竜騎士王子のお嫁さん!

林優子

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22.翌日

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 目を覚ますとそこにあったのは王子の顔だった。
 見られてた。
「おっ、おはようこざいます」
「おはよう。まだ寝てて良い」
 美形は朝のボサボサの髪のままでも美形であった。
「いえ、起きます」
 と体を起こす。
「……!」
 膣ってところかな。じんじんして、そして腰全体が痛い。
 全身がだるい。

 部屋を見回すと、窓のカーテンはすでに開けられていた。
 部屋は昨日思った通り趣味の良い高価そうな家具が並んでいたが、必要なものしか置かれていない。
 花瓶に入ったお花のようなものもなく、どことなく殺風景な気がした。
 男の人の部屋というのはこういうものだろうか。
 何となく、日が高い気がする。
「何時ですか?」
「十二時だ」
「えっ、起こしてくれれば良かったのに」
「いや、疲れているだろうと思って。それから寝顔を見ていた」
「よだれ垂らしてませんでしたか?というかグレン様は何時くらいに起きたんですか?」
「六時間くらい前」
 長い。

「……いや、起こして下さい」
「見つめていたり撫でてたらすぐ時間が経ってしまった」
 そんなことされてよく起きなかったな、私。

「食事にするか?」
 そう問われて私は頭を振る。
「いえ、その前に出来たら風呂入りたいんですが」


 お風呂はこの部屋とは別にあるらしい。
 毛布でグルグル巻きにされて、そのまま抱っこで運ばれた。

「ポーリーン、開けてくれ」
 と両手塞がった王子はドアの向こうに声を掛ける。
「はい、殿下」
 と女の人の声がして、ドアが開けられる。
 初老の女官らしい女性が立っていた。

「あれ、女の人、いるんですね」
「ごく少数だがいる。ポーリーンだ。俺の乳母やだった人だ」

「まあ、エルシー様ですね。初めまして。離宮と殿下のもう一つのお住まいである王太子宮の女官長をしておりますポーリーンでこざいます」
「あ、はい。エルシーです。初めまして」
「この度はとんだことで」
「はい。色々びっくりしました。以後よろしくお願いします」
「まあこちらこそ。王子、良かったですね、可愛いお妃様で」

 ……などと挨拶を交わしながら、部屋に通される。
 部屋は明らかに女性向きの華やかなフィッティングルームと談話室が組み合わさったような部屋だった。
 広すぎて、そして豪華すぎて分からなかったが、そこはお支度場と呼ばれるところで、ドレスを脱ぎ着したり、簡単に化粧をしたりする場所だった。
 続く部屋が風呂場だった。
 風呂場も豪華だった。
 猫足の大きなバスタブがあり、私はそこに横たえられる。
 しかし王子は出て行こうとしない。
 毛布を外されると裸なのだ。
 王子はじっと私を見ていた。
 はっきり言って決まり悪い。
 出て行け。の意味を込めて、「ありがとうございました、グレン様」と声を掛けた。

「風呂に入るところが見たい」
 きっぱり断りましたよ、そんなの。
「嫌です。出て行って下さい」





 ***

 王子と入れ替わりに後二人の女官が来て、お風呂に入れてくれた。
 腰はまだ何となく痛く、そして股に血が付いている。
 あまりの生々しさに怖くて泣きそうになったが、三人の女官が「大丈夫よ、泣かなくて」「痛かったわねぇ、でも慣れるものだから」「暖めると少し痛くなりますよ」と頭をかわるがわる撫でてくれた。
 お風呂に入ると暖まったせいか、気持ちが落ち着いたからなのか痛みは少し収まった。
 髪や体を洗ってもらいながら、ポーリーンさんが今日の予定を教えてくれた。

 王子はお妃様候補を家には帰さず、そのまま離宮に軟禁しているということになっているらしい。
 確かにこのまま私が子爵家に帰ると騒ぎになる。
 今後数日私はこのまま離宮にいることになるという。
「エルシー様のお父上様は後でこちらにいらっしゃいますよ」
「えっ、父がですか?」
「はい。殿下がこの度のことをご説明になりますので」


 お風呂の後は全身に香油をすり込まれる。
 気持ちいい、癒やされる。
 淑女はここでさらに香水を香らせるものだが、それは使わなかった。
 王子はあまり香水のようなものは好まないそうだ。

 デイドレスに着替えようとお風呂場を出て、下着のスリップドレスのまま隣の部屋に行くと、王子がいた。

 さすがに彼も風呂に入り、身支度は調えていたが、何故ここに?
「待ってたんですか?」
「待ってた」
 そしてハグされて匂いを嗅がれる。

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