転校サバイバーズ

藤沢 南

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扇町中学編

ラケットをめぐる戦い

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 2学期となり、広島の高い空を見ながら、僕は熊沢と新聞配達に勤しんだ。テニスラケットもボールも自分達の稼いだ金で揃えた。僕らは特に道具を大事に使った。しかし、うちの学校の不良が、テニスラケットを勝手に持ち出して遊んでいた。
僕と熊沢は、それに腹を立て、ただ腕力では勝ち目がないので、2人で不良1人に向かっていった。
「なんだ、クマとツヤか、血相変えてどうした。」
僕らは不良の中でも最も話がわかりそうなやつに掛け合った。しかし、彼はあまり本気で聞く気はないようだった。
「ラケットぐらいでガタガタ言うなって。どうせ親の金で買ったんだろう。」
「違う!」
僕は大声をあげた。自分ですら驚く声だった。
「このラケットは俺たちが雨の日も風の日も新聞を配って買ったものだ。持ち主に断りもなく勝手に使うな。」
僕は少々彼の風貌に臆したか、少し声が裏返ったのに気づいた、そして不良の勘か、奴は攻撃目標を僕にターゲットを絞ったようだ。
「ケチなこと言うな。何だその目は。」
馬鹿みたいに些細なことで衝突する僕たち。やつは僕のラケットをブンブン回した。「返せ」僕はその振り回されたラケットで額を叩かれた。「ごっ」鈍い音がしたが、僕はラケットをつかんだ。
「はなせ」
「やかましい。」

「おい、何やってる!?」
「北野くん」
その不良は手をさっと離した。ラケットを取り戻したが、僕はバランスを崩して転んだ。
北野、…不良のボス格だった。仲間を引き連れている。ヤバイ。クマは自分のラケットを握りしめたまま、立ち尽くしている。
「…北野くん、こいつらテニス部のやつでさ。俺のクラスメイトなんだけど、ラケットを借りようとしたら、文句言うんだ。」
「…それは勝手に使ったからだろ。断りもなく。」僕は間髪入れず反論した。
「こんなケチなやつなんだ。北野くん、ムカつくで。殴ったってよ。」
僕はそこで北野と目を合わせた。
「お前。俺が貸せといっても、断るつもりか。」
流石に不良のボスだ。凄みが違う。僕は息を飲んだ。
「…ああ。誰が相手であっても、勝手に使わせるわけにはいかない。」
僕は、怖がりながらも、相手の目を見て、しっかり答えた。
「…よしわかった。お前、名前は。」
僕は口ごもった。しかし、北野は強い視線をなおも向けてくる。
「熊沢。」
お前じゃない、という北野のカラカラとした笑いが聞こえてきた。僕は少し緊張が緩んだか、名前を告げた。
「津山。」
「3組の津山か。」そこで北野の取り巻きが言った。僕はうなずいた。
よし、行け。北野が言うと、僕たちは早足になって不良達の前から逃げていった。

「北野くん。なんで逃したんだ?」
「逃したように見えたか?」
北野は含み笑いを見せた。
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