出ている今の状況は、さぞかし滑稽に見えるだろう。いや、可愛いか。この顔が泡から出てたら、普通に可愛いか。それよりもレオにこんなユーモアがあったことに驚きだよ。それともなに、私の裸は目に毒かい?
「お前を洗っているに決まってるだろう。」
「…そうなんだー。ありがとう!」
え、これで洗ってるつもりなの?普段自分の身体どうやって洗ってんの?全身泡洗顔かよ。それともこっちの世界の石鹸ってやつは、泡乗せとけば綺麗になる仕様なの?矢継ぎ早に浮かんでくるツッコミを頭をプルプルと振る事で吹き飛ばす。笑顔だ笑顔。愛されペットはそんな事言わないのよ。
でもミーアはいつもゴシゴシ洗ってたよなあ。つまりレオが洗いの素人ってことか。魔王様だし、風呂のたびに毎回メイドをたくさん引き連れてバスルームに消えてくから、自分で洗ったことなんてないんだろうな。
コンコン
「お待たせして申し訳ありません。リナ様のお風呂のお世話に参りました。」
どんどん貼り付けられていく泡で私の顔が埋もれそうになったその時、待ちに待った助け舟がやって来た。
「入れ。」
「失礼いたします。」
礼をとりながらバスルームに入ってくるミーア。ついと顔を上げ、泡だらけの私と目が合う。ミーアは私の惨状に目を見開き、固まった。
「……それでは、リナ様のお身体を洗わせていただきます。」
数秒で再起動できるのは流石だよね。ミーアは何事もなかったかの様に、私の元にやってきた。
「泡が少々多いようですので、少し落としても?」
「いいよ。」
「ありがとうございます。それでは、洗い場で洗いましょうね。」
「うん。あのね、レオが洗ってくれたんだよ。」
「まあ。魔王様に洗っていただいたのですね。確かに綺麗になっておりますね。では私は最後の仕上げだけさせていただきます。」
流石ミーア。私の意図を容易く読み取り、話を合わせてくれた。このままミーアが一から私を洗い直したら、レオにあんた全然洗えてないのよ!!って言ってるようなものだからな。
最後の仕上げって言ってしまった以上、短時間で要所だけ洗わないとだな。まあ一日くらい隅々まで洗えてなくてもいいよ。それに私まだそんなに汚れてないし…それでもミーアはさすがプロ。わずか数分で、私の全身をピカピカにしてくれた。腕が早すぎて見えなかったよ。見えたと思ったら残像なんだもん。
「仕上げが終わりましたよ。また湯船に入られますか?」
「レオはまだ入ってるの?」
「ああ。」
「じゃあ、また入る。」
「かしこまりました。」
ミーアに抱っこで湯船に入れてもらう。アワアワを流した後のアワアワ再び。なんという背徳感!
そう言えばレオは体洗わなくて良いのかな。まだ羊さんになってないみたいだけど…はっ、これはもしや…私が洗うパターン!?やってやらあ!
私は湯船の泡をかき集め、レオの身体にペトペトと貼り付けた。うーん、面積が広い。あんなに沢山泡を集めたのに、肩しか覆えていない…
「何をしている。」
「レオを洗ってるの。」
「俺の事は気にするな。洗う必要もない。」
「でもお湯に浸かってるだけじゃ綺麗にならないよ?」
「ふん…」
レオが指をパチンと鳴らす。するとレオの身体が、心なしか綺麗になったような…髪もさっきよりサラサラだし。
「何したの?」
「洗浄魔法だ。」
「え…じゃあ、風呂必要なくない…?」
「気持ちいいから入っているに決まってるだろう。」
「え。」
な、なんてことだ…レオにもそんな感情があったなんて。生まれてこのかた食事もしたことがなかったって聞いたから、てっきりロボットみたいな生活してるのかと思ったら…ちゃんと息抜きとか考えてるんだ。ちょっと安心。
「お風呂好きなの?」
「そうだな。気に入っている。」
「そっか。」
まあ、好きなことがあるって良い事だよね。例えそれが美意識高い乙女みたいな趣味だとしてもさ。
「もう上がる。」
「じゃあ私も。」
「リナ様、お身体お拭きしますね。」
ミーアがフワフワのタオルで私の身体を拭いてくれる。レオは自分で拭いてる。そこは魔法じゃないんだね。使い時がわからないんだよなあ。おっと、レオのレオが丸見えだ。でも一緒にお風呂に入った仲だからな。もう取り乱したりしない。初めての体験を済ませ、私はまた一歩素敵なレディに近付いたのだった。
取り乱さないと言えば、ミーアは目の前にナニが揺れてるのに全く動じない。馬鹿には見えない服でも着てるのかな?ってくらい平常運転。さては経験豊富…な訳ないか、魔族に性欲はないんだっけ。レオは魔王様でお世話されるのに慣れてそうだったから、きっと使用人も主人の裸とか見慣れてるんだろうな。
ミーアに新しい服を着せてもらい、髪も可愛くしてもらう。艶々のピカピカ。もうお昼くらいかな?お腹が空いてきたな。
レオとのお風呂が恒例行事になってしまったのを知ったのは、その日の夜の事だった。
ーーーーーーーー
お風呂あがり、レオとソファで寛いでいると、扉がノックされた。
「お食事をお持ちいたしました。」
「こちらで給仕しますので置いておいてください。」
「かしこまりました。」
メイドが持ってきたワゴンをミーアが扉の前で受け取る。さて、人間の国ではどんなご飯が出るのかな。あまり脂っこくないと良いんだけど。
ミーアが皿に乗せられた銀の蓋を開ける。
「可愛い!」
お皿に乗っていたのは、可愛らしい猫ちゃんたち。猫耳のついたハンバーグ、チキンライス。サラダとスープも猫型の器に入っている。完全に幼児食。ケンジさんの作る食事も可愛いのが多いけど、これも負けてない。早速頂こうと、フォークを手に取る。おお、柄の部分まで猫だ。徹底してるな。
味はもちろん美味しかった。
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