黄金のサメは悪夢を照らす

黒猫和輝

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8.嫌いじゃない

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暗い海の水面をゆっくりとかき分けて、金色の魚が泳ぎます。
背中には一人の少女と大きな袋を背負っていました。

港の明かりは少なくなっていますが、泊まっている船は明かりが多く灯ります。
アウルムは軍艦について知っていましたが、実際に見るのは初めてです。
「あれが軍艦か、本当に大きいな」

今まで見てきたどの船よりも大きな船は頑丈な金属で補強されています。
これではアウルムが体当たりしても簡単には壊れないかもしれません。
アウルムは、改めて人間を恐ろしいと思いました。
「人間め・・・これでは海の上でも、アクリルを助けるのは難しいな」

アウルムの背中に乗るアークは少し悲しそうな顔をします。
「アウルムは、人間が嫌い?」

アウルムは一瞬だけ視線を上に向けますが、背中のアークは見えません。
「嫌いだ、人間に俺もアクリルも辛い目に遭わされた」

それは正直な気持ちでした。
アークは言葉に詰まると、小さく息を吐くように呟きます。
「そっか・・・」

アウルムはアークの表情が見えませんが、その声が元気がないと思いました。
アウルムは自分の言葉がアークを傷つけた事に気が付きます。

アークは人間ですが、アウルムを襲ってきませんでした。
さらに、アークはアクリルを助ける為に力を貸してくれます。
だから、人間を嫌いだと言うとアークも嫌いだと言う事になります。
「ごめん、アークも人間だったな」

アークには謝りましたが、やっぱり人間は嫌いです。
人間を好きだと言うと、アウルムやアクリルを傷つけた人間も好きになります。
アウルムはどう言ったら良いのか分かりません。
「よく分からない・・・神様から貰った知恵は、時々答えをくれないんだ」

アークはそんなアウルムを見て、思わず苦笑します。
「ふふっ・・・アウルムは賢いのに分からないんだね」

アークはアウルムの頭をポンポンと優しく叩きます。
「僕達は人間だけど、僕はアークだよ?」

アウルムは人間と言う種族とアークを分ける事に気が付きました。
「人間は嫌いだけど、アークが嫌いな訳じゃない」

アークは嬉しそうに微笑むと再びポンポンとアウルムの頭を優しく叩きます。
「うん、僕もサメは怖いけど、アウルムは怖くないよ」

アウルムはサメは怖いと言われて少し悲しくなりましたが、
自分は怖くないと言われて少しだけ誇らしくなりました。
「アークみたいな人間が、他にも居るかな?」

もし居るなら、会ってみたいと思いました。

アークは苦笑しながら、目を細めます。
「きっと居るよ、僕もアウルムみたいな子にもっと会いたいな」

アークの言葉に、アウルムは少し考えます。
(俺は神様から祝福されたサメだけど、他にもそんなサメがいるのかな?)

アウルムが心をきちんと理解するのは、もう少しかかりそうです。
「アウルム、それじゃあ作戦通りにお願いするよ」

アークはそう言うと、大きく息を吸い込んでアウルムにしがみつきます。
アークがしっかりとしがみついた事を確認すると、アウルムは潜ります。
「アクリル、直ぐ行く!」

潜ると、急いで船の真下へ向かいます。
背中のアークは振り落とされないように掴まりながら、じっと耐えます。
アウルムも人間が海の中で生きていけない事を知っているので
アークが心配になって、アークを落とさないように気を付けながら急ぎます。
「アーク、もう少しだから頑張れ!」

船の後ろにある大きな舵の影から水面へ顔を出して、アークは小さく咳き込みます。
苦しそうなアークに、アウルムは今まで沈没させた船の人間を思い出します。
(・・・あの人間達も、苦しかったのかな)

アウルムは、少し心が苦しくなりました。
「大丈夫だよ、アウルムはやっぱり優しいね」

アークは笑顔で答えますが、その目には少し涙が浮かんでいました。
そして、大きな袋の中を確かめると小さなランタンと石を取り出しました。
「荷物は無事だね・・・それじゃあ、行くよ!」
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