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エジプト編
軍隊
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「ワッハッハッハ! まさかこんなに強いとはな!」
コウの背中をバンバンと叩くマハムード。
その顔にはコウに負けた悔しさなどは一切なく、いい物を見つけたとばかりに満面の笑顔だ。
「ちょ、ちょっと力が強いですって……」
試合が終わり、すぐに先遣隊の宿舎へと戻ってきた。
同じテーブルを囲んでいるのはコウ、マハムード、サルマ、ダニヤ、ノーラ。
と何故かサイードも同席していた。
一人笑いが絶えないマハムード。
そんなマハムードと対象的に、コウの顔には疲労が窺えた。
試合疲れではない。
戦闘終了後、ここにくるまでがそれはもう大変であったのだ。
最初は自分達のリーダーが倒されたことに理解が追い付かず、沈黙していた先遣隊メンバーであったが、冷静になると、やれ「俺と戦え!!」だの、やれ「ぶっ殺す」だの、面子がどうのこうのと、まるでヤクザのような集団が出来上がっていた。
コウは恨まれないように、顰蹙を買わないよう穏便に済ますために、敢えてトドメをさすのではなく、自ら降参するように促したのだが、あまり意味をなしていなかった。
それだけ、先遣隊のメンバーからマハムードは慕われているのだろう。
しかしそれに対し、見兼ねたマハムードが叱りつけたことにより事態は収拾したのだが、今度はその身体能力はなんだの、武道家のスキルツリーを見せろだのと大勢が押し寄せたのだ。
この6名が囲むテーブルの周囲を、先遣隊のメンバーがぐるりと立ったまま埋め尽くしていた。
全く落ち着かない状況である。
「で、とりあえずは先遣隊に入れよ。なっ?」
笑っていたかと思えば、唐突に真面目な顔つきになるマハムード。
「そうですね……、えーっと……今はちょっと考えたいこととか、それにやらなきゃいけないこともあるし…すいません!!」
コウは申し訳なさそうに頭を下げた。
「オッケーオッケー! じゃあ、遊軍として頼むわ。必要な時は力を貸してくれ! もちろんお前の手が空いている時だけで構わんから。なっ?」
何を持ってしてオッケーなのか不明だ。
コウのすいませんに対し、この答え。
コウは、マハムードにはどんなに断ったところで、自分の意見が通らないだろうということを悟った。
了承するしかないのなら、どこで折れるかだ。
「………。 ……わかりました。では、それでお願いします」
コウはこれが一番軽い立ち位置であることを願って返答した。
マハムードから差し出された手を握る。
グッと握り返されたマハムードの握力は容赦なく、そこには彼の想いが籠っていたようにも感じた。
(いってーし!)
だが、そんな想いもコウにとってはどうでもよく、頬をひきつらせて笑うしかなかった。
団らんのような雰囲気になる中、ザッザッザッと外から大勢の足音が近づいてきた。
ここにいる全員の意識が足音へと意識を持ってかれる。
すると、入口へ迷彩服を着た男が現れ、その後ろには同じ格好をした数名の男が直立不動で整列していた。
「休め!」
先頭の男が言うと、後ろの男達はバッと寸分の狂いもないタイミングで足を開き、腕を後ろへと回した。
休めのポーズである。
そして、命令した男は横を向き、室内からは見えない誰かへと敬礼した。
少しの間を置き、遅れてノシノシと歩いて入り口から入ってくる男。
腹はでっぷりとベルトに乗り、汗だくで脂ぎった顔をしている。
「アブタラ大佐かよ……」
先遣隊のメンバーが一人呟いた。
「これはこれは大佐殿。お早いお着きで」
メンバーが嫌な顔をする中、無表情のまま臆することもなくマハムードは言った。
「何がお早いお着きじゃばかもんがっ!!
