樹属性魔法の使い手

太郎衛門

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転生編

家庭教師のドライ

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目を覚ますと、そこはいつもの部屋だった。
そして、目の前には顔があり、そんな俺を見て安堵するのは母だ。
………えっと、どうしたんだっけ……たしか木を折って、それを隠すために複製しようとして、あぁ気絶したのか……。

「あなた!ヴェルが目を覚ましたわ。あぁよかった━━━」

「ほんとか!………はぁー、よかった。 ……ヴェル、どうしたんだ?大丈夫か?何があった?何かに襲われたのか?」

母に呼ばれた父は、少し離れたところにあるイスに座りウトウトとしていたのだが、飛び起きるようにして急いで俺の側に来ると、肩を揺らしながら問い詰めてきた。

━━まだ首の骨弱いんだから、お、折れるよ!
口はパクパクと動くが言葉が出ない。

脳が揺らされる。
気持ちが悪い。
星がチカチカと見えてきた。

「━━ちょっとあなた! ヴェルが死んでしまいます!」
 
スパコーンッと父の頭を母がはたき、小気味いい音を立てる。

「す、すまん。 ヴェル、大丈夫か?」

あわてふためく父。
俺はそれに対しコクコクと頷いた。
脳が揺らされ少し気持ち悪かったが。

少し間を置いて、俺は年相応のしゃべり方で話を始めた。
もちろん正直に話すつもりはないが。
息を吐くように平然と嘘を並べる。

「……ご、ごめんなさい。外に出ちゃってごめんなさい」

とりあえず言い訳はせず謝ることにした。すると、母が横から口を挟んでくる。

「ヴェル、それはいいのよ。 それよりも何があったの?
御神木は折れて、その側であなたも倒れていたのよ。 あの折れ方は尋常じゃないわ。……何かに襲われたの?」

「……あの……その……ぼく…よく覚えてなくて…。
やさい見てたらなんか音がして……寝ちゃったみたい…ごめんなさい」

俺はこんな訳のわからない説明にもならない説明をする。ついでに、可愛い子ぶりッこの視線を送っておく。
すると、母はウンウンと言いながら俺を抱きしめ頭を撫でてくれた。
父もそうかそうかと言いつつも、母に「魔物モンスターかもしれんから、周辺を見てくる」と、家を出ていってしまった。
チョロいぜ。
 
でも、何だかドアの近くに立っているマオの視線が両親のそれとは違うような気もするけど……気のせいかな。

父は居ない魔物を探しに森へ獣狩りへ、母は俺の汚れた服を持って川へ洗濯へ。
とにかく、何とかバレずに切り抜けた。

 
その後のことは時間が解決してくれたようだった。
御神木は折れたが、その横に同じ品種の木が生えてきていたから、それを御神木とすることで話は終わった。
突然生えたわけではなく、誰も気づかないうちに根っこからでも枝分かれのようにして生えていたんだろうと推測された。

むしろ、自分が折れることを予期したように新たな命を芽吹かせていたことが神がかり的だとしてこれまで以上に神聖なものとされた。

父は魔物モンスターは見つからず、しばらくは警戒に当たるという。ご苦労様でございます。

母と兄は父に任せている感じである。
マオは……全然気にしてない様子である。
いや……俺を見る眼差しに期待感のようなものが込められているような……気のせいかな。

とりあえず、細心の注意をはらってて練習に励まなくては。

 ┼┼┼

それからさらに年月が過ぎ俺は五才となった。
ここまでバレずに何とか修行をしてこれた。バレずに。と、思いたい。そう信じてる。
 
最初はとにかく魔力量が足りなくて気絶しそうになったのだが、それも気づけば魔力量が増加したのか無くなり、この数ヶ月で使える魔法のレパートリーは急激に増えたと思う。
特に樹魔法は徹底的に鍛えたのだ。
馬鹿にされないように俺は頑張った。

けど、独学だからそれがどう評価されるのかもわからないのだ。
だから、特に自分から見せびらかすような愚行はしない。

そして、あと一年でいよいよ学校へと通うことになるのだ。
年齢が六才に達すると子供は例外なく学校へ行くことになる。
所謂、義務教育である。
義務であるにも関わらず、行くには大金が必要だという。
とはいえ、全員が貴族ではないのだから費用の安い学校も中にはあるようだ。

