国道7号線家族

藤沢 南

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異変

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 そしてその年の初秋、俺は無事3度目の期間従業員の更新を終え、静岡で2度目の冬を迎えようとしていた。静岡の冬は雪も少なく、バイクに乗るのにも新潟ほど難儀しない。それでも静岡特有の冬の風の強さには耐えられず、転倒しかけたこともあった。大事をとって、今年から冬の寒さのピークにはバイクのバッテリーを外すことにした。

その年の年末、異変が起きた。

 うちの社のサッカー部が、天皇杯全国サッカー選手権を破竹の勢いで勝ち抜き、ベスト8で、新潟のプロサッカーチームとぶつかる事になった。
 会場は新潟のホームスタジアムだった。
「忙しい時期だが、しっかり応援してこい。有給を取ることに遠慮はいらん」
工場長の一言で、俺はフラッグ要員としてサッカー部遠征に帯同することになった。他、サッカーの応援仲間やサッカー部の補欠選手も入れて、選手の家族を除く、総勢30人の大応援団が新潟に乗り込むことになった。
 
 俺は彼女にサッカー応援の件で新潟に戻るという話をした。
「あなた、サッカーなんて好きだったけ?」
彼女は俺の帰省よりもそちらの方に驚いたようだった。俺が静岡文化に染まったという事だと思う。

 とりあえず、天皇杯の試合の前で、ちょこっとだけ会える時間がありそうだったので、会うことにした。
 
 試合当日になって、彼女からメールが入った。
「ごめん、ちょっと人が足りなくて引き継ぎに長引きそう。直接サッカー場へ行く。」
無理するな、また会う機会はある、と返事をしたが、そのメールの返信に対する返事はなかった。

彼女はどこで調べてきたのか、全身蜜柑色にコーディネートしてスタジアムにやってきた。
「ごめんごめん、夜勤明けで人が少なくって。」
3時間の仮眠でスタジアムに駆けつけた彼女は、どう見ても相手側=新潟側のサポーターだった。
彼女もサッカーをよくわかっていない。我が社のチームカラーの赤色の中にポツンと立つとかなり目立ってしまった。まるで敵チームのスパイのようだ。
 しかし、彼女は新潟名物のひとくちロールケーキを応援団に配るなどして我が社の応援団に元気よく挨拶をした。すっかり名前も顔も覚えてもらった後、「わたしも来年静岡に行くので、その時は仲間に入れてください。」とPRする事を忘れなかった。応援団長の副工長が、「君の彼女か」「良い子だな」「手放すんじゃないぞ。」と帰りのバスで何度も念を押してくれた。

 試合は散々な結果に終わったが、応援団の仲間とともに彼女に会えた事が何よりの収穫だった。
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