貴様ら先遣隊は何をしている!」
挨拶もなく頭ごなしに怒り喚くアブタラ。
まぁ、挨拶がないのはお互い様だが。
「と、おっしゃいますと?」
「先遣隊としての仕事をこなしていないじゃないか! 何をモタモタモタモタと。さっさとピラミッドに入らんかっ!」
ベッチャベッチャと唾を撒き散らす。
マハムードはさりげなく一歩後ろへと下がった。
「そうは言われましても。 予定では軍隊の皆さんの到着までは、あと5日は余裕があったはずですが?」
詫びる気がさらさらないマハムード。
予定通りに行動をしている先遣隊には、言われようのない文句であり、あまりにも理不尽。
謝る必要も、頭を下げる必要もないことは、ここにいる誰の目にも明々白々だった。
「口答えするなっ!ええぃ、もうええっ! 態度が気に食わん! もう貴様らは探索しなくてよいわ!」
「というのは?」
マハムードは無表情のまま質問をする。
「察しが悪いのぉ。もたついてる貴様らは黙って見ておればええ。儂の精鋭部隊が明日突入するからの。
それとな、聞けば何だ、デススコーピオンが街に現れたとか?
侵入を許したのは先遣隊の不手際だ。怪我人まで出たようだしのぉ。 これは、後日軍法会議かもしれんな。クフフフ」
気持ち悪い笑い声を上げる大佐。
先遣隊の数名は、歯を食いしばりギリギリと音をたてた。
「そういうことだから、儂はもう休むぞ。おい、お前! ちょっとこっち来い!」
アブタラが人差し指で指名したのはサルマだった。
サルマはチラッとマハムードを見るが、こっちを見ていなかった。
サルマは何も言わず、言われた通りにアブタラへと近づいていく。
手の届く距離で立ち止まった。
すると、アブタラは左手はポケットに突っ込んだまま、右手でサルマの胸を鷲掴みにした。
「おほっ、これは思った通りええのぉ。 中々の弾力、大きさ…申し分なし!」
「────!」
驚きと不快感に思わず声を上げそうなるサルマだったが、無言のままアブタラの手を振りほどいた。
「───て、てめぇ」
怒りに沸き立ちそうになる周囲。
だが、サルマが後ろ手に皆に制止するよう合図を送った。
「ふぉ? ええんか? そんな態度でええんかな?」
アブタラはサルマの顔に近づき、臭い息を吹き掛けるようにして言った。
そして、耳元でボソボソと何か囁くと、もう一度サルマの胸を鷲掴みにした。
そして、揉む。揉みしだく。
やがて片手は両手となり、アブタラは恍惚な表情を浮かべ始めた。
周りを囲む先遣隊のメンバーは今にも飛びかかって行きそうな雰囲気だ。
サルマが何も言わなければすぐにでも斬りかかりそうである。
しかし、アブタラは危害が及ばないと分かっている。
「よしよし、殊勝な心掛け。 最初からそうしておればええ。 ワシは2階でこれから休むからのぉ。 夜、お前はワシの部屋へ来るんだぞ? 忘れずにな! あと、そこのお前! 酒と飯をすぐに用意しろっ!」
お前と言われた先頭の軍人がそれに反応した。
アブタラはまだ胸を揉み続けている。
「アブタラ大佐、食事の用意はさせて頂きます。が、こういったことは……」
「えぇぃ、うるさいっ! お前は黙って飯を持ってこいっ!」
そこで漸くアブタラは手を離した。
そして、怒鳴り散らしながらノシノシと階段を上がっていった。
後にはポタポタと床に汗のシミを残して。
「サ、サルマさん……ほんとすいません……」
上をチラッと確認しながら軍人の男はトーンを落として頭を下げた。
「お前は悪くないよ、アリ」
マハムードはアリの肩にポンっと手を置いた。
「ですが──」
「お前は悪くない。 悪いのはあのブタだ。 何にせよ、早く手を打たねば……」
夜になれば、サルマはアブタラの元へと行かなければならないだろう。
断れるなら断るはずだが、さっきの様子を見るにそれは無い選択肢であることが伺えた。
マハムードはサルマへと視線を向けた。
サルマは何事もなくったように振る舞っているつもりだが、小刻みに震えているのが分かった。
今の行為に対する震えなのか、夜にと言われたことへなのか。
マハムードは、ノーラへと合図を送り、言葉はないがそれを理解したノーラがサルマの腕をそっと引く。
そして、休憩のできる一室へと二人寄り添って入って行ったのだった。
二人が消えるのを待ち、マハムードはアリへと質問をした。
「──予定より早く来たのは何故だ?」
「……実はですね、報告が上がっているダンジョンのいくつかがクリアされまして……。
そして、その内の数人はクリア報酬と言ってもいいのでしょうか。
