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第二章
03.二人目予約入りました
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結婚式当日に二人目の赤ちゃんの予約が入った私です。
「伯父上、余計な圧力を掛けないで頂きたい」
と王子はアルステアの陛下をにらむ。
アルステアの陛下はそれを軽くいなす。
「まあ、グレン、そう怒るな。出来たらで良い。リーン、こちらに」
「はい、父上」
と六、七歳くらいの小さな男の子が進み出る。
黒髪に青い瞳。
綺麗で深い青、青玉の瞳はアルステアの陛下と、そして竜の国のチャールズ陛下と同じだ。
陛下の青い瞳は、アルステアの王女であるお母様譲りらしい。
「リーン、竜の国の主と妃殿下にご挨拶なさい」
促されるとその子は丁寧にお辞儀する。
「アルステア王が一子リーンでございます」
……アルステアの陛下は、六十過ぎくらいのお歳に見える。
だが、リーン王子は孫ではなく、陛下のお子様らしい。
つまり王子の従弟。
「グレン、この子を預ける」
アルステアの陛下はそうおっしゃった。
「…………」
「……エルシー、どうした?」
固まった私に王子が心配そうに声を掛けてくる。
「いっ、いえ、色々急でびっくりしちゃって、あの、アルステアって遠いですよね。私……」
赤ちゃん、まだいないけど、二番目に産む子はアルステアって国に行くことになるんだろうか。
リーン王子はまだ小さな男の子だ。
こんな歳の子供と私は離ればなれになっちゃうのかな……?
「……私……」
つい、涙ぐんでしまった。
「大丈夫だ、エルシー。何も心配はいらない。お前が嫌ならアルステアには王子も王女もくれてやりはしない」
そう言うと王子は私を抱きしめた。
「安心しろ。二人目だろうが、三人目だろうが十人目だろうが外国にはやらない。王太子の他に公爵位は五つ持っている。それで足りないなら王家が持つ爵位がある」
王子は私の頬や額にキスしてくる。
「グレン様……」
人前だから怒らないといけないのかも知れないが、そんなことより、今は安心させるように撫でてくる王子の手や唇が嬉しい。
私も王子の背中に腕を回す。
「私の持っている領地もあるから姫の子に上げよう。だから安心して欲しい。エルシー姫が望まぬならアルステアには何もくれてやらないよ」
とおっしゃるのはチャールズ陛下だ。
王子の反対側で私を守る様に立っている。
「二人揃ってひどい甥だな。こちらはどうしても青髪の子が必要なのだ」
とアルステアの陛下がおっしゃった。
王子は私を抱きしめながら、アルステアの陛下をにらむ。
「伯父上、この国はアルステアではない。俺にはこれより大事なものはありません。アルステアは母の国だが、滅ぼうがどうしようが構いはしません。一人もやりません」
「え、それはさすがに駄目なんじゃあ……」
王子の言い草があんまりなので、ちょっと正気に戻った。
「えっと、小さいうちは嫌ですけど、大きくなって本人が行きたいならアルステアに行ってもいいです。でもそもそも産めるのかどうか分かりません」
「いや、よく考えたらエルシーの可愛い娘か息子だ。手放したくない」
王子はなんか妙に先走ったらしく、ぎゅっと私を抱きしめる。
「外にはやらない」
「いいえ、グレン様、私が言うのも何ですが、正気に戻りましょう。赤ちゃん、まだ産まれてませんし、本人の意志もありますし、今決めつけなくても……」
というか、こんな人前で外国の国王陛下に喧嘩売るようなことを言うのは良くないだろう。
王子の腕の隙間からアルステアの陛下を見ると怒っているようには見えない。
むしろ、笑っておられる?
目が合うとニコリとなさる。
「あ、あの……失礼を申し上げました……」
と謝る。
「エルシー、話さないで良い」
王子はまた一段と抱きしめてきた。
「いや、甥が愛して止まぬ女性と聞いてはいたが、本当らしい。グレンは常日頃からあまり物を欲しがるということのない子だったから、驚いたよ」
「あの、本当にお国のアルステアは青い髪の子じゃないと王位を継いでは駄目なんでしょうか?」
アルステアの陛下は苦々しいお顔で頭を振る。
「継がせられない。試したくはない」
我が国同様、王が青髪でなかったことが、アルステア国の歴史ではないらしい。
つまり、何が起こるのか誰にも分からないのだ。
国家としてそんな危険は犯せない。
「あの……、約束は今は出来ません。だけど、私とグレン王子殿下の赤ちゃんが、大きくなって自分の意志でそちらに行きたいと言うなら、行かせたいと思います。それでは駄目でしょうか?」
「十分だ。エルシー、感謝しますよ」
アルステアの陛下は私に深々頭を下げられた。
「あの、グレン様もそれでいいですよね?」
王子は首を横に振る。
「良くない。一人も手放したくない」
「でも最低でも二十年近く先の話ですし、本人の意志尊重ですし、悩んだり考えたりする時間はまだ一杯あります。今決めつけなくてもいいと思います。それに子供が巣立ってから二人でゆっくり過ごす老後も楽しいです、多分」
「二人でゆっくり老後……。そうか、それは良いかもしれない」
王子は思い直したみたいだ。
「伯父上、余計な圧力を掛けないで頂きたい」
と王子はアルステアの陛下をにらむ。
アルステアの陛下はそれを軽くいなす。
「まあ、グレン、そう怒るな。出来たらで良い。リーン、こちらに」
「はい、父上」
と六、七歳くらいの小さな男の子が進み出る。
黒髪に青い瞳。
綺麗で深い青、青玉の瞳はアルステアの陛下と、そして竜の国のチャールズ陛下と同じだ。
陛下の青い瞳は、アルステアの王女であるお母様譲りらしい。
「リーン、竜の国の主と妃殿下にご挨拶なさい」
促されるとその子は丁寧にお辞儀する。
「アルステア王が一子リーンでございます」
……アルステアの陛下は、六十過ぎくらいのお歳に見える。
だが、リーン王子は孫ではなく、陛下のお子様らしい。
つまり王子の従弟。
「グレン、この子を預ける」
アルステアの陛下はそうおっしゃった。
「…………」
「……エルシー、どうした?」
固まった私に王子が心配そうに声を掛けてくる。
「いっ、いえ、色々急でびっくりしちゃって、あの、アルステアって遠いですよね。私……」
赤ちゃん、まだいないけど、二番目に産む子はアルステアって国に行くことになるんだろうか。
リーン王子はまだ小さな男の子だ。
こんな歳の子供と私は離ればなれになっちゃうのかな……?
