二つの世界、六つの瞳

buri

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第一章

20話 冷たい吐息

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 最近、何かに見られている気がする。
 はっきりと分かるわけじゃない。

 ざわり、と首の後ろを撫でられるような。

 牢にいる時も。
 通路を歩いている時も。

 最近なんて、ダンジョンでも感じたことがあった。

 ひっそりと。
 その視線には、温度が感じられなかった。

 「あ………」

 振り返ると、そこには誰もいない。

 今また、その“何か”がこちらを見た。

 「………」

 違和感の残る首筋を触るが、答えはそこになかった。

 「オーク十体だ」

 そんな考え事をしていると、いつの間にか門の前に着いていた。

 そこには、ノルマを告げてくる兵士。
 いつも通りだ。

 その様子に、なぜか安心感を覚えた。

 「分かりました」

 思わず薄い笑みを浮かべて返す俺。

 カチャッ。
 その拍子に、擦れあい、音を発する兵士の鎧。
 
 兵士は、顎を引いてこちらを見ていた。
  
 何かしらを言おうとしたのだろう。
 口がもごっと動いたが、彼が声を発する前に、俺はダンジョンへ駆け込んだ。


 ◇


 「お願いします」

 相変わらず軽いオークの討伐証明。
 十匹分でも、それはあまり変わらない。

 手を突き出し、一言。
 それで事は終わってしまう。

 「………………」

 無言で今日の成果を見つめる兵士。
 俺と、俺の手の中の討伐証明を見比べている。

 「…………よし」
 「はい」

 なんとなく、兵士の了承の声が大きかった。
 
 だが、さして意味はないだろう。
 ここで立っている理由はない。

 どうせこの後の兵士の言葉といえば、「牢に戻れ」だ。

 そう、彼の言葉を先回りして踵を返そうとしたところだった。

 「明日、早く来い」
 「……え?」

 予想外の言葉。
 牢に向きかけていた顔を振り向かせた。

 ーーなんだ?なにがある?

 思い当たる節はない。

 だが、兵士の思ったより俺の攻略が順調すぎたなら。

 あの黒い球をまた、使わされるのだろうか。

 「わかりました」

 ーーなんでもいい。

 俺はただ、手を突き出して、相手の命が消えるのを見つめるだけだ。

 「以上だ。戻れ」
 「はい」

 終了。

 もとより、質問するつもりはなかった。

 素直に頷き、詳細の確認は明日の自分に任せると決めた。

 ふぅ。

 驚くほどに冷たい吐息が、頬をなでた。
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