踏破すると共に更なる力を得たそうです。難易度の高いダンジョンではほぼ間違いないそうです。その力は絶大で、今のところは例外なく修得したプレイヤーは殲滅級とか戦略級として扱われます。
国が奪い合いに走り、戦争にまで発展しそうなほどの力です。
そして、ここらで唯一発見されたダンジョンがギザのピラミッド迷宮であり、周辺国もこぞって探索しようという動きが見え始め、上層部は計画を急いだようです。
今や、ダンジョンが発生した国はお祭り騒ぎみたいですよ」
一息で話し終え、ふぅーと息を吐く。
ちらっともう一度2階に目をやり、「話は以上ですね」と、アリは額から流れる汗を拭った。
「……そういうことか。更なる力……興味深いな」
マハムードは顎髭に手を添えながらニヤリとした。
面白い玩具でも見つけた無邪気な子供のように目をキラキラとさせて。
「私達は明日、迷宮へ挑みますがマハムードさん達はどうしますか?」
「そうだな……サルマが回復次第、俺達も行く。夜になる前には出発する。 アリ、悪いがこれで娼婦を見繕って、アイツに充ててくれ」
マハムードは金の入った小袋をアリへと投げ渡した。
アイツとはもちろんアブタラである。
「え、あ、はいっ!わかりました! 」
「あの!マハムードさん、俺もお願いします」
と、タイミングを見計らいお願いするのはサイードだ。
「まぁ、いいだろう。コウはどうする?」
それを見ていた先遣隊のメンバー達も、じゃあ俺達も!と、手を挙げた。
しかし、サイードが睨みを効かせて黙らせる。
「俺は…行くかもしれませんが、先行って下さい」
「そうか……うん、了解した。
ではアリ、大佐は気を悪くするだろうけど宜しく頼むな」
「……大丈夫です。では、お気をつけて」
とりあえずは解散となり、アリは小袋を持ち宿舎を後にした。
誰も彼もが納得できず、腹に抱えるものが沸々とする中、コウはどうすべきか一人で整理をつけるために、一旦ハキム邸へと戻ることにした。
コウの背中をバンバンと叩くマハムード。
その顔にはコウに負けた悔しさなどは一切なく、いい物を見つけたとばかりに満面の笑顔だ。
「ちょ、ちょっと力が強いですって……」
試合が終わり、すぐに先遣隊の宿舎へと戻ってきた。
同じテーブルを囲んでいるのはコウ、マハムード、サルマ、ダニヤ、ノーラ。
と何故かサイードも同席していた。
一人笑いが絶えないマハムード。
そんなマハムードと対象的に、コウの顔には疲労が窺えた。
試合疲れではない。
戦闘終了後、ここにくるまでがそれはもう大変であったのだ。
最初は自分達のリーダーが倒されたことに理解が追い付かず、沈黙していた先遣隊メンバーであったが、冷静になると、やれ「俺と戦え!!」だの、やれ「ぶっ殺す」だの、面子がどうのこうのと、まるでヤクザのような集団が出来上がっていた。
コウは恨まれないように、顰蹙を買わないよう穏便に済ますために、敢えてトドメをさすのではなく、自ら降参するように促したのだが、あまり意味をなしていなかった。
それだけ、先遣隊のメンバーからマハムードは慕われているのだろう。
しかしそれに対し、見兼ねたマハムードが叱りつけたことにより事態は収拾したのだが、今度はその身体能力はなんだの、武道家のスキルツリーを見せろだのと大勢が押し寄せたのだ。
この6名が囲むテーブルの周囲を、先遣隊のメンバーがぐるりと立ったまま埋め尽くしていた。
全く落ち着かない状況である。
「で、とりあえずは先遣隊に入れよ。なっ?」
笑っていたかと思えば、唐突に真面目な顔つきになるマハムード。
「そうですね……、えーっと……今はちょっと考えたいこととか、それにやらなきゃいけないこともあるし…すいません!!」
コウは申し訳なさそうに頭を下げた。
「オッケーオッケー! じゃあ、遊軍として頼むわ。必要な時は力を貸してくれ! もちろんお前の手が空いている時だけで構わんから。なっ?」
何を持ってしてオッケーなのか不明だ。
コウのすいませんに対し、この答え。
コウは、マハムードにはどんなに断ったところで、自分の意見が通らないだろうということを悟った。
了承するしかないのなら、どこで折れるかだ。
「………。 ……わかりました。では、それでお願いします」
コウはこれが一番軽い立ち位置であることを願って返答した。
マハムードから差し出された手を握る。
グッと握り返されたマハムードの握力は容赦なく、そこには彼の想いが籠っていたようにも感じた。
(いってーし!)
