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10.影に潜む思惑
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扉に近づいてくる足音が、アークには死神の足音に聞こえます。
部屋の中は真っ暗で良く見えないので隠れる事も出来ません。
「アクリルさん!アクリルさん!」
アークは金属の板に向かって声を殺しながら呼びかけます。
「誰?」
暗闇の中から水の音と暖かな声が聞こえて、思わずアークは笑顔になります。
しかし、今は時間がありません。
「話は後、どこか隠れる場所は無い?」
声と足音はどんどん近づいています。
アークは恐怖に必死に抵抗しながら、アクリルに助けを求めます。
「手を伸ばして」
アクリルの声にアークは手を伸ばします。
ふらふらと彷徨う手を、暖かい手が掴みます。
「頑張って」
滑る金属を必死によじ登ると、予想通り箱の中は水で満たされていました。
水の中に少女の姿が見えました。
「ここに隠れて」
手を引かれるままに水に入ると、アークは箱の隅に身を寄せました。
「じっとしてて」
アクリルの体がぴったりとアークに密着すれば、影になって隠れます。
その時、入り口の扉が開いて誰かが部屋に入ってきます。
「少しは喋る気になったかね?」
部屋に入って来たアキードは部屋の燭台に火を付けました。
真っ暗な部屋にぼんやりと明かりが灯ると、アキードは水槽に近づきます。
アクリルが尾びれで水面を叩き、アキードの足元に水が飛んできます。
「・・・」
アキードは近づくのを止めて、アクリルを睨みます。
アクリルはアキードに背を向けて水槽の隅でじっとしていました。
「あの黄金のサメは何処にいるのかね?」
アキードは少し苛立った様子で問いかけますが、アクリルは沈黙しています。
(黄金のサメ?アウルムの事?)
アクリルの影でアークはアキードの言葉を逃すまいと耳を澄ませました。
アキードは、黙っているアクリルを睨んでいましたが、すぐに背を向けました。
「やれやれ、強情なマーメイドだ」
部屋から出て行こうとして、アキードの視線が何かを捕らえました。
船長室の部屋の隅に僅かに濡れた後がありました。
「ん?」
アキードは窓の鍵を見て、ニヤリと笑います。
窓は閉まっていましたが、鍵はかかっていませんでした。
アキードはじっとそれを見てから再びアクリルを睨みます。
アキードが近づくとアクリルは再び尾びれで水面を叩きます。
「・・・ほぅ」
小さな明かりだけの薄暗い部屋ではアクリルの体は良く見えません。
アキードの瞳にロウソクの炎が映って、ギラギラと輝いていました。
アキードは再び部屋を出ると、何故か大きな声で独り言を言い始めました。
「明後日の朝には出航だったな、明日の夜は兵士も陸で全員を休ませよう」
アークはその言葉を聞いて目を丸くします。
(明後日には船が出てしまう?)
アキードは、尚も言葉を続けます。
「おっと、首輪の鍵を食堂に忘れてしまったから取りに行って来よう」
そう言うと、アキードは部屋から出て行ってしまいました。
足音が聞こえなくなると、アクリルはアークから離れました。
「もう大丈夫みたい」
アークは改めてアクリルと顔を合わせました。
ボンヤリとした明かりの中でも、白銀に輝く髪がキラキラと輝いていました。
アークは暫く呆然と見つめていましたが、ポツリとつぶやきます。
「やっぱり、綺麗な髪だね・・・」
アクリルは、首を傾げます。
アークとは初対面なのに、どこか懐かしい気がしたのです。
アークは、そんなアクリルの視線に気づいて慌てて目的を伝えます。
「僕はアーク、アウルムとアクリルさんを助けに来たんだ」
その言葉を聞いて、アクリルは涙を浮かべます。
「アウルムが・・・来てくれた?」
アークはアクリルの言葉に少しだけ心がチクリとしましたが
心から嬉しそうなアクリルを見ていると、自分も嬉しくなりました。
「行こう、アウルムも待ってるよ」
しかし、アクリルは悲しそうに首を振ります。
「あの人間はアウルムを狙ってるの、それに・・・」
アクリルの首には頑丈そうな金属の首輪が付いていました。
アークは何とか首輪を外そうとしましたが、ビクともしませんでした。
「これは鍵が無いと外せないの」
アークは、悔しそうにアクリルを抱きしめると言いました。
「もう少しだけ待ってて!絶対に助けるから、諦めないで!」
アクリルは、瞳を閉じるとこくりと頷きました。
「ありが・・・とう」
小さく、嗚咽の混じった声でアクリルはアークにお礼を言いました。
アークは窓からそっと外に出ると
出来るだけ水面に近づいて、青く光る海へ身を躍らせました。
飛び込んだ音に兵士達が騒ぐ中で、船長室にアキードが入ってきました。
