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【第二章 第一部】
第七話 ピピの実力
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「ギュエエエェッ!」
――シュババッ!
広げた翼から放たれたのはファイアアローじみた何本もの羽。
大した威力ではないが、数がとにかく多い。
「私が防ぐ――」
「大丈夫、そこにいて」
ライラが前に出ようとしたのを制すると、ピピは俺たちを攻撃から守るように立ち、大鎌をすごい速度で振り回し始める。大体の攻撃はそれで防げたが、完全にとはいかずいくつかの攻撃が彼女の体に突き立った。
「ピピさんっ!」
「大丈夫、効かない。食べてるから」
(食べてる……?)
だが……宣言通り、魔物の攻撃は彼女の体に殆ど傷をつけず、羽根はポロポロと下に落ちてゆく。アビリティ《吸魔体質》の効果もあるのか、無傷でしのいだピピは冷静な瞳で敵を見据えていた。
「クケェェェッ!」
羽の雨が無効化されたのを知るやいなや、奴らはこちらに直接攻撃を仕掛けてくる。この間合いなら俺たちにもやれることはある。
「リュカ、行くぞ!」
「あいっ!」
同時にライラの魔力障壁の影から飛び出た俺たちは、ピピと共に三体バラバラに襲いくるファイアバードを迎え撃つ。
(頼むぜ……)
刀を抜く感触は久しぶりだが、鞘が丁寧に作られているためか、不気味なほど抵抗が無いのに違和感を感じる。
「ケァァァァッ!」
「シッ!」
俺は鋭い爪で掴みかかって来た攻撃をかわすと、上に刀を振り上げ羽根を斬りつける。そしてバランスの崩れて高度が下がった奴の体の中心に刃を差し込むと、空中でファイアバードは灰に変わった。
「ふぅ……」
いい刀だ……切れ味もさることながら、抜群に取り回しがしやすい。俺の体型を見越してこれを寄こしたというなら……本当にあの元リーダーは恐ろしい。
「お見事。強いね、テイル」
「お互いにな」
同時に一体を切り裂き片付けたピピが鎌を肩に引っ掛けて言う。
俺が拳を合わせようと突き出してみたが、彼女は良く分からないというように首を捻ったのでやめておいた。
問題はリュカだが……。
「くそっ、逃げるなー! 《ツイン・ループ》! 《ツイン・ループ》! 降りてこーい!」
接近戦なら分があるのかも知れないが、相手はヒットアンドアウェイを繰り返す。双剣を投げて放つ《ツイン・ループ》もうまくかわされて当たらない。
リュカがキャンキャン騒いで手詰まりとなったところで、奴は胸を膨らました。
「……危ない」
その時すでに走り出していたピピは、大鎌の根元に巻き付けた鎖を素早く外して操り枝に巻きつけると、しなる反動を利用して宙を舞う。
「クキィィィ!」
気づいたファイアバードがあわててブレスを止め、ホバリングから体の向きを修正したが、それより早く大鎌が、その背中を切り裂く。
「ケァ……」
「……終わり」
さすがBランク冒険者……見事な動きで着地すると、彼女は鎖を引き戻して大鎌を閉じる。悲鳴を残して大地に転がった鳥はすぐに形を崩しだすが、その中から現れたアイテムにリュカは鼻をひくつかせた。
「この匂い……あっ、これって! おにく!?」
例のアレ。
油紙のようなものに包まれた、大振りの肉塊が、灰の中から出現したのだ。
これこそが、ドロップアイテム《ファイアバードの胸肉》。
《★★★ ファイアバードの胸肉(食材)》
詳細説明:Cランクモンスター・ファイアバードから落ちる赤い鶏むね肉。調理スキルで下処理をせず食べると口の中が火傷するので注意。体力増進の効果がある。
紙に包まれているとはいえ、地面に生肉がぽつんと置かれている様子は少しシュール。その不思議な光景に、おそるおそる指で上から感触を確かめたライラも半笑いになる。
「こ、これを食べるんだ……へぇ」
「よかった、早速ひとつ。預からせてもらって、後で清算しよう」
ピピは律儀にそんなことを言うと、背負った箱にそれを収める。
箱の口から白い靄が出て来て、近寄ると少しひんやりとした冷気が漂っているのが分かり、俺の頭にある品が思い浮かぶ。
「それって、《凍り箱》か?」
「……秘密にしておいて欲しい。結構高いものだから」
そう言うと、ピピは人差し指を口元に当てた。
これも彼女があまり他人と組みたがらない理由のひとつなのかもしれない。
「ひんやりして気持ちいいのです~」
「ふ~、生き返るわね」
「悪いけど、開けてると無駄に魔力を消費するから閉める」
焚火にでも当たるかのように冷気を浴び始めたチロルとライラのふたりは、すぐに蓋をされてがっかりする。
なんでも、供給された魔力を使い切るとただの箱になってしまうらしい。
ファイアバードというくらいだ、肉も熱に強いのかも知れないが……食べるのならなるべく新鮮な物を選びたいので、無駄な消耗は避けるべきだろう。
「今日はたくさん仕入れるつもりで来た。彼らの縄張りを見つけたらどんどん教えて欲しい」
「ああ。リュカ……お前の鼻頼りにしてるぞ?」
「よっし、まっかせて! おにくちゃ~ん、どこかな~どこかな~?」
ピピと俺の言葉を受けて、鶏肉探知機と化し目をきらめかせるリュカの嗅覚に従いつつ、俺たちはファイアバードたちを見つけては倒すことを飽きるまで繰り返した。
――シュババッ!
