3 / 7
3話
しおりを挟む
私の返事を待たず、ドアを開けた人物は俗に言う「イケメン」だった。
この世界で通用する言葉かどうかは定かではないが。
それに、たとえ目鼻立ちが整っているからといって、返事も待たず女性の部屋入ってくるとは、一体どんな了見だ。
あまり相手にとって心地よいものではないであろう一瞥をしてから、手に取り掛けていた本に視線を戻した。
「…本を読んでいるの?」
ところがその人は、私の冷ややかな視線にはそれこそ目も暮れず、あろうことか部屋に体を滑り込ませてきたではないか。
無視を決め込むか、何か言ってやろうか考えた末、私は後者をとった。
「いけませんか?」
「とんでもない。素晴らしいことだ、と思って」
彼は本当にそう思っているらしく、嫌味や棘のない言葉で、嬉しそうにそう言う。
まるで、元の体の持ち主が、普段本など読まないかのように。
…その通りなのではないだろうか?
「ただ、君にしては…その、とても…滅多にないこと、だからね。」
やはり、思った通りその男性は、言葉を選びつつ肯定を示した。
(・・・。)
「さっき、ミセス・クロムウェルとすれ違ったけれど…」
ミセス・クロムウェル、初めて聞く名だ。
「今朝の君は…」
「私は?なんです?」
言い淀む彼に私は続きを促した。
「初めて会った人みたい、だって」
まぁなんてこと、だなんて、貴婦人が驚いた時のリアクションを取らなかったのは私がごくごく普通の元日本人だからだろうか。
中身の人間が前とは違う人物だと悟られないよう、ボロが出ないよう気をつけていたつもりだったが、存外何か目に余る行動でもしてしまっていたのだろうか。
口に手を当て考え込んでいると、容姿端麗な彼はそっと距離を詰めて、私の肩に手を置いた。
決して、その仕草に不思議と嫌悪感を抱かなかったことと、外見は関係ない。
「今日は体調が優れないんじゃないのかい?」
見ず知らずの私に対する言葉が、もちろんその言葉をかける相手が私ではないと知っているが、真に優しさからくるものであると、心が理解できたからであるからだろう。
「だ、大丈夫です」
身を引こうとすると、慣れたようにこれまた宝物を扱うかのように肩を抱かれて、誘われたのはあの上等な寝具の方。
「また、そんな敬語なんか使って」
「え?」
「本当にどうしたんだい?」
粗雑さとはかけ離れた対応だったけれど、逆らい難い何かで、彼は私をベッドに腰掛けさせた。
けれど、強制されているわけではない、と擁護したくなるほど、彼の一挙一動はひどくあたたかった。
「僕じゃ、やっぱり君には物足りない?」
「えっと、そんなことは…」
多分、世の女性は、貴方みたいな男性に巡り会いたいと思っていますよ、という言葉はグッと飲み込んだ。
すると、彼は私にとっては驚くべき言葉を発した。
「もう、結婚して3ヶ月経つのに、君はちっとも心を開いてくれないね」
えっ、ちょっと待って。
私結婚しているの?
彼が掛ける言葉をよそに、たとえ世界を越えたって万国?共通はたまた異世界?共通なのか、私の薬指にはちょうど良いサイズの指輪が身につけられていることに、今更気づいたのだった。
この世界で通用する言葉かどうかは定かではないが。
それに、たとえ目鼻立ちが整っているからといって、返事も待たず女性の部屋入ってくるとは、一体どんな了見だ。
あまり相手にとって心地よいものではないであろう一瞥をしてから、手に取り掛けていた本に視線を戻した。
「…本を読んでいるの?」
ところがその人は、私の冷ややかな視線にはそれこそ目も暮れず、あろうことか部屋に体を滑り込ませてきたではないか。
無視を決め込むか、何か言ってやろうか考えた末、私は後者をとった。
「いけませんか?」
「とんでもない。素晴らしいことだ、と思って」
彼は本当にそう思っているらしく、嫌味や棘のない言葉で、嬉しそうにそう言う。
まるで、元の体の持ち主が、普段本など読まないかのように。
…その通りなのではないだろうか?