だが、そんな想いもコウにとってはどうでもよく、頬をひきつらせて笑うしかなかった。
団らんのような雰囲気になる中、ザッザッザッと外から大勢の足音が近づいてきた。
ここにいる全員の意識が足音へと意識を持ってかれる。
すると、入口へ迷彩服を着た男が現れ、その後ろには同じ格好をした数名の男が直立不動で整列していた。
「休め!」
先頭の男が言うと、後ろの男達はバッと寸分の狂いもないタイミングで足を開き、腕を後ろへと回した。
休めのポーズである。
そして、命令した男は横を向き、室内からは見えない誰かへと敬礼した。
少しの間を置き、遅れてノシノシと歩いて入り口から入ってくる男。
腹はでっぷりとベルトに乗り、汗だくで脂ぎった顔をしている。
「アブタラ大佐かよ……」
先遣隊のメンバーが一人呟いた。
「これはこれは大佐殿。お早いお着きで」
メンバーが嫌な顔をする中、無表情のまま臆することもなくマハムードは言った。
「何がお早いお着きじゃばかもんがっ!!
貴様ら先遣隊は何をしている!」
挨拶もなく頭ごなしに怒り喚くアブタラ。
まぁ、挨拶がないのはお互い様だが。
「と、おっしゃいますと?」
「先遣隊としての仕事をこなしていないじゃないか! 何をモタモタモタモタと。さっさとピラミッドに入らんかっ!」
ベッチャベッチャと唾を撒き散らす。
マハムードはさりげなく一歩後ろへと下がった。
「そうは言われましても。 予定では軍隊の皆さんの到着までは、あと5日は余裕があったはずですが?」
詫びる気がさらさらないマハムード。
予定通りに行動をしている先遣隊には、言われようのない文句であり、あまりにも理不尽。
謝る必要も、頭を下げる必要もないことは、ここにいる誰の目にも明々白々だった。
「口答えするなっ!ええぃ、もうええっ! 態度が気に食わん! もう貴様らは探索しなくてよいわ!」
「というのは?」
マハムードは無表情のまま質問をする。
「察しが悪いのぉ。もたついてる貴様らは黙って見ておればええ。儂の精鋭部隊が明日突入するからの。
それとな、聞けば何だ、デススコーピオンが街に現れたとか?
侵入を許したのは先遣隊の不手際だ。怪我人まで出たようだしのぉ。 これは、後日軍法会議かもしれんな。クフフフ」
気持ち悪い笑い声を上げる大佐。
先遣隊の数名は、歯を食いしばりギリギリと音をたてた。
「そういうことだから、儂はもう休むぞ。おい、お前! ちょっとこっち来い!」
アブタラが人差し指で指名したのはサルマだった。
サルマはチラッとマハムードを見るが、こっちを見ていなかった。
サルマは何も言わず、言われた通りにアブタラへと近づいていく。
手の届く距離で立ち止まった。
すると、アブタラは左手はポケットに突っ込んだまま、右手でサルマの胸を鷲掴みにした。
「おほっ、これは思った通りええのぉ。 中々の弾力、大きさ…申し分なし!」
「────!」
驚きと不快感に思わず声を上げそうなるサルマだったが、無言のままアブタラの手を振りほどいた。
「───て、てめぇ」
怒りに沸き立ちそうになる周囲。
だが、サルマが後ろ手に皆に制止するよう合図を送った。
「ふぉ? ええんか? そんな態度でええんかな?」
アブタラはサルマの顔に近づき、臭い息を吹き掛けるようにして言った。
そして、耳元でボソボソと何か囁くと、もう一度サルマの胸を鷲掴みにした。
そして、揉む。揉みしだく。
やがて片手は両手となり、アブタラは恍惚な表情を浮かべ始めた。
周りを囲む先遣隊のメンバーは今にも飛びかかって行きそうな雰囲気だ。
サルマが何も言わなければすぐにでも斬りかかりそうである。
しかし、アブタラは危害が及ばないと分かっている。
