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第二章
11.花の王冠
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婚礼の儀式は、教会での結婚式と同時期であるのが望ましいらしい。
王子がまとまった休暇を取れるのもこの時期だけなので、結婚式とその後三日に渡る式典が終わってすぐ、新婚旅行の最初の目的地は王家生誕の地ルルスとなった。
華やかな教会の結婚式とそれに続き王宮で開かれる三日間の宴とは裏腹に、王家の婚礼の儀式は、昔、これを悪用して王になろうとした者がいたとかで、今は秘匿とされる儀式になっていた。
参列するのは、数名の竜騎士と選ばれた騎士達。
王家の親戚である公爵家に、最初にエステルに忠誠を捧げた三家、地方の豪族を祖先とした五家、合計して八家と呼ばれる侯爵家や伯爵家、そして花嫁の両親である私の父と母も儀式に立ち会う。
山奥だし、馬を使って行くには無茶苦茶遠いので、参列者の方々は結婚式が終わって間もなくこのルルスに旅立った。
王宮から百五十キロ離れた王家の始まりの地ルルスに私達が辿り着いたのは、昼を少し過ぎた頃だ。
ルルスは、シンと静まりかえった何もない野原だった。
王家の禁足地とされて、ここには限られた人間以外は立ち入ることを許されない。
すでに婚礼の儀式の支度は始まっていて、近くでは天幕が張られている。
王子は天幕には立ち寄らず、王冠にするための花冠を作るとかで、私を連れてゲルボルグに乗り、二人と一匹だけで森の奥へと向かう。
途端にまるで行く手を阻むかのように濃い霧が立ちこめてきたが、王子に怯む様子はない。
「真っ直ぐに進め」とゲルボルグを指示する。
どれほど飛んだのだろう。
ふと、湿った霧の匂いではなく、澄み切った空気が辺りを包む。
花の香りが鼻をくすぐった。
「ゲルボルグ」
王子は花を傷付けないよう、そっとゲルボルグを花畑の端に降ろす。
季節は秋。高原では花の季節は終わりかけているはずだが、そこには一面のお花畑が広がっていた。色々な花が咲き乱れている。
「綺麗……」
思わずそう漏らす私に、王子は囁いた。
「エルシー、ここが本当のルルスの地だ。王家はこの地を守ることで精霊達に王と認められていると言われている」
そこが、とても神聖な場所なのは私にも分かった。
王子はその花畑に分け入ると花を摘み、私に手渡した。
「エルシー、これで花冠を作ってくれ」
「あっ、はい。グレン様と私の分ですね」
「そうだ。この本数と花の種類を良く覚えておけ」
そして王子はおもむろに言った。
「王家の花冠とは万能薬のレシピなのだ」
「は?」
-*-*-*-*-*-
今夜もう一話更新します。
王子がまとまった休暇を取れるのもこの時期だけなので、結婚式とその後三日に渡る式典が終わってすぐ、新婚旅行の最初の目的地は王家生誕の地ルルスとなった。
華やかな教会の結婚式とそれに続き王宮で開かれる三日間の宴とは裏腹に、王家の婚礼の儀式は、昔、これを悪用して王になろうとした者がいたとかで、今は秘匿とされる儀式になっていた。
参列するのは、数名の竜騎士と選ばれた騎士達。
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山奥だし、馬を使って行くには無茶苦茶遠いので、参列者の方々は結婚式が終わって間もなくこのルルスに旅立った。
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ルルスは、シンと静まりかえった何もない野原だった。
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王子は天幕には立ち寄らず、王冠にするための花冠を作るとかで、私を連れてゲルボルグに乗り、二人と一匹だけで森の奥へと向かう。
途端にまるで行く手を阻むかのように濃い霧が立ちこめてきたが、王子に怯む様子はない。
「真っ直ぐに進め」とゲルボルグを指示する。
どれほど飛んだのだろう。
ふと、湿った霧の匂いではなく、澄み切った空気が辺りを包む。
花の香りが鼻をくすぐった。
「ゲルボルグ」
王子は花を傷付けないよう、そっとゲルボルグを花畑の端に降ろす。
季節は秋。高原では花の季節は終わりかけているはずだが、そこには一面のお花畑が広がっていた。色々な花が咲き乱れている。
「綺麗……」
思わずそう漏らす私に、王子は囁いた。
「エルシー、ここが本当のルルスの地だ。王家はこの地を守ることで精霊達に王と認められていると言われている」
そこが、とても神聖な場所なのは私にも分かった。
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「エルシー、これで花冠を作ってくれ」
「あっ、はい。グレン様と私の分ですね」
「そうだ。この本数と花の種類を良く覚えておけ」
そして王子はおもむろに言った。
「王家の花冠とは万能薬のレシピなのだ」
「は?」
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今夜もう一話更新します。
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