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第二章 少年期編

レヴィアのステータス

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「ウインドバレット」

 ズシュ。

「ギャアアア!!!」

 ノース男爵家からの丘を下り、街の外周を回りしばらくしたところ。

 駆け出しの森と呼ばれるそこを歩いていた三人は、森に入ること数分のうちに早速会敵していた。

 そして、今のはルカのいつも通りの鮮やかな無詠唱魔法。

それが発動すると、ゴブリンは一瞬のうちに絶命した。

「はぁ~~~。相変わらずすげぇ魔法っすね」

 討伐証明部位である耳を落としながら、何回目か分からない感嘆の声を上げるルゥ。

 ルゥ自身は魔法がほとんど使えないこともあって、魔法に対する憧れが強いのかも知れない。

「うーん………」
「え!?今のでなんかだめなんすか?」

 首を回してぐらぐらとさせながら不満の声を上げるルカに、今度は驚いた様子のルゥ。

「だめじゃあないんだけどね」
「だけど?」
「うん。勝てないね、あれには」

 何かを思い浮かべたのか、遠い目をして言うルカに、ルドルフとルゥは顔を見合わせた。

「何かあったのですか?」

 ルドルフには何となく予想は付いていたが、確認のために問うた。

「いや、みんなで会ったあの変な人なんだけど…」
「あぁ………」

 敢えて言わないが、ルゥもルドルフも変な、という言葉だけで理解したようだ。

「今後戦う必要が出てきそうなんだよね」
「え?でも、ルカっちならあのすっげぇ魔法で一発じゃないっすか?あれで熊みたいなおっさんも倒したじゃないっすか?」

 両手を前に突き出して、あの時のルカの真似をするルゥ。

 それでもルカは浮かない顔で、首をふるふると横に振った。

「ダメだと思う。今の時点だと戦力差がありすぎるかな」
「ふむ………。ルカ様、ひとつよろしいですか?」

 ルカとルゥのやりとりを見ていたルドルフが思案顔で尋ねてきた。

「うん、なに?」
「ルカ様が奴を強いと判断した根拠はなんでしょうか?何かそれを推し量る方法があったのかと思いますが」
「あ~~~~~」

 もっともなルドルフの疑問に、言葉に詰まるルカ。

「私であれば、純粋な勘で奴は強いと判断しました」

 勘のみ。

 しかしそれでも歴戦の冒険者の勘だ。

 素人に毛が生えた程度の経験しかないルカに比べると、おおいに根拠として説明できる。

「うーん………。やっぱり今後も行動を共にするんだし言っておくかな」
「あの、無理にとは」
「いや、いいのいいの。いつかは言わないととは思ってたしね」

 そういうとゴブリンの後処理が終わって手を拭いているルゥのほうに視線をやるルカ。

「それにルゥの前では嘘は難しそうだし」
「うぇっ!?」

 自分の方に話が振られてくるとは思っていなかったルゥは、素っ頓狂な声を上げる。

「ぼ、僕も何でもかんでも暴くわけじゃないっすから!空気読むっす!」
「そうかな?」

 ワタワタと焦ったように両手を振り回してアピールするルゥの様子に、ルカとルドルフは顔を見合わせてクスリと笑った。

「冗談はさておき、僕がレヴィアの強さを判断した根拠。それは『鑑定』っていうスキルが使えるからだよ」
「なんと………」

 予想はしていたが、それを上回るような内容だったのか、驚いた様子のルドルフ。

「私はてっきり『鑑定眼』かと…」
「え?鑑定眼っていうのもあるんだ?」

 今度はルカが意外そうな顔でルドルフに聞き返した。

「はい、能力は全く異なりますがございます。簡単に説明しますと、鑑定眼で分かるのはその物や人が持つエネルギーの大小のみです。対して、鑑定は詳細な数値に加えて、対象が持つ詳細なスキルまで分かります」
「それは、全く違うね…」

 上位互換には違いないが、その能力差を考慮すると全くの別物である。

「ちなみに……」
「うん?」
「奴のステータスはいかほどでしたか?」
「あ~~~」

 真剣な表情で問うルドルフに、ルカは一度空のほうを仰ぎ見て間を取った。

「運を除いて、低くて3,000弱。特に魔法力なんかは6,000を超えてたね」
「な!?」

 なるべく感情を交えずにさらりと言ったルカだが、その圧倒的な数字に目の前の二人は驚愕していた。

 ルゥに至っては毛を逆立てたまま、目を見開いて固まっている。

「ル、ルゥ?大丈夫?」

 思わず心配になって彼女の目の前で手を振って問いかけるルカ。

「はっ!だ、大丈夫っす!マジなバケモンで驚いたっす。けど、なんでそんな奴と戦わなけりゃならないっすか?」

 もっともな意見だ。

 そんな化け物にはできれば関わりたくない。

 そう考える方が普通だろう。

「あ~~~」

 ルゥの質問に言い淀むルカ。

 戦わなければならない理由はある。

 しかし、それを説明するには自分がどういう存在で、誰からそれを聞いたか、その部分を語る必要があった。

 これについては、両親を含めて誰にも喋っていない。

 そんな、荒唐無稽な話を信じてくれるのかという事と、両親に至っては気味悪がられないかという不安があったからだ。

「ルカ様、無理にとは申しません。そのような隔絶した力がある相手です。すぐに仕掛けるとはならないでしょう?であれば、おいおいその事情はお聞かせくだされば」

 言いづらそうにしているルカを見てか、ルドルフが口を挟む。

 それを横で聞いていたルゥも頷いていた。

「ありがとう。こんな誰から聞いたかも知れない話を。うん………。この件はちょっと待ってもらえるかな?じきに話せると思うから」

 ルカがそう言うと、二人は大丈夫、とでも言うように柔らかな笑顔で返した。




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