「……私……」
つい、涙ぐんでしまった。
「大丈夫だ、エルシー。何も心配はいらない。お前が嫌ならアルステアには王子も王女もくれてやりはしない」
そう言うと王子は私を抱きしめた。
「安心しろ。二人目だろうが、三人目だろうが十人目だろうが外国にはやらない。王太子の他に公爵位は五つ持っている。それで足りないなら王家が持つ爵位がある」
王子は私の頬や額にキスしてくる。
「グレン様……」
人前だから怒らないといけないのかも知れないが、そんなことより、今は安心させるように撫でてくる王子の手や唇が嬉しい。
私も王子の背中に腕を回す。
「私の持っている領地もあるから姫の子に上げよう。だから安心して欲しい。エルシー姫が望まぬならアルステアには何もくれてやらないよ」
とおっしゃるのはチャールズ陛下だ。
王子の反対側で私を守る様に立っている。
「二人揃ってひどい甥だな。こちらはどうしても青髪の子が必要なのだ」
とアルステアの陛下がおっしゃった。
王子は私を抱きしめながら、アルステアの陛下をにらむ。
「伯父上、この国はアルステアではない。俺にはこれより大事なものはありません。アルステアは母の国だが、滅ぼうがどうしようが構いはしません。一人もやりません」
「え、それはさすがに駄目なんじゃあ……」
王子の言い草があんまりなので、ちょっと正気に戻った。
「えっと、小さいうちは嫌ですけど、大きくなって本人が行きたいならアルステアに行ってもいいです。でもそもそも産めるのかどうか分かりません」
「いや、よく考えたらエルシーの可愛い娘か息子だ。手放したくない」
王子はなんか妙に先走ったらしく、ぎゅっと私を抱きしめる。
「外にはやらない」
「いいえ、グレン様、私が言うのも何ですが、正気に戻りましょう。赤ちゃん、まだ産まれてませんし、本人の意志もありますし、今決めつけなくても……」
というか、こんな人前で外国の国王陛下に喧嘩売るようなことを言うのは良くないだろう。
王子の腕の隙間からアルステアの陛下を見ると怒っているようには見えない。
むしろ、笑っておられる?
目が合うとニコリとなさる。
「あ、あの……失礼を申し上げました……」
と謝る。
「エルシー、話さないで良い」
王子はまた一段と抱きしめてきた。
「いや、甥が愛して止まぬ女性と聞いてはいたが、本当らしい。グレンは常日頃からあまり物を欲しがるということのない子だったから、驚いたよ」
「あの、本当にお国のアルステアは青い髪の子じゃないと王位を継いでは駄目なんでしょうか?」
アルステアの陛下は苦々しいお顔で頭を振る。
「継がせられない。試したくはない」
我が国同様、王が青髪でなかったことが、アルステア国の歴史ではないらしい。
つまり、何が起こるのか誰にも分からないのだ。
国家としてそんな危険は犯せない。
「あの……、約束は今は出来ません。だけど、私とグレン王子殿下の赤ちゃんが、大きくなって自分の意志でそちらに行きたいと言うなら、行かせたいと思います。それでは駄目でしょうか?」
「十分だ。エルシー、感謝しますよ」
アルステアの陛下は私に深々頭を下げられた。
「あの、グレン様もそれでいいですよね?」
王子は首を横に振る。
「良くない。一人も手放したくない」
「でも最低でも二十年近く先の話ですし、本人の意志尊重ですし、悩んだり考えたりする時間はまだ一杯あります。今決めつけなくてもいいと思います。それに子供が巣立ってから二人でゆっくり過ごす老後も楽しいです、多分」
「二人でゆっくり老後……。そうか、それは良いかもしれない」
王子は思い直したみたいだ。
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