「ただ、君にしては…その、とても…滅多にないこと、だからね。」
やはり、思った通りその男性は、言葉を選びつつ肯定を示した。
(・・・。)
「さっき、ミセス・クロムウェルとすれ違ったけれど…」
ミセス・クロムウェル、初めて聞く名だ。
「今朝の君は…」
「私は?なんです?」
言い淀む彼に私は続きを促した。
「初めて会った人みたい、だって」
まぁなんてこと、だなんて、貴婦人が驚いた時のリアクションを取らなかったのは私がごくごく普通の元日本人だからだろうか。
中身の人間が前とは違う人物だと悟られないよう、ボロが出ないよう気をつけていたつもりだったが、存外何か目に余る行動でもしてしまっていたのだろうか。
口に手を当て考え込んでいると、容姿端麗な彼はそっと距離を詰めて、私の肩に手を置いた。
決して、その仕草に不思議と嫌悪感を抱かなかったことと、外見は関係ない。
「今日は体調が優れないんじゃないのかい?」
見ず知らずの私に対する言葉が、もちろんその言葉をかける相手が私ではないと知っているが、真に優しさからくるものであると、心が理解できたからであるからだろう。
「だ、大丈夫です」
身を引こうとすると、慣れたようにこれまた宝物を扱うかのように肩を抱かれて、誘われたのはあの上等な寝具の方。
「また、そんな敬語なんか使って」
「え?」
「本当にどうしたんだい?」
粗雑さとはかけ離れた対応だったけれど、逆らい難い何かで、彼は私をベッドに腰掛けさせた。
けれど、強制されているわけではない、と擁護したくなるほど、彼の一挙一動はひどくあたたかった。
「僕じゃ、やっぱり君には物足りない?」
「えっと、そんなことは…」
多分、世の女性は、貴方みたいな男性に巡り会いたいと思っていますよ、という言葉はグッと飲み込んだ。
すると、彼は私にとっては驚くべき言葉を発した。
「もう、結婚して3ヶ月経つのに、君はちっとも心を開いてくれないね」
えっ、ちょっと待って。
私結婚しているの?
彼が掛ける言葉をよそに、たとえ世界を越えたって万国?共通はたまた異世界?共通なのか、私の薬指にはちょうど良いサイズの指輪が身につけられていることに、今更気づいたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!
キムチ鍋
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。
だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。
「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」
そこからいろいろな人に愛されていく。
作者のキムチ鍋です!
不定期で投稿していきます‼️
19時投稿です‼️
能天気な私は今日も愛される
具なっしー
恋愛
日本でJKライフを謳歌していた凪紗は遅刻しそうになって全力疾走してたらトラックとバコーン衝突して死んじゃったー。そんで、神様とお話しして、目が覚めたら男女比50:1の世界に転生してたー!この世界では女性は宝物のように扱われ猿のようにやりたい放題の女性ばっかり!?そんな中、凪紗ことポピーは日本の常識があるから、天使だ!天使だ!と溺愛されている。この世界と日本のギャップに苦しみながらも、楽観的で能天気な性格で周りに心配される女の子のおはなし。
はじめて小説を書くので誤字とか色々拙いところが多いと思いますが優しく見てくれたら嬉しいです。自分で読みたいのをかいてみます。残酷な描写とかシリアスが苦手なのでかかないです。定番な展開が続きます。飽き性なので褒めてくれたら続くと思いますよろしくお願いします。
※表紙はAI画像です
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
〘完〙なぜかモブの私がイケメン王子に強引に迫られてます 〜転生したら推しのヒロインが不在でした〜
hanakuro
恋愛
転生してみたら、そこは大好きな漫画の世界だった・・・
OLの梨奈は、事故により突然その生涯閉じる。
しかし次に気付くと、彼女は伯爵令嬢に転生していた。しかも、大好きだった漫画の中のたったのワンシーンに出てくる名もないモブ。
モブならお気楽に推しのヒロインを観察して過ごせると思っていたら、まさかのヒロインがいない!?
そして、推し不在に落胆する彼女に王子からまさかの強引なアプローチが・・
王子!その愛情はヒロインに向けてっ!
私、モブですから!
果たしてヒロインは、どこに行ったのか!?
そしてリーナは、王子の強引なアプローチから逃れることはできるのか!?
イケメン王子に翻弄される伯爵令嬢の恋模様が始まる。
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる