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リーヴ村再生編
第4.5話 カインの記録 ──名なき地で目覚めた朝に
しおりを挟む……この世界に来て、何日経っただろうか。
起きたら、知らない屋敷。窓の外には畑と森、舗装もされていない道、風で軋む木の扉。
最初は夢かと思った。だが五感はあまりに生々しく、何より“疲れ”がなかった。
仕事の後遺症のように張っていた肩も、目の奥の痛みも消えていた。
リアナという娘が世話をしてくれている。彼女の話によると、ここは「リーヴ村」。
そして、俺はこの村と土地を預かる“地主”という立場になっているらしい。
……転生。そんな言葉がよぎる。
けれど、これはただの異世界ファンタジーではない気がする。
この世界では、“土地に名がある”ことが大前提だ。
名を呼ばれた土地は風を吹かせ、水を湛え、命を育む。
だが名を忘れられた土地は、少しずつ沈黙し、やがて“灰”になる。
「地呼の儀」。
リアナから教わった儀式の名だ。
名を失った土地に、もう一度“名”を呼び戻すための行為。
……つまり、ここでは“名前”が生きる条件であり、“呼ばれること”が命の継続らしい。
不動産会社で働いていた頃、“土地の名前”なんて、物件コードか町名かぐらいの意味しかなかった。
でも、この世界ではそれがすべてだ。呼ばれれば、土地は生きる。呼ばれなければ、死ぬ。
そして、それを呼び戻す者が“地主”。
まるで、神職と土地開発を一人でやるような役目だと思った。だが……なぜだろう。
心のどこかで、この役目を“受け取りたい”と思っている自分がいる。
屋敷の奥に、契約の間と呼ばれる部屋がある。
そこには、かつて交わされた地霊との契約の記録と、村の地図が残されていた。
……だが、ほとんどが塗り潰されていた。“契約のない土地”として。
俺がこれからやるべきことは、一つずつ、その“失われた名”を呼び戻すことだ。
わかっているのはそれだけ。
この世界の理も、地霊の正体も、儀式の本当の意味も、まだ知らない。
でも――名前がある限り、人は土地に住める。そして、土地も人を受け入れてくれる。
……だから俺は、やってみようと思う。
たとえ、この世界が俺に何を求めているのか分からなくても。
少なくとも――名前を呼ばれないまま、死んでいく土地を、見捨てたくはない。
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