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第3話 闇の獣人、錬金術師アンネリーザの家に行ってトラップに引っかかる

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「超回復lv10」に成長させてしまったせいで、俺は勃起が続く状態を何とかしたいと思い、知り合いの錬金術師の店に闇魔法で転移した。

 さすがに朝早くからは店は開かれていないようなので、今度は店内に移動する。一癖ある女なので、そう何度も来たいとは思えないので、店内に何があるのかといった記憶も曖昧なので一度店の外に転移したがそれで正解だったようだ。

 窓から店内の様子がよく見えるので今度は店内に転移する。やっぱり以前来た時と店内の様子が違う。

 また誰かを脅して無理矢理手伝わせたか? いや、安く商品を売る代わりに店内の模様替えを手伝わせたのだろう。

 相変わらず店内は雑多な品がそこかしこに置かれている。とりあえず俺にとっては昼までに何とかしたいので、奥に見える階段を上がって彼女を起こしにいこうとして一歩踏み出した、その時。

 フィーン フィーン と、どこからともなく警報が鳴り響いてくる。

 しまった。そういえば泥棒除けに新たな魔道具を設置したと言っていたのを忘れていた。

 どうしたものかと逡巡している間に、天井から巨大な灰色の蜘蛛がいつのまにか出現していた。

 そいつは虚空から巨大な網を出現させて俺の頭上に降らせてくる。召喚魔法を使ったのだろうか。いや、考えるのは後でもできる。とっさにこちらもブレード・ネット(刃の網)の闇魔法バージョンを使って、上から降ってくる網を切り刻んでやる。

 まさか網をバラバラにされるとは思わなかったのだろう。動きの止まった蜘蛛に麻痺の魔眼を使って動きを封じてやる。

 それにしても俺としたことがこれほどの魔物を感知できなかったとは思えない。いちいち説明するのが面倒だからしていなかったが、ドラゴンを倒すまでにいろんなモンスターからさまざまなアビリティを吸収してきたのだ。その中には気配探知、気配捜索といったものがある。

 もちろん敵感知のアビリティもすでに吸収済みだ。すでに超・回復と同じマックスレベルの10まで上げてある。そりゃこの一年の間、ほとんど毎日のようにダンジョンに潜っているんだから最高レベルまで上がるだろうな。

 その俺がこの蜘蛛を感知できなかった。ということはこの蜘蛛は敵意を持っていないということになる。さらに気配探知系のアビリティにも引っかからなかったということは…

 「もしかしてこの蜘蛛、ゴーレムなのか? ちょっと調べてみるか…」

 と、言いながら闇の力を槍の形にして振りかざした時、間延びした女の声が上から響いてきた。

 「そうよ~。ラフィちゃんの言った通りその子はゴーレムなの~。せっかくの力作なんだから壊さないで~」

 と、言いながら階段をトントンと足早に降りてくる丸メガネの女が説明してくれる。

 やはり寝ていたのだろう。純白のガウンを羽織っている。腕を組んでこちらをじっと見つめているその姿は、紫の長い髪に、巨乳。そして腹も出っ張っていないし、尻もでかくない。いわゆるセクシーボディという奴だ。

 よく言えばセクシーでグラマーな女性。悪くいえばムチムチの淫婦ともいえる。

 「久しぶりね~え、ラフィちゃん。で、こんな朝早くからうちの店に不法侵入するなんてどういった用件かしらねぇ~?」
 
 どこかネットリとした感じで不法侵入、という所を強調してくる女。
 
 名前をアンネリーザ・シャスティーネという錬金術師の一族の令嬢だそうだ。もっともシャスティーネという錬金術師を俺は見たことがない。錬金術師というと詐欺師か変人と相場が決まっているからだ。当然この女も名門の出ではあるが、れっきとした変人と言える。それは間違いない。

 「寝ている所、すまなかったな。実はその…俺にとっては緊急事態になってしまって。あんたの開発したリングを
買いたいんだが。…ああ、もちろん一番強力な勃起制止効果のあるリングだ。値段は一個金貨2枚でどうだ?」

 「あなたねぇ…私の腕を買ってくれているのは嬉しいけど、普通はどんなに高くても銀貨50枚~80枚くらいの値段よ? だって男性獣人の勃起を抑えるだけの効用のリングなんだもの。それをリング一個金貨2枚だなんて…そりゃダンジョンに潜っていろんなモンスターを狩ってお金に困っていないのは知っているけど、世間知らずなのは相変わらずといったところかしらね~え?」

 
 どこか小馬鹿にしたような笑みを浮かべて俺を見つめているアンネ。いや、俺の場合はただの勃起じゃないんだけどな。いっそ全てを話してしまおうか…?
 
