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Episode
イベリスの花-1
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それは突然だった。彩乃は春斗の家にやって来るや否や彼の手を引き、「出掛けよう!」と言い出したのだ。確かに今日は日柄が良くお出掛け日和ではある。ただあまりの急さに春斗は外出する準備をしていなかった。
「彩っ!?ちょっと待って、落ち着いて!手を離して!」
普段無口な彼も慌ただしく静止を求める。春斗が早口で喋った事に彩乃は驚き、口をポカンと開けていた。鳩が豆鉄砲を食ったような顔。それはあまりにも呆けた締まりのない顔で、徐々に笑いが込み上げてくる。
春斗が笑うのを必死に堪えている事に彩乃は眉を寄せ、少しばかり覇気のあるくちょうで「春くん?」と名を呼ぶ。けれど、春斗は返事をするどころか目を合わせようとしなかった。彩乃はアメジストの様な瞳を目で追いかけるが、またもや逸らされてしまう。それを何十回と繰り返すと、ついに痺れを切らした彩乃が声を張り上げる。
「もう!春くんさっきから何に笑ってるの?」
その質問に春斗は彩乃の顔が変だから、と言葉を喉元にまで出しかけて呑み込んだ。そのような言葉は女性に対して使うべきではないと判断したからだ。ましてや、自分が好意を寄せている女性には特に。
では、代わりに何と言うべきか。
彩乃は春斗の言う嘘にだけは見抜く事が出来る。つまり、嘘は一切通用しない。
「彩が…」
「私が?」
そこから先の言葉が中々見付からず、汗が額から首までつう、と一直線に流れてくる。春なのにもう暑いな。そんな考えが頭を過ぎった。
言葉を詰まらせていると、時間を教える音が鳴り渡る。二人して音の根源に目をやると、時計の針は三時を指していた。
「うわわ、春くんもうこんな時間!暗くなる前に早く行こう!」
彩乃に急かされ渋々着替え、準備を整える。
彩乃は先に靴を履いてドアノブに手を掛けた。隙間から風が入り、身震いする。春先とは言え、まだ寒いと感じる日々は少なくない。そして彩乃の格好は白いゆったりとしたブラウスに桜色の薄手のカーディガン。そして黒のロングスカート。今日の気温にしては、少し寒そうな格好である。
春斗は小さく溜め息を吐くと自分の上着を二着用意し、一つは彩乃の肩にかけた。
「あ、ありがとう春くん」
「別に…風邪引かれても困るし」
分かりやすい照れ隠しに彩乃はそうだね、と微笑み返す。
春斗は彩乃の小さな手を握ると行くよ、と外へと飛び出す。勢い良く家を飛び出したのは良いけれど、春斗は肝心の目的地を知らなかった。
「そう言えば彩…何処に行くの?」
彩乃は顔をきょとんと傾げて、微かに声を漏らす。
「言ってなかったっけ?」
彩乃はたまに天然だ。
それをまた思い知らせされた春斗だった。
「彩っ!?ちょっと待って、落ち着いて!手を離して!」
普段無口な彼も慌ただしく静止を求める。春斗が早口で喋った事に彩乃は驚き、口をポカンと開けていた。鳩が豆鉄砲を食ったような顔。それはあまりにも呆けた締まりのない顔で、徐々に笑いが込み上げてくる。
春斗が笑うのを必死に堪えている事に彩乃は眉を寄せ、少しばかり覇気のあるくちょうで「春くん?」と名を呼ぶ。けれど、春斗は返事をするどころか目を合わせようとしなかった。彩乃はアメジストの様な瞳を目で追いかけるが、またもや逸らされてしまう。それを何十回と繰り返すと、ついに痺れを切らした彩乃が声を張り上げる。
「もう!春くんさっきから何に笑ってるの?」
その質問に春斗は彩乃の顔が変だから、と言葉を喉元にまで出しかけて呑み込んだ。そのような言葉は女性に対して使うべきではないと判断したからだ。ましてや、自分が好意を寄せている女性には特に。
では、代わりに何と言うべきか。
彩乃は春斗の言う嘘にだけは見抜く事が出来る。つまり、嘘は一切通用しない。
「彩が…」
「私が?」
そこから先の言葉が中々見付からず、汗が額から首までつう、と一直線に流れてくる。春なのにもう暑いな。そんな考えが頭を過ぎった。
言葉を詰まらせていると、時間を教える音が鳴り渡る。二人して音の根源に目をやると、時計の針は三時を指していた。
「うわわ、春くんもうこんな時間!暗くなる前に早く行こう!」
彩乃に急かされ渋々着替え、準備を整える。
彩乃は先に靴を履いてドアノブに手を掛けた。隙間から風が入り、身震いする。春先とは言え、まだ寒いと感じる日々は少なくない。そして彩乃の格好は白いゆったりとしたブラウスに桜色の薄手のカーディガン。そして黒のロングスカート。今日の気温にしては、少し寒そうな格好である。
春斗は小さく溜め息を吐くと自分の上着を二着用意し、一つは彩乃の肩にかけた。
「あ、ありがとう春くん」
「別に…風邪引かれても困るし」
分かりやすい照れ隠しに彩乃はそうだね、と微笑み返す。
春斗は彩乃の小さな手を握ると行くよ、と外へと飛び出す。勢い良く家を飛び出したのは良いけれど、春斗は肝心の目的地を知らなかった。
「そう言えば彩…何処に行くの?」
彩乃は顔をきょとんと傾げて、微かに声を漏らす。
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彩乃はたまに天然だ。
それをまた思い知らせされた春斗だった。
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