なぜ義務なのかというと、この世界において魔法が使えないことは死に直結するからである。
最低限の魔法が使えないと、あっという間にモンスターに殺されてしまうだろう。
 
それに、仕事するにしても魔法が使えるか使えないかで、天と地ほどにお金に差が出てくるのだ。
仕事の種類の幅も広がるしね。
 
とにかく、学校へ行くことは必須であり、どこに通うことになるのか……。
まぁ、俺としてはどこでもいいんだけど、両親は兄と同じ王都にある一番でかい学校に行かせたいようだった。
ちなみに通うのは十年間だ。
十五才で成人とみなされ、晴れて卒業となる。 

人種が通う学校は四校ある。
その中でも一番教育に力を入れ、かつ安全であるのは間違いなく王都の学校だという。
人種以外にはこの大陸にドワーフ、エルフ、獣人の学校もある。
他の三校はこの人種以外の学校に近い場所へそれぞれ建てられている。

兄のように才能があれば、両親にお金の面でも迷惑かけないんだが……。
兄の魔法はすごいらしいからな……。

というわけで、両親は兄の時にお願いした家庭教師の伝を使い、俺にも家庭教師をつけてくれるようだ。
兄がお世話になった家庭教師は、兄と同じ同じ属性で、父が王都に用事で出掛けた時に冒険者ギルドで依頼をかけたところ見つかったそうだ。
父も同属性なのだから、父が兄に教えたらいいのにって思っていたら、父は教え方が下手だったそうだ。

俺の場合、同属性自体が少なく、居ても教えられる程の人はそうそういないらしい。
というわけで、教えてくれるのは風属性のお方とのこと。

━━━これから入学に向けた俺の修行たたかいが始まる。

 ┼┼┼

家庭教師がやってくる初日。
今日、ついに先生とご対面だ。
時間はお昼頃を過ぎ、俺はワクワクする気持ちを抑え、その気のないふりをしつつ、玄関の外でポカポカと日向ぼっこをしていた。
すると、遠くから馬車がやってる来るのが見えた。
砂埃を撒き散らしながらやってくるその馬車は豪奢な作りであった。
俺のすぐ側までくると、馬が立ち止まりブルルッと鼻を鳴らした。
それが合図のようにして一人の男が降りてくる。
金の刺繍で模様が編み込まれた黒のローブを身に纏い、ローブ越しにも分かる筋骨隆々の体躯。
俺の世界にいたゴリラによく似ている。

髪は深い緑が鮮やかで、顔がごつめ。
一言で表すなら強面のその男は、俺を見るなり目を細め口を開いた。

「ここはブルノーブル家か?」
「はい。ぼ、ぼくは━━」

「━━これはこれはよくぞいらっしゃいました。遠くからご足労いただきましてありがとうございます。 初めましてドライ先生。 フフと申します。」

俺の言葉を遮りあいさつをぶちかますのは、音を聞きつけ急いで家からやって来た母親だ。

「いえいえ、こんな私を頼って頂き恐悦至極に存じます。ドライです。よろしくお願い致します」
「そんな畏まらずに。 ささ、こんなとこでなんですから、とりあえずお家へお入りくださいな」
「ではお言葉に甘えまして。━━おい、ゴリ! ここまでご苦労だった。 後は大丈夫だ。 問題ない」

すると、御者の男が返事をする。
見た目は初老であろうが、こちらも負けじと筋骨隆々である。
ゴリって……むしろ自分じゃねぇか。

「畏まりました、坊っちゃま。お気を付けて。 ではみなさまこれにて失礼いたします」

じじいはパンッと馬の尻に手綱を当てると、また砂埃を立てながら去っていってしまう。
どうやら御者兼、執事のようだった。

「では、行きましょう。 ドライ先生には住込みでの契約になりますので、寝泊まりは二階にあるお部屋でお願いしますね」
と、母は軽い足取りでさっさと奥へいってしまう。

俺がそんな母の背中を見ていると、おもむろにドライ先生がどこから出したのか、黄色い湾曲した果物のような物を食べ始めた……えっ!今?

「━━━おぃ、お前はその頭の色からして樹属性か?風じゃないよな?」
「あ、はい」

完全にゴリラじゃん。

食べ終わった皮を茂みの奥へ投げ飛ばす先生。
「そうか。 属性が違うからどこまで教えられるかわからんが……もし、上手くいかなくても気を落とすなよ。 魔法がダメなら体を使って闘えばいいさ」

俺に任せろとばかりに胸をドンッと叩く。

ドライ先生はゴリラでした。
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