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暇だ。というか、
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地域循環型のモデルケース作りをしようとしてるのかなとなんとなく想像してるが、俺に役割が無いからする事がない。
いっそ会社で仕事した方がとも思ってジョーさんにも相談したけど、こっちにいた方が良さそうだという。今更あの部屋に帰っても良い思い出がないからこっちにいるかー、と仕事を探してみたが特にない。
実家の仕事はやった事ないから邪魔だし、漁協に行っても同じか。結局お客さんするしか出来ないし。とりあえず母校の中学と高校の剣道部の指導に行ったとしても夕方からだし、仕事じゃねえし!
さて、どうしようかとドライブしてた時にふと豊さんの顔が浮かんだ。普段なら電話なんかしないのにどうしてもしなきゃいけない気になる。車を止めて電話すると、漁協のおばちゃんが出た。「鷹ちゃん?どしたの?」豊さんは?「今出かけるところ。なんか配達だとか言ってたよ。ケータイ忘れてるねw」今すぐ呼んで。「えっ?」今すぐ。
電話の奥で、「早く!一大事!鷹ちゃんから!」
一度出発したはずが、仲間に連絡が入って戻って来たという。
「なんだ?何の用だ?」
はて、用事などない。
「用事がないのか?」
「、、、はい。何となく電話しなきゃいけない気がしただけです。すみません。」
泣きそう。いい年した男から用もなく仕事中に電話来たらキレるよな。後で謝りに行こう。
「俺がどこに行こうとしたと思う?」
「蔵じゃないの?」
「、、、何があると思った?」
「何かな。なんとなくです。なんとなく無事なんだけど帰って来れない的な。すみません変な事言って。後でちゃんと謝りに行きますから!」
町で豊さんの好きな酒買って漁協に行こうとしたら親父から呼び出された。「帰って来い。」今は豊さんところに行かなきゃなんだけど、後じゃダメか?「あいつもジジイもいるから来い。」分かったよ帰りますよ。
皆んなに囲まれて遊び過ぎだって怒られるのかぁ、、凹む。
それでも家に帰ると雰囲気がおかしい。怒られない感じか?
「おせえぞ!」違った。怒られるみたいだ。カーターまでいるし。さらに凹む。ただでさえもう何日もカーターとセックス出来てないから不満なのに。匂いだけで抜けるけどさ。
「お前、豊に電話したんだってな。何でだ」
「何の用事も無かったです。何となく電話した方が良いかなって思いついただけです。」
親父に言われてるとはいえ、家族以外の人もいるし、何より怒られてるから敬語で話す。
「お前は何してた?どこにいた?」
「車でブラブラ走ってて、飯岡地区辺りかな?車止めて、いや止めました。それで何となく何してるかなって電話しました。」
「何ですぐに呼んで来いって言ったか分かるか?」
「呼んで来いだなんて言ってないです。呼んでってお願いしただけで。」
「そんな事はいい。理由を言え。」
「豊さんにも説明したけど、何となくとしか言えないです。ごめんなさい。」
「謝るより答えろ。蔵だと思ったのは何でだ?幸子さんは配達としか言ってないと言ってたが。」
「ほんと?!あれ?なんでかな。豊さんが林道を抜けて軽バンで配達に行ってる気がしたんだけどな。勘違いかもしれないです。ごめんなさい、もう変な電話しないように気をつけます!」
「馬鹿か。はやとちりするな馬鹿。」
2回も馬鹿って言われたのは初めてだ。何だ?何が起きてるんだ?