 黙ってしまっている俺の目の前を彼女は横切って、天井から落ちた蜘蛛方に歩いていく。

 そういえば麻痺の魔眼を使ったままだった。彼女が俺の方を向いていないので慌てて魔眼を解除する。

 急に足をばたつかせ始めた蜘蛛を怪訝そうに見た彼女は、何度か俺と蜘蛛を交互に見ていたが、このままでは埒があかないと思ったのだろう。左手を蜘蛛の方に向ける。

 すると蜘蛛がアンネの左手にはめられた青いブレスレットにはめられた水晶へと吸い込まれていく。

 おそらく時空魔法関係のマジックアイテムだろう。
 
 振り返った彼女はつかつかと俺の方に歩み寄ってきた。ちょうど俺の目の前で止まるとメガネを操作し始める。

 よく見るとメガネの縁には小さなボタンのようなものがいくつか付いている。これも彼女の作品の一つなんだろう。

 1分も経たないうちにアンネはメガネの操作を終えていた。

 「ちょっとラフィちゃん? また随分と強くなっているじゃないの~? おまけにちょっと魔族みたいな反応もあることだし…私の自慢の作品の鑑定メガネでもわからないことだらけだなんて、ショックだわ~」

 「いやその…話しても信じてもらえないというか…俺自身にとっても夢物語に限りなく近いと思っているし」

 「いいからちゃんと話してちょうだいよ~。でないとあなたの望みの商品、売りませんよ~? それでもいいのかしら~?」

 「そ、それは困る! だが…あんた、以前から俺の体とか調べたがっていたよな? 正直に全部話した所で信じてもらえるかわからんし、万一、他の錬金術師や商人、この国や他国の上層部にでも漏らしたら、俺はあんたを殺して自殺するぞ? それだけ重要な内容なんだよ、俺にとっては!」

 俺の必死な態度に彼女の表情が変わった。どうやら本当に深刻な内容だとわかったらしい。右手にあるブレスレットから一本のナイフを取り出した。奇妙な装飾の付いたナイフだ。

 そのナイフの刃には白い蛇と黒い蛇がまとわりついている模様が刻まれている。互いの体を交差させて二つの×を作って刃の先で白と黒の蛇の頭が向かい合っているという作りだった。

 そして柄には右に金の蛇の体が刻まれており、左には銀の蛇が刻まれていて、二匹の蛇の頭は柄の中央にある宝玉を飲み込むように左右から大きく口を開けている。

 一体何をするつもりかと言おうとした俺を尻目に、彼女は小指の先を軽く短剣で傷をつける。たちまち小指の先から血の球ができて、根本へと伝い落ちていく。

 「我、アンネリーザ・シャスティーネ、我が名、我が血、我が魂にかけてラフィアス・ゾルトロンドの語ることを誰にも漏らさぬとここに誓約する」

 アンネが誓いの言葉を言った瞬間、彼女のもっている短剣からアンネの体へとすさまじい「なにか」が流れ込んでいくのを感じた。

 突然のことだったので鑑定のアビリティを発動させる前に終わってしまったが、それを気にしている場合ではなかった。彼女が床の上にへたりこんでしまったからだ。

 俺は顔面蒼白な彼女を抱きかかえると、そのまま彼女の私室がある二階へと2段飛ばしで階段を駆け上がっていった。

 階段を上がってすぐの部屋が彼女の寝室だった。早速ベッドの上に横たえてやると、すぐに目を開けてくれた。

 「さっきやったのは誓約の儀式よ。蛇の神アナントスの力を宿した短剣で私の名と血と魂をかけて誓約したからね~。これであなたが何を喋っても秘密が他人に漏れる恐れはないわ~。そんな事したら私は即座にアナントスに命を奪われて魂もボロボロに朽ち果てて、何万年も苦しまないといけなくなるんですものね~」
 
 と、さっきの儀式の詳細を教えてくれるアンネ。口調こそはいつも通りだが、顔が青白い。無理をしているのは明白だった。

 とにかく元気になってもらわないといけないので、俺は何か元気になるものと念じながら闇の空間を呼び出して、手を突っ込んだ。出てきたのは昨晩、俺が量産した純度精液100パーセントの精液ポーションだった。

