転校サバイバーズ

藤沢 南

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広島生活スタート

悪意なき少女

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その日のスイミングクラブの後、僕は退会届をバッグから出して、受付に持っていった。
しかし、受付には先客がいた。
「あら」
振り向いたその先客は、先ほどの細面の少女だった。彼女は僕の方を見て、ニッコリ笑った。
「これからよろしくね、津山くん。…私も同じ6年生だから。」
僕は久々に見る、悪意のない女子の笑顔に、すっかり面食らった。

退会届は、バッグの中でくしゃくしゃになっていた。

その後、僕とその細面の少女…春田さんは、ガキどもの中で、頭一つずつ抜けていた。小6ということもあり成長期に差し掛かっているせいだろう。プールの中でも目立っていた。彼女は隣の学区の小学校で、僕の通う広島南小の事をこう評していた。
「荒れている学校だって聞いているよ。津山くん、転校してきて大変だったでしょう。」
ガキ女子たちもまだまだ幼いせいか、春田さんのお姉さん的な雰囲気には一目置いていた。そのくせ、僕に対する悪口は減らなかったが。
「あの子達。南小の子でしょう。ガラの悪い口の利き方してて。親は注意しないのかしら。」
春田さんはガキどもの前では笑顔を作っていたが、プールから上がった後、ロビーでは僕の前で苦い顔をしていた。
「津山くん偉いね。あんな生意気な態度でこられても、少しも怒らないなんて。」
そこで僕は鼻から息を吐いた。
「仕方ないよ。同じ実力なんだ。低学年の時に水泳をサボっていた僕が悪い。」
そう吐き捨てるようにつぶやくと、僕は彼女の頭越しにプールの風景を眺めていた。
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