最年長のじっちゃが口を開く。
「鷹ちゃんは虎の奴と仲良かったな?あれは鷹ちゃんが産まれた日、鷹ちゃんを見るなり「この子の名前は鷹だ。」って決めたそうだ。どうしてか分からんが、虎が言うには婆さんからそう言われていたと言ってた。」
じっちゃは、高村家にはたまに予言的な事を口にする「巫女のような」人が産まれるという。そしてその子は女の子が多いらしく男の巫女の記録はないそうだ。ただそれは残されてないだけの可能性も高いと。
で、じいちゃんは孫は皆んな可愛がってくれたけど、俺を見た瞬間にこの子がそれだと分かったと言う。俺からしたら曾祖母ちゃんの当たる人が口酸っぱく言ってたらしい。
見たらそれと分かる。分かったなら大事にしなきゃならん。大事にしてくれる人の危機を察知してくれるらしいと。
そして名前も頭に最初に浮かんだ名前を付けなければならない。その名前が生き方を決める。何を言ってるのかと思ったけど、婆さんは繰り返し繰り返し死の間際まで言ってた。信じてなかったが、目の前で俺を見たら確信に変わった。
という事だ。
つまり俺は男だけど、巫女的な何かなのか?だとするとこの集まりはなんだ?
親父はカーターを向いて正座した。
「カーターさん、こいつを広い世界に連れ出してやってくれませんか?親父はよく鷹は大空を羽ばたいてこそ王者だと言ってました。馬鹿で生意気ですが、人一倍真面目に働くと思います。どうかお願いしたい。」
手をついて頼む姿は、まるで花嫁を送り出す父親のようだが。
「高村さん、お気持ちありがとうございます。鷹さんは馬鹿ではありませんし、今でも一所懸命に働いてもらっていますが大変ありがたいお申出です。ただこちらの家にとっては手放してはならないのではないですか?」
「さっき聞いてもらった通りです。離れてても大丈夫そうです。何よりここの空は綺麗だが広くない。無理をおしてお願いしたい。多少ゲンコツかます位なら全然平気ですから!なぁ豊?」
「間違いない。数発殴っても文句言った事ないな。」
「です。おい、お前からもお願いしねぇか!」
急に振るなよ!俺頭がついて来てないんだけど。馬鹿なのかな?
「これからも宜しくお願いします?」
「声が小さい!」
「!宜しくお願いします!」
公開プロポーズみたいになってないか?というか俺とカーターの関係はバレてるの?周知の事実なの?聞かれたら正直に答えるつもりでいたけど、聞かれてないけども?
「分かりました。大切にお預かりさせていただきます。」
優雅な所作で頭を下げるカーターを見て、こそばゆくなった。
いっそ会社で仕事した方がとも思ってジョーさんにも相談したけど、こっちにいた方が良さそうだという。今更あの部屋に帰っても良い思い出がないからこっちにいるかー、と仕事を探してみたが特にない。
実家の仕事はやった事ないから邪魔だし、漁協に行っても同じか。結局お客さんするしか出来ないし。とりあえず母校の中学と高校の剣道部の指導に行ったとしても夕方からだし、仕事じゃねえし!
さて、どうしようかとドライブしてた時にふと豊さんの顔が浮かんだ。普段なら電話なんかしないのにどうしてもしなきゃいけない気になる。車を止めて電話すると、漁協のおばちゃんが出た。「鷹ちゃん?どしたの?」豊さんは?「今出かけるところ。なんか配達だとか言ってたよ。ケータイ忘れてるねw」今すぐ呼んで。「えっ?」今すぐ。
電話の奥で、「早く!一大事!鷹ちゃんから!」
一度出発したはずが、仲間に連絡が入って戻って来たという。
「なんだ?何の用だ?」
はて、用事などない。
「用事がないのか?」
「、、、はい。何となく電話しなきゃいけない気がしただけです。すみません。」
泣きそう。いい年した男から用もなく仕事中に電話来たらキレるよな。後で謝りに行こう。
「俺がどこに行こうとしたと思う?」
「蔵じゃないの?」
「、、、何があると思った?」
「何かな。なんとなくです。なんとなく無事なんだけど帰って来れない的な。すみません変な事言って。後でちゃんと謝りに行きますから!」
町で豊さんの好きな酒買って漁協に行こうとしたら親父から呼び出された。「帰って来い。」今は豊さんところに行かなきゃなんだけど、後じゃダメか?「あいつもジジイもいるから来い。」分かったよ帰りますよ。
皆んなに囲まれて遊び過ぎだって怒られるのかぁ、、凹む。
それでも家に帰ると雰囲気がおかしい。怒られない感じか?
