異世界転生 ごくごく普通の私がイケメン『たち』に囲まれる生活なんて信じられません

Iris

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4.5話

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「昨日から具合悪かった?」

彼は額に当てた手を、そのまま髪に滑らせ、少し梳いてから金糸を耳にかけた。
それから、また温度を確かめるように、手の甲側を頬に当てる。

脈拍は平生通りと決して言えないが、本当に心配そうな彼に、嘘をついてしまったことへの罪悪感と、顔の赤らみはおさまってきたように思う。

(昨日の「私」は、どうだったかは分からないけれど)

「い、いいえ」
「そう?」

彼は尚も、「気付かなくてすまなかったね」と続けた。
少し伏目がちになると、彼の整った顔立ちがより際立って映って見えるような気がする。

まるで彼女の具合が悪いのは自分の責任、とでも感じているかのような彼に、私は思わず尋ねた。

「どうして、そんなにも優しくしてくださる…優しくしてくれるの?」
「どうして?」
「えっと…きっと昨日は布団をきちんとかけずに寝てしまったのだわ。だから、貴方のせいじゃないの」

「だから、そんなにも気に病まないで」と言いたかったことを伝えれば、彼が視界から消えたかと思えば、ふわりと何かが私を包んだ。

「…え?」
「どうして、って当然だろう?」

抱きしめられていると気づくまでに数秒かかったけれど、頬に当たる温かな体温と、鼻腔をくすぐる香水ではない、心地よい匂いが再び体温を上昇させる。

「夫婦なんだから」
「…夫婦」
「そう、君のことが誰よりも大切だ」
「…」

何故だか、涙が溢れそうだった。
「夫婦」の二文字が私を深く突き刺す。

私ではない誰かと契りを結んだ彼は、その契りが故に彼女を深く愛しているのだ。
優しい言葉とは裏腹に、私は越えられない一線を彼側から引かれた気さえした。

「相応しくない」そんな言葉が想起される。

「だから、僕に遠慮なんかしないで」

ゆっくりと身体が離され、顔を覗き込んで彼はそう言い、頭のてっぺんに口付けた。

どうしてこの贈り先が「私」ではなかったのだろうか。
シーツを握る手に力が入っていると気がついた時、私は彼の身体をやんわりと押し返し、距離を取った。

「…」
「ごめんなさい、風邪だったらうつってしまうから」
「そんな」
「大丈夫!」

尚も私に一方的な優しさを贈る彼を、私は拒絶した。

「…」
「ごめんなさい。本当に、大丈夫ですから」

どこか沈鬱な空気が流れた後、それを破ったのは彼だった。

「それじゃあ、あたたかい飲み物を取ってこよう」

柔らかく笑う彼は、まるで太陽のように優しかった。
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