「よしよし、殊勝な心掛け。 最初からそうしておればええ。 ワシは2階でこれから休むからのぉ。 夜、お前はワシの部屋へ来るんだぞ? 忘れずにな! あと、そこのお前! 酒と飯をすぐに用意しろっ!」
お前と言われた先頭の軍人がそれに反応した。
アブタラはまだ胸を揉み続けている。
「アブタラ大佐、食事の用意はさせて頂きます。が、こういったことは……」
「えぇぃ、うるさいっ! お前は黙って飯を持ってこいっ!」
そこで漸くアブタラは手を離した。
そして、怒鳴り散らしながらノシノシと階段を上がっていった。
後にはポタポタと床に汗のシミを残して。
「サ、サルマさん……ほんとすいません……」
上をチラッと確認しながら軍人の男はトーンを落として頭を下げた。
「お前は悪くないよ、アリ」
マハムードはアリの肩にポンっと手を置いた。
「ですが──」
「お前は悪くない。 悪いのはあのブタだ。 何にせよ、早く手を打たねば……」
夜になれば、サルマはアブタラの元へと行かなければならないだろう。
断れるなら断るはずだが、さっきの様子を見るにそれは無い選択肢であることが伺えた。
マハムードはサルマへと視線を向けた。
サルマは何事もなくったように振る舞っているつもりだが、小刻みに震えているのが分かった。
今の行為に対する震えなのか、夜にと言われたことへなのか。
マハムードは、ノーラへと合図を送り、言葉はないがそれを理解したノーラがサルマの腕をそっと引く。
そして、休憩のできる一室へと二人寄り添って入って行ったのだった。
二人が消えるのを待ち、マハムードはアリへと質問をした。
「──予定より早く来たのは何故だ?」
「……実はですね、報告が上がっているダンジョンのいくつかがクリアされまして……。
そして、その内の数人はクリア報酬と言ってもいいのでしょうか。
踏破すると共に更なる力を得たそうです。難易度の高いダンジョンではほぼ間違いないそうです。その力は絶大で、今のところは例外なく修得したプレイヤーは殲滅級とか戦略級として扱われます。
国が奪い合いに走り、戦争にまで発展しそうなほどの力です。
そして、ここらで唯一発見されたダンジョンがギザのピラミッド迷宮であり、周辺国もこぞって探索しようという動きが見え始め、上層部は計画を急いだようです。
今や、ダンジョンが発生した国はお祭り騒ぎみたいですよ」
一息で話し終え、ふぅーと息を吐く。
ちらっともう一度2階に目をやり、「話は以上ですね」と、アリは額から流れる汗を拭った。
「……そういうことか。更なる力……興味深いな」
マハムードは顎髭に手を添えながらニヤリとした。
面白い玩具でも見つけた無邪気な子供のように目をキラキラとさせて。
「私達は明日、迷宮へ挑みますがマハムードさん達はどうしますか?」
「そうだな……サルマが回復次第、俺達も行く。夜になる前には出発する。 アリ、悪いがこれで娼婦を見繕って、アイツに充ててくれ」
マハムードは金の入った小袋をアリへと投げ渡した。
アイツとはもちろんアブタラである。
「え、あ、はいっ!わかりました! 」
「あの!マハムードさん、俺もお願いします」
と、タイミングを見計らいお願いするのはサイードだ。
「まぁ、いいだろう。コウはどうする?」
それを見ていた先遣隊のメンバー達も、じゃあ俺達も!と、手を挙げた。
しかし、サイードが睨みを効かせて黙らせる。
「俺は…行くかもしれませんが、先行って下さい」
「そうか……うん、了解した。
ではアリ、大佐は気を悪くするだろうけど宜しく頼むな」
「……大丈夫です。では、お気をつけて」
とりあえずは解散となり、アリは小袋を持ち宿舎を後にした。
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