「おせえぞ!」違った。怒られるみたいだ。カーターまでいるし。さらに凹む。ただでさえもう何日もカーターとセックス出来てないから不満なのに。匂いだけで抜けるけどさ。
「お前、豊に電話したんだってな。何でだ」
「何の用事も無かったです。何となく電話した方が良いかなって思いついただけです。」
親父に言われてるとはいえ、家族以外の人もいるし、何より怒られてるから敬語で話す。
「お前は何してた?どこにいた?」
「車でブラブラ走ってて、飯岡地区辺りかな?車止めて、いや止めました。それで何となく何してるかなって電話しました。」
「何ですぐに呼んで来いって言ったか分かるか?」
「呼んで来いだなんて言ってないです。呼んでってお願いしただけで。」
「そんな事はいい。理由を言え。」
「豊さんにも説明したけど、何となくとしか言えないです。ごめんなさい。」
「謝るより答えろ。蔵だと思ったのは何でだ?幸子さんは配達としか言ってないと言ってたが。」
「ほんと?!あれ?なんでかな。豊さんが林道を抜けて軽バンで配達に行ってる気がしたんだけどな。勘違いかもしれないです。ごめんなさい、もう変な電話しないように気をつけます!」
「馬鹿か。はやとちりするな馬鹿。」
2回も馬鹿って言われたのは初めてだ。何だ?何が起きてるんだ?
最年長のじっちゃが口を開く。
「鷹ちゃんは虎の奴と仲良かったな?あれは鷹ちゃんが産まれた日、鷹ちゃんを見るなり「この子の名前は鷹だ。」って決めたそうだ。どうしてか分からんが、虎が言うには婆さんからそう言われていたと言ってた。」
じっちゃは、高村家にはたまに予言的な事を口にする「巫女のような」人が産まれるという。そしてその子は女の子が多いらしく男の巫女の記録はないそうだ。ただそれは残されてないだけの可能性も高いと。
で、じいちゃんは孫は皆んな可愛がってくれたけど、俺を見た瞬間にこの子がそれだと分かったと言う。俺からしたら曾祖母ちゃんの当たる人が口酸っぱく言ってたらしい。
見たらそれと分かる。分かったなら大事にしなきゃならん。大事にしてくれる人の危機を察知してくれるらしいと。
そして名前も頭に最初に浮かんだ名前を付けなければならない。その名前が生き方を決める。何を言ってるのかと思ったけど、婆さんは繰り返し繰り返し死の間際まで言ってた。信じてなかったが、目の前で俺を見たら確信に変わった。
という事だ。
つまり俺は男だけど、巫女的な何かなのか?だとするとこの集まりはなんだ?
親父はカーターを向いて正座した。
「カーターさん、こいつを広い世界に連れ出してやってくれませんか?親父はよく鷹は大空を羽ばたいてこそ王者だと言ってました。馬鹿で生意気ですが、人一倍真面目に働くと思います。どうかお願いしたい。」
手をついて頼む姿は、まるで花嫁を送り出す父親のようだが。
「高村さん、お気持ちありがとうございます。鷹さんは馬鹿ではありませんし、今でも一所懸命に働いてもらっていますが大変ありがたいお申出です。ただこちらの家にとっては手放してはならないのではないですか?」
「さっき聞いてもらった通りです。離れてても大丈夫そうです。何よりここの空は綺麗だが広くない。無理をおしてお願いしたい。多少ゲンコツかます位なら全然平気ですから!なぁ豊?」
「間違いない。数発殴っても文句言った事ないな。」
「です。おい、お前からもお願いしねぇか!」
急に振るなよ!俺頭がついて来てないんだけど。馬鹿なのかな?
「これからも宜しくお願いします?」
「声が小さい!」
「!宜しくお願いします!」
公開プロポーズみたいになってないか?というか俺とカーターの関係はバレてるの?周知の事実なの?聞かれたら正直に答えるつもりでいたけど、聞かれてないけども?
「分かりました。大切にお預かりさせていただきます。」
優雅な所作で頭を下げるカーターを見て、こそばゆくなった。
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