初恋エンジン‼︎ー武蔵社宅の少年少女の日々ー

藤沢 南

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迷い

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「しまった…。」満川侑子は、ある事を思い出した。昨日、津山くんを先に帰す為に、とんでもない事を口走ってしまった。彼の秘密を知っちゃったって、言ってしまった。3組の武田くんの事…。そのものズバリは言わないけど、『寄るところがあるはずだから、』放課後早く帰そうとしたところで普通は気づくはず。きっと彼なら気づいたはずだ。そして、彼の重たい秘密ばかり抱えて切ない気持ちになる自分を解放したかった。私の気持ちは楽になったけど、彼は…。本を2冊放り出して、そそくさと帰ってしまった。しかも、今日は珍しく熱を出して休んでいる。

  そして、昨日の事を思い出すと、まだ気になる事があった。閉館時刻ギリギリに来たあの5年1組の2人。私は、高野さんとは初対面だったけど、保川さんとは去年4年4組で同じクラスだった。おとなしい性格同士なのに、なぜかあまり仲良くなれなかった。本好きなところとか、いろいろ共通点はあったのに。そして、保川さんが不自然に借りていた、広島関係の本。しかも先週水曜に、奥寺さんが司書担当の時に、保川さんが延長していた。そして、昨日は本来津山くんと奥寺さんのコンビだった。保川さんはしょっちゅう図書館に出入りしている女子だったから、全く気にも止めていなかったけど、昨日の高野さんを含めた不自然な動き、明らかに怪しい。

「お母さん、今からますみのお家に電話していい?」
「急ねえ。いいけど、夕飯時だから、手短にね。」

満川侑子は、ダイヤルを回した。そして、電話のコードを目一杯自分の部屋まで引き込んだ。
「ちょっと侑子、電話をどこまで持っていくの!?」
「宿題でわからないところがあるの。」
「それなら、宿題を電話のところに持って来なさい。」
「もしもし、あ、満川です。ますみちゃんいらっしゃいますか」
満川侑子もなかなか策士である。母親に聞かれたくない話題だ。先にダイヤルを回してから、電話を自分の部屋に引き込んでしまえば、
つながったところで母親に何を言われても聞こえないふりをしていられる。

「…しょうがない子ね。」

「あ、ますみ、ちょっと今、相談に乗れる?」
「あ、ゆっこ。ごめんね。これからピアノのお稽古だから。また後でかけるから。」

…そうだった。火曜日はますみのピアノの日だ。動揺している自分。落ち着けわたし。「そうだったね。ごめんなさい。じゃ後で、電話待ってるわ。」

満川家に電話がかかって来たのは夜8時だった。満川侑子は、電話ごと自分の部屋に持って行った。
「もしもし、夜分すみませんが、石坂で…。」
「あ、ますみ。私、ゆっこゆっこ。ごめんね。私からかけ直そうか。」
「いいよ、別に。どうしたの?」
「ますみ、1組の保川さんって知ってる?」
「名前を聞いた事があるぐらいかな…。その保川さんがどうかしたの?」
「実はね…。」
満川が石坂に一通りの出来事を話した。石坂は、ちょっと考え込んでいるようだった。
「…不自然ではあるけど、保川さんって、しょっちゅう図書館に出入りしてるのよね。読書家ってそんなものじゃないかしら。手当たりしだいに乱読するというか…。」
「広島に関する本だけを?」
「うん。次の週は、岡山の本かもしれないよ。」
それでも、満川は納得がいかなかった。反論しようとしたが、石坂が制した。
「ゆっこ。あなたの中で、もう結論は出ているんでしょう。私も、ゆっこが欲しい答えを用意することはできるわよ。でも、言わない。だって、こないだ、津山くんの秘密ばかり抱えているって悩んでいたじゃない。私には、その津山くんの秘密については言わなくていいけど、保川さんの件は私の考えでは、あくまで偶然の一致でしかない。読書家たる保川さんは、そのぐらいの幅を持って、読書しているのよ。それでこの話はおしまいね。」
「ますみ…。」
満川侑子は、これは自分の問題だと石坂に突きつけられた気がした。ただ、石坂は、ちゃんとフォローをした。
「その保川さん云々より、ゆっこ自身が、この件について、どう考え、どう行動するかなのよ。ハラが決まったら、また連絡ちょうだい。ゆっこの気持ちが決まれば、私はその時には協力するよ。」
「うん、…ありがとう。おやすみ」
満川侑子は、電話を切ってから、この自分のモヤモヤした気持ちに真剣に向き合ってみようとした。
石坂ますみは、電話を切った後で、『ゆっこ、厳しいこと言ったけど、もうゆっくり悩んでいる時間はないわよ。だから、急いで考えをまとめなさい。』と、心の中でハッパをかけた。

   僕の母は夕食時に、上気していた。まさか、孝典のために女の子が2人も、お見舞いに来てくれるなんて!それもかなり上品な挨拶の出来るお嬢さんたちで。母は僕や弟が気圧されるほど喜んでいた。ただ、母と目を合わせた満川という女の子には、ちょっと後ずさりするほどの目力を感じていた。母は、満川の健康的な肌、そして強い意志を持った瞳、二児の母である自分が気圧されるほどのものを感じた。なんなんだろうか。この圧倒感。…。
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