 10秒ほど見つめる。うん。これはまずい。効能としては間違っていないだろうが病人に飲ませるものじゃないだろうと自分にツッコミを入れながら闇の中の空間に戻そうとする。

 だがその時、彼女の手が動いて戻そうとする俺から精液ポーションをつかみとった。こういう風に薬とか自分の興味が絡むと身体能力が上がる奴がいる。彼女もその一人のようだった。

 「何かしらこれ~? 結構強いエネルギーを感じるんですけど~? 飲んでもいいのかしら~?」

 まじまじと精液ポーションを見るアンネ。俺がどう説明したらいいのかと迷っているうちに彼女はポーション瓶の蓋を回して開けるとゴクゴクと飲んでしまった。

 「あ、おい! せめて何かの飲み物に混ぜてから飲んだ方が…」

 彼女が飲んでいるのは俺の精液だ。当然ベットリしていて飲み心地はよくない。

 だが俺の心配を余所に、彼女は1分近くかけてポーション瓶の中身を飲みつくしてしまった。

 「確かに少し飲みずらかったけど、これはこれでおいしいかもね~。以前、あなたの血液を採取して検査したことがあったけど、その時の魔力量だと下級の回復ポーション以上、中級の回復ポーション未満だったわね~。

 でも、今のこの瓶の液体。飲んでみてわかったけどあなたの精液よね、これ? この精液に含まれる魔力量だと、中級回復ポーション以上、上級回復ポーションに匹敵するわ~。要するに大した素材を入れなくてもね。簡単に中級回復ポーションが作れちゃうのよ~。一緒に配合する素材次第では上級回復ポーションも比較的短時間で作れちゃうわね~。で、何があってこんなに魔力の含有量が増えたのか、説明してもらいましょうか~?」


 空になったポーション瓶を俺に戻すと、ベッドの側にあった収納棚の上に置かれたティッシュで口元についた俺の精液をぬぐうアンネさん。いやーその姿だけだと色っぽいんだよな。中身がアレなので積極的に付き合いたくはないんだが。

 とにかく俺は腹をくくって闇の女神様の神託から、倒した敵のアビリティを吸収できること。その結果ドラゴンも倒せるほどの実力を手にできたことを、ゆっくりと話していった。

 



 話を聞き終わったアンネは10分ほど目をつぶって何か考えていたようだったが、やがてゆっくりと目を開いて
メガネの位置を指先で修正しはじめた。

 どうもこれが彼女の内心の不安や懸念を解消するためのクセらしい。いきなり俺が女神様の祝福受けた獣人で、倒した相手の能力を奪って成長できる上に、いろんな魔法やモンスターの特殊能力すら操れると知ったのだ。普通、そういうのは物語や伝説の中でしか語られることはないのだから、アンネが悩むのも当然だろう。

 どうも彼女は俺に対してどういう風に接したらいいのか悩んでいるようだった。

 しびれを切らした俺は、このままでは埒があかないのでおずおずと思い悩む彼女をちょっと急かしてみる。

 「あのーアンネさん? 俺の言ったことを考えるのはいいんだけどさ。俺、昼から局長に呼び出されていて、それまでにこれ、何とかしないといけないんだけど…」

 と、言いながら俺は股間を指さした。罠にかかったり、俺の事情を説明しなければいけなかったりといろいろあったが、そもそも俺はこの元気すぎるムスコを何とかしてもらう為にこの店に来たのだ。情けない話だが局長の光属性攻撃魔法の餌食になることを考えれば、アンネにジト目で見られることくらい小さいことだ。

 やはり俺の予想通りにアンネは俺の股間を半眼で見つめる。考え事の邪魔しやがって、とか思っているに違いないが、こっちも時間は無限にあるわけではないのだ。彼女はため息を大きくつくと、こう言った。

 「とにかく一度見てみないとわからないから、服を脱いでちょうだいね~」
  
 「脱ぐのはいいけど…まさか全裸にして俺を解剖実験とかしないよな?」

 「しないわよ~。とにかくあなたの話だと並の勃起抑制リングじゃ効かないみたいだから、私がちょっとテストをしてやろうと言ってるのよ~。ああ、大丈夫。ぜんぜん痛くはないから安心して脱いでちょうだいね~」


 嫣然と微笑むアンネリーザ。もうここまで来たら彼女の言う通りにするしかないだろう。局長の光属性魔法の連射による地獄、もとい拷問に比べればまだマシだ。

 今度は俺がため息をつく番だった。すぐ側に直径2メートルほどの円形状の闇の空間を作ると、俺はそこに着ている服を全て収納していった。
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