広げた翼から放たれたのはファイアアローじみた何本もの羽。
大した威力ではないが、数がとにかく多い。
「私が防ぐ――」
「大丈夫、そこにいて」
ライラが前に出ようとしたのを制すると、ピピは俺たちを攻撃から守るように立ち、大鎌をすごい速度で振り回し始める。大体の攻撃はそれで防げたが、完全にとはいかずいくつかの攻撃が彼女の体に突き立った。
「ピピさんっ!」
「大丈夫、効かない。食べてるから」
(食べてる……?)
だが……宣言通り、魔物の攻撃は彼女の体に殆ど傷をつけず、羽根はポロポロと下に落ちてゆく。アビリティ《吸魔体質》の効果もあるのか、無傷でしのいだピピは冷静な瞳で敵を見据えていた。
「クケェェェッ!」
羽の雨が無効化されたのを知るやいなや、奴らはこちらに直接攻撃を仕掛けてくる。この間合いなら俺たちにもやれることはある。
「リュカ、行くぞ!」
「あいっ!」
同時にライラの魔力障壁の影から飛び出た俺たちは、ピピと共に三体バラバラに襲いくるファイアバードを迎え撃つ。
(頼むぜ……)
刀を抜く感触は久しぶりだが、鞘が丁寧に作られているためか、不気味なほど抵抗が無いのに違和感を感じる。
「ケァァァァッ!」
「シッ!」
俺は鋭い爪で掴みかかって来た攻撃をかわすと、上に刀を振り上げ羽根を斬りつける。そしてバランスの崩れて高度が下がった奴の体の中心に刃を差し込むと、空中でファイアバードは灰に変わった。
「ふぅ……」
いい刀だ……切れ味もさることながら、抜群に取り回しがしやすい。俺の体型を見越してこれを寄こしたというなら……本当にあの元リーダーは恐ろしい。
「お見事。強いね、テイル」
「お互いにな」
同時に一体を切り裂き片付けたピピが鎌を肩に引っ掛けて言う。
俺が拳を合わせようと突き出してみたが、彼女は良く分からないというように首を捻ったのでやめておいた。
問題はリュカだが……。
「くそっ、逃げるなー! 《ツイン・ループ》! 《ツイン・ループ》! 降りてこーい!」
接近戦なら分があるのかも知れないが、相手はヒットアンドアウェイを繰り返す。双剣を投げて放つ《ツイン・ループ》もうまくかわされて当たらない。
リュカがキャンキャン騒いで手詰まりとなったところで、奴は胸を膨らました。
「……危ない」
その時すでに走り出していたピピは、大鎌の根元に巻き付けた鎖を素早く外して操り枝に巻きつけると、しなる反動を利用して宙を舞う。
「クキィィィ!」
気づいたファイアバードがあわててブレスを止め、ホバリングから体の向きを修正したが、それより早く大鎌が、その背中を切り裂く。
「ケァ……」
「……終わり」
さすがBランク冒険者……見事な動きで着地すると、彼女は鎖を引き戻して大鎌を閉じる。悲鳴を残して大地に転がった鳥はすぐに形を崩しだすが、その中から現れたアイテムにリュカは鼻をひくつかせた。
「この匂い……あっ、これって! おにく!?」
例のアレ。
油紙のようなものに包まれた、大振りの肉塊が、灰の中から出現したのだ。
これこそが、ドロップアイテム《ファイアバードの胸肉》。
《★★★ ファイアバードの胸肉(食材)》
詳細説明:Cランクモンスター・ファイアバードから落ちる赤い鶏むね肉。調理スキルで下処理をせず食べると口の中が火傷するので注意。体力増進の効果がある。
紙に包まれているとはいえ、地面に生肉がぽつんと置かれている様子は少しシュール。その不思議な光景に、おそるおそる指で上から感触を確かめたライラも半笑いになる。
「こ、これを食べるんだ……へぇ」
「よかった、早速ひとつ。預からせてもらって、後で清算しよう」
ピピは律儀にそんなことを言うと、背負った箱にそれを収める。
箱の口から白い靄が出て来て、近寄ると少しひんやりとした冷気が漂っているのが分かり、俺の頭にある品が思い浮かぶ。
「それって、《凍り箱》か?」
「……秘密にしておいて欲しい。結構高いものだから」
そう言うと、ピピは人差し指を口元に当てた。
これも彼女があまり他人と組みたがらない理由のひとつなのかもしれない。
「ひんやりして気持ちいいのです~」
「ふ~、生き返るわね」
「悪いけど、開けてると無駄に魔力を消費するから閉める」
焚火にでも当たるかのように冷気を浴び始めたチロルとライラのふたりは、すぐに蓋をされてがっかりする。
なんでも、供給された魔力を使い切るとただの箱になってしまうらしい。
ファイアバードというくらいだ、肉も熱に強いのかも知れないが……食べるのならなるべく新鮮な物を選びたいので、無駄な消耗は避けるべきだろう。
「今日はたくさん仕入れるつもりで来た。彼らの縄張りを見つけたらどんどん教えて欲しい」
「ああ。リュカ……お前の鼻頼りにしてるぞ?」
「よっし、まっかせて! おにくちゃ~ん、どこかな~どこかな~?」
ピピと俺の言葉を受けて、鶏肉探知機と化し目をきらめかせるリュカの嗅覚に従いつつ、俺たちはファイアバードたちを見つけては倒すことを飽きるまで繰り返した。
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