私の生きる場所を見つけるまでの物語

お米育ち

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5.フェイは(1)

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 翌日の朝。

 フェイはルーカスと共に宿を出発していた。
 
 ――ルーカスには出会った日の恩返しをしたいと思っていたから、森を案内するのはまたとないチャンスね!
 ――でも、ルーカスは昨日、森にある光る湖を探していると言っていたけど、そんな湖あったかな?森の湖といえば魔法使いさんの住んでいる湖だけど、魔法使いさんに聞いたらわかるかしら?

 そんな恩返しの算段を立てていると、頭上から重たいため息が聞こえた。

「まさか、街の住人が誰一人として光る湖の場所を知らないとは……。そもそも湖があるかもわからないだと?歩いて数時間程度の距離にある森を誰も把握していないなんてことあり得るのか……?」

 ――そういえば、私が森でお母さんたちと過ごしていた時、森で人間を見たことはなかったわ。

 フェイはそんなことを考え、湖はあるとルーカスに伝えたかったが、伝え方がわからなかったので、もどかしい気持ちになった。

 道中では様々な草花が咲いており、見つけるたびにルーカスは少量を採取し、瓶に詰めて鞄に入れていた。フェイが不思議そうな顔で眺めていると、ルーカスはフェイに見せるように鞄に入れる前の瓶を揺らした。

「俺の故郷はここより随分と北側にあって、実家は商家を営んでいるんだが、これは南側の地方でしか生えない貴重な薬草なんだ。」
「光る湖もだが、森に自生している薬草もどんなのがいるか楽しみだな」

 そう話すルーカスは本当に楽しそうで、少しだけ羨ましくも思えた。
 
 しばらく歩き続けると森の入口が見えてきた。フェイは森を出た日からまだ数日しか経っていないというのに、もう何か月も経ったかのように感じた。

「随分と鬱蒼とした森だ……入る前から拒絶されてるような気分になるのはなんだ……?」

 ルーカスの呟きを拾ったフェイは不思議なことを聞いたとばかりに首を傾げた。
 
 ――森に拒絶されている?こんなに穏やかさに満ちているのに……?

 太陽の光を浴びた森は青々としていて、木々の隙間からは木漏れ日が差し込んでおり、すべてを受け入れて包み込んでくれる。そんな穏やかさが満ちているようにフェイは感じていた。

 ――猫と人間では見え方が違うのかしら?
 
 そんなことを考えながらフェイは森に歩みを進めることにした。足を止めてしまったルーカスを先導するかのように。

「フェイ、この森は猛獣が出るかもしれない。そんなに先に進んだら危ないぞ……!」

 後ろから聞こえるルーカスの声を無視して、フェイは考える。
 この穏やかな森に棲んでいたのだから、ここに天敵の鳥や自分と同じサイズ程度の四足動物はいても、猛獣など危険な生物がいないことは知っている。
 いったい何が彼をそこまで怯えさせるのだろうか。

 フェイはとりあえず、案内の役目を果たすべく魔法使いの住む湖に向かっていた。入ってきた入り口からでは湖の北側に出てしまうだろうが、あの神秘的な湖を見ればルーカスもこの森のことを気に入ってくれるかもしれないと思ったのだ。
 
 フェイが迷いなく進む姿を見て腹を括ったのか、ルーカスも以降は怯えた様子を見せずに、所々で薬草を採取する姿が見られた。
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