「押してダメなら・・・引いてみるのも一興だな」
そう言うと、窓に鍵をかけて部屋の明かりを消しました。
部屋の中は真っ暗で良く見えないので隠れる事も出来ません。
「アクリルさん!アクリルさん!」
アークは金属の板に向かって声を殺しながら呼びかけます。
「誰?」
暗闇の中から水の音と暖かな声が聞こえて、思わずアークは笑顔になります。
しかし、今は時間がありません。
「話は後、どこか隠れる場所は無い?」
声と足音はどんどん近づいています。
アークは恐怖に必死に抵抗しながら、アクリルに助けを求めます。
「手を伸ばして」
アクリルの声にアークは手を伸ばします。
ふらふらと彷徨う手を、暖かい手が掴みます。
「頑張って」
滑る金属を必死によじ登ると、予想通り箱の中は水で満たされていました。
水の中に少女の姿が見えました。
「ここに隠れて」
手を引かれるままに水に入ると、アークは箱の隅に身を寄せました。
「じっとしてて」
アクリルの体がぴったりとアークに密着すれば、影になって隠れます。
その時、入り口の扉が開いて誰かが部屋に入ってきます。
「少しは喋る気になったかね?」
部屋に入って来たアキードは部屋の燭台に火を付けました。
真っ暗な部屋にぼんやりと明かりが灯ると、アキードは水槽に近づきます。
アクリルが尾びれで水面を叩き、アキードの足元に水が飛んできます。
「・・・」
アキードは近づくのを止めて、アクリルを睨みます。
アクリルはアキードに背を向けて水槽の隅でじっとしていました。
「あの黄金のサメは何処にいるのかね?」
アキードは少し苛立った様子で問いかけますが、アクリルは沈黙しています。
(黄金のサメ?アウルムの事?)
アクリルの影でアークはアキードの言葉を逃すまいと耳を澄ませました。
アキードは、黙っているアクリルを睨んでいましたが、すぐに背を向けました。
「やれやれ、強情なマーメイドだ」
部屋から出て行こうとして、アキードの視線が何かを捕らえました。
船長室の部屋の隅に僅かに濡れた後がありました。
「ん?」
アキードは窓の鍵を見て、ニヤリと笑います。
窓は閉まっていましたが、鍵はかかっていませんでした。
アキードはじっとそれを見てから再びアクリルを睨みます。
アキードが近づくとアクリルは再び尾びれで水面を叩きます。
「・・・ほぅ」
小さな明かりだけの薄暗い部屋ではアクリルの体は良く見えません。
アキードの瞳にロウソクの炎が映って、ギラギラと輝いていました。
アキードは再び部屋を出ると、何故か大きな声で独り言を言い始めました。
「明後日の朝には出航だったな、明日の夜は兵士も陸で全員を休ませよう」
アークはその言葉を聞いて目を丸くします。
(明後日には船が出てしまう?)
アキードは、尚も言葉を続けます。
「おっと、首輪の鍵を食堂に忘れてしまったから取りに行って来よう」
そう言うと、アキードは部屋から出て行ってしまいました。
足音が聞こえなくなると、アクリルはアークから離れました。
「もう大丈夫みたい」
アークは改めてアクリルと顔を合わせました。
ボンヤリとした明かりの中でも、白銀に輝く髪がキラキラと輝いていました。
アークは暫く呆然と見つめていましたが、ポツリとつぶやきます。
「やっぱり、綺麗な髪だね・・・」
アクリルは、首を傾げます。
アークとは初対面なのに、どこか懐かしい気がしたのです。
アークは、そんなアクリルの視線に気づいて慌てて目的を伝えます。
「僕はアーク、アウルムとアクリルさんを助けに来たんだ」
その言葉を聞いて、アクリルは涙を浮かべます。
「アウルムが・・・来てくれた?」
アークはアクリルの言葉に少しだけ心がチクリとしましたが
心から嬉しそうなアクリルを見ていると、自分も嬉しくなりました。
「行こう、アウルムも待ってるよ」
しかし、アクリルは悲しそうに首を振ります。
「あの人間はアウルムを狙ってるの、それに・・・」
アクリルの首には頑丈そうな金属の首輪が付いていました。
アークは何とか首輪を外そうとしましたが、ビクともしませんでした。
「これは鍵が無いと外せないの」
アークは、悔しそうにアクリルを抱きしめると言いました。
「もう少しだけ待ってて!絶対に助けるから、諦めないで!」
アクリルは、瞳を閉じるとこくりと頷きました。
「ありが・・・とう」
小さく、嗚咽の混じった声でアクリルはアークにお礼を言いました。
アークは窓からそっと外に出ると
出来るだけ水面に近づいて、青く光る海へ身を躍らせました。
飛び込んだ音に兵士達が騒ぐ中で、船長室にアキードが入ってきました。
「押してダメなら・・・引いてみるのも一興だな」
そう言うと、窓に鍵をかけて部屋の明かりを消しました。
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