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10歳

淫夢の誘惑5

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それから毎晩、ローデリカはレイモンドの夢に入り込んだ。最初の頃は夢のコントロールを奪えない日もあったが、慣れてくればそれもなくなった。毎日、ローゼリアをけしかけては、それを拒絶したレイモンドを大人の身体で誘惑した。レイモンドはローデリカを見ると明らかに安堵し、その肉感的な肢体に縋り付いた。しかし、どうしても最後の一線を越える事が出来なかった。

「きっと、ローゼリアの顔のままだからだわ…。」

ローデリカは、未だにローゼリアの仮面を被ったままであった。レイモンドに僅かに残った理性が、妹を抱く事を拒絶しているのだろう。どうにかしてローゼリアの仮面を外したい。しかしそれには、レイモンドがある程度彼女を性的に求めなくてはならない。ローデリカが侵入しているのは、他ならないレイモンドの夢なのだから。

その日の朝、ローデリカはいつもの様にレイモンドに朝の挨拶と、体調を心配する言葉を投げかけた。いつもの様に応答していたレイモンドだが、ローデリカが彼から視線を外すと、レイモンドの視線を感じた。その視線は彼女の髪、唇、そして豊満な胸へと降りてきた。静かに、しかし確かにレイモンドはローデリカを見て喉を鳴らした。

「?どうしました?レイモンド様。」
「…はっいや、何でもない。すまない、ボーッとしていた。」
「ふふ、レイモンド様でもそのような時があるのですね。」
「ああ…」

ローデリカは何も気が付かない振りをしながら、内心笑った。

夜、レイモンドの夢の中。ローデリカは遂に、ローゼリアの仮面を脱ぎ捨て、彼女自身を晒した。ローデリカの顔を見て、レイモンドは理性をなくし、彼女を押し倒した。お互い全裸で肌を重ね合い、ローデリカは彼に口付けを落とした。

「…朝になってしまったわ。」

もう少しで彼と一つになれたのに。制限時間が短すぎて、中々進展しない。もどかしさを感じながらも、今回の一歩は大きかったとローデリカは喜んだ。その日の教室、レイモンドの視線を度々感じたローデリカは、レイモンドが自分を意識し始めている事を確信し、身体の芯が疼くのを自覚した。夢でも、現実でもいい。レイモンドの精が欲しい。
元々ローデリカは性に興味はなく、その知識も貴族令嬢ならば習う最低限の事しか知らなかった。それなのに、今はレイモンドを見るだけで顔が上気し子宮が反応した。今の彼女はまるで発情期の動物。レイモンドが望めば、ローデリカはすぐさま股を開くであろう。そんな自分の心境の急激な変化に、しかしローデリカは何の違和感も不信感も抱かなかった。今までが可笑しかったのだ。むしろ今が正常。あるべき姿に戻ったのだと確信していた。彼女は自身でも気が付かぬうちに、僅かに流れるサキュバスの血に支配されてしまっていた。


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「レイモンド様、今度の週末も生徒会のお仕事ですか?」
「いや、今週は家に帰ろうかと思ってね。忙しくて、ずっと帰っていなかったから。」
「まあ、それは良いですわね。きっと妹君も喜ばれますわね。」
「…そうだな。」

さり気なく妹の話題を出し、その微妙な反応にほくそ笑んだ。溺愛する妹を夢で汚したレイモンドは、今までと同じ様にローゼリアに癒しを求める事は出来ないだろう。そうなれば、レイモンドは次にローデリカに癒しを求める筈だ。何せ、夢の中ではあんなに愛し合っているのだから。
あれから、ローデリカは何度もレイモンドと肌を重ねた。未だ一線を越える事はなかったが、お互いを愛撫し合い、何度も達した。レイモンドの精を豊かな胸で受け止め、それを口にした。彼の魔力のこもった精を受け入れ、ローデリカは自身の力が増大していくのを快楽とともに感じていた。

「ふふ、ゆっくり休んで下さいませ。最近お疲れの様ですから。」
「ああ、そうするよ。ありがとう、ローデリカ嬢。」

僅かに色の篭ったアイスブルーの眼に見つめられ、ローデリカは胸を高鳴らせた。


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「…おかしい。夢に入れないわ。」

レイモンドが実家に帰った日。ローデリカはいつもと同じ様にレイモンドの夢の中に入ろうとしたが、今までになく大きな力で弾かれ、中を覗くことも出来なかった。何度試しても結果は同じ。その夜、ローデリカが夢の侵入に成功する事はなかった。


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「おはようございます、レイモンド様。ご実家では良くお休みになられた様ですわね。顔色がとても良く見えますわ。」
「おはよう、ローデリカ嬢。ああ、妹から安眠のポプリを貰ってな。それを枕元に置いたら、夢も見ない程に熟睡していて。朝起きたらスッキリしていたんだ。」
「まあ、妹君はポプリ作りの才能がおありなのかしら?」
「さあ、でもローゼリアは何でも優秀にこなすからな。ポプリにローゼリアの魔力が込められていて、すごく安心するんだ。それでよく眠れたのかもしれない。」
「相変わらず妹君をとても大切になさっているのですね。」
「ああ、僕の唯一の宝物だ。」
「まあ…羨ましいですわね、ふふ。」

ローデリカが夢に入れなくなったのは、間違いなくそのポプリが原因だ。それにレイモンドも変わらず妹を溺愛している様子だった。予想が外れた。ローデリカは苛立った。どの様な仕込みがなされているのかは知らないが、レイモンドがポプリを使っている限り、もう夢への侵入は果たせない。
それに、ローデリカが求めて止まないレイモンドの唯一という立場。それをいとも簡単にローゼリアに奪われてしまった。もう少しだったのに。もう少しで、その唯一は私の物だったのに。激しい嫉妬に襲われたローデリカは、レイモンドを今度こそ彼女の虜にすると決めた。でももう夜はだめだ。日中、学園の中。そこで勝負を仕掛ける。
ローデリカは心に決めた。
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