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2話
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「はぁ」
私はまた一つ溜息をついた。
吐息が漏れた場所は、昨日とは打って変わって、おそらくあのまま私が私として人生を過ごしていたとしたら、一生訪れるようなことも無かった場所であるのだけれど。
天蓋ベッドに、南向きに大きく面積を取った窓、肌触りの良い(おそらくシルクの)絨毯、可愛らしいドレッサーと、一年かかっても着れそうにない量のドレスが詰まった大きなクローゼット。
何を間違えたのか、私は絵に描いたようなお嬢様が住むに相応しい、まるでおとぎの国に迷い込んでしまったかのようだった。
ようだった、いや、迷い込んでしまったのだ。
先程「ばあや」からは、はっきりと「おじょうさま」と私なるものは、そう呼ばれていた。
何より、おそるおそる夢なら覚めてと、鏡を覗いてみれば、そこに写っていた人物は別人だったからだ。
朝時間をかけてアイロンで巻かなくなって、自然と丁度良くカールがかかった金髪。
カラーコンタクトを入れた覚えがないのに瞳の色はブルーへと、私は一夜にして変貌してしまった。
(まるで覚えがない)
けれど、私は私だった。
この胸の内や、考え方は外側や環境を変えたところで、ちょっとやそっとでは変えられなかったらしい。
損な性格なのか、それとも、幸福なことにか、女の子であればこれは好都合と喜んだ方が良いかもしれない状況に、諸手を挙げて喜べなかった。
(今日提出の資料、大丈夫だったかしら…)
昨日は私をたった一人地獄へ突き落とした存在も、いざ手を離れてしまえば、悩みの種から、ただの心配へと変わっていた。
その点については、状況が心境にもたらした変化かもしれないけれど。
そこまで行き着いた時、ふと、「ここは何処なのだろう」という考えに至った。
もちろん、最初にそう疑問に思ったことは間違いない。
けれど、ばあやに急かされるように、着替えやら朝の支度やらを終えて、目の覚めるモーニングティーを嗜まさせられ、あれよあれよと時が経ってしまえば、
今置かれる状況を、五感や胸中で整理することで手一杯だったのだ。
部屋の中に視線を走らせ、心なしか自分と同じ背格好の女性には、いささか物足りなさを感じさせる冊数の本が、あまり手入れなく置かれている本棚を見つけた。
無いよりマシだ。
土足で歩くにはまだ慣れない絨毯の上を、おぼつかない足取りで歩き、手近な本を一冊手に取ってみた。
(…読める…)
文字の形は日本語とは程遠かったが、不思議と脳が書いてある内容を理解できた。
(これは、小説、か…)
おとぎの国お姫様の話。
全体を読みはしなかったが、冒頭の書き出しで、何となくそう理解した。
興味がなくは無いが、今である必要もない。
そう思って別の本に手を掛けた時、部屋にノックの音が三回聞こえた。
礼儀正しい音色。
返事をするかしまいか逡巡していると、ドアノブが静かに回り、顔を覗かせたのは男性だった。
「やぁ、起きているんだろう?入るよ」
私はまた一つ溜息をついた。
吐息が漏れた場所は、昨日とは打って変わって、おそらくあのまま私が私として人生を過ごしていたとしたら、一生訪れるようなことも無かった場所であるのだけれど。
天蓋ベッドに、南向きに大きく面積を取った窓、肌触りの良い(おそらくシルクの)絨毯、可愛らしいドレッサーと、一年かかっても着れそうにない量のドレスが詰まった大きなクローゼット。
何を間違えたのか、私は絵に描いたようなお嬢様が住むに相応しい、まるでおとぎの国に迷い込んでしまったかのようだった。
ようだった、いや、迷い込んでしまったのだ。
先程「ばあや」からは、はっきりと「おじょうさま」と私なるものは、そう呼ばれていた。
何より、おそるおそる夢なら覚めてと、鏡を覗いてみれば、そこに写っていた人物は別人だったからだ。
朝時間をかけてアイロンで巻かなくなって、自然と丁度良くカールがかかった金髪。
カラーコンタクトを入れた覚えがないのに瞳の色はブルーへと、私は一夜にして変貌してしまった。
(まるで覚えがない)
けれど、私は私だった。
この胸の内や、考え方は外側や環境を変えたところで、ちょっとやそっとでは変えられなかったらしい。
損な性格なのか、それとも、幸福なことにか、女の子であればこれは好都合と喜んだ方が良いかもしれない状況に、諸手を挙げて喜べなかった。
(今日提出の資料、大丈夫だったかしら…)
昨日は私をたった一人地獄へ突き落とした存在も、いざ手を離れてしまえば、悩みの種から、ただの心配へと変わっていた。
その点については、状況が心境にもたらした変化かもしれないけれど。
そこまで行き着いた時、ふと、「ここは何処なのだろう」という考えに至った。
もちろん、最初にそう疑問に思ったことは間違いない。
けれど、ばあやに急かされるように、着替えやら朝の支度やらを終えて、目の覚めるモーニングティーを嗜まさせられ、あれよあれよと時が経ってしまえば、
今置かれる状況を、五感や胸中で整理することで手一杯だったのだ。
部屋の中に視線を走らせ、心なしか自分と同じ背格好の女性には、いささか物足りなさを感じさせる冊数の本が、あまり手入れなく置かれている本棚を見つけた。
無いよりマシだ。
土足で歩くにはまだ慣れない絨毯の上を、おぼつかない足取りで歩き、手近な本を一冊手に取ってみた。
(…読める…)
文字の形は日本語とは程遠かったが、不思議と脳が書いてある内容を理解できた。
(これは、小説、か…)
おとぎの国お姫様の話。
全体を読みはしなかったが、冒頭の書き出しで、何となくそう理解した。
興味がなくは無いが、今である必要もない。
そう思って別の本に手を掛けた時、部屋にノックの音が三回聞こえた。
礼儀正しい音色。
返事をするかしまいか逡巡していると、ドアノブが静かに回り、顔を覗かせたのは男性だった。
「やぁ、起きているんだろう?入るよ」
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