骸骨ネクロマンサーは怖がられる【旧題:ゲーム世界でネクロマンチックな骸骨として自由に生きていく】

にく

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二話 チュートリアル

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 気が付くと、涼真は背の低い草が青々しく生えた草原に居た。
 ポツポツと雲の浮かんだ良く晴れた空の眩しさに、少しだけ眉をひそめる。
 そして目の前に、白いワンピースに黒髪のロングヘア、肌が白く背の低い少女が立っていた。

「始めまして、岡本涼真様。わたくしは管理AI3-5、ミコとお覚え下さい。
 以後、よろしくお願いいたします。」

 ミコと名乗ったその少女は、ワンピースの裾の少し上をつまみ、翼の様に広げてお辞儀をする。

「あ、はい。よろしくお願いします」

 空気読み民族・日本人の性なのか、反射でお辞儀と挨拶を返す。
 ミコは、ニッコリと微笑み話を続ける。

「では、早速キャラメイキングをさせて頂きます。そうですね……先ずはこの世界でのお名前を決めて頂きますね。」

 ミコがそう言うと、涼真の目の前に半透明のウィンドウの様なモノが現れる。
 ウィンドウには、長方形の図形が中心に書かれている。
 涼真が図形をタップすると、もう一つキーボードが付いたウィンドウが現れる。

(つける名前はもう決めて有る)

「確認します。【オーカ・ルト】様で宜しいですか?」

「はい。それでお願いします。」

「ちなみに、どんな意味なのか質問しても?」

「あぁ、本名が岡本なのと、オカルトや都市伝説が好きな事と、これから選ぼうとしている種族とプレイスタイルを考えてカルト、という事でオーカ・ルトにしました。」

「分かりました、良いお名前ですね。
 了解しました。オーカ・ルトで登録します。」

「お願いします。あと、長いのでルトって呼んでください。」

「了解しました、ルト様。では次は種族を選んで下さい。」

 ウィンドウが閉じ、新たなウィンドウが現れる。
 新たな現れたウィンドウには、様々な種族名がズラーッと並んでいる。
 オーカ・ルト(以下、ルト)は五十音順検索でさ行へと飛び、目当ての種族を見つける。
 迷わずタップすると、細かな種族説明とアバターのサンプル、種族のスキル等が表示されている。


種族名:【蠢く骸骨スケルトン
系 統:アンデッド
スキル:
《呼吸不要》《闇耐性Ⅰ》《飲食不要》
《打撃脆弱Ⅴ》《光脆弱Ⅴ》《浄化脆弱Ⅴ》
《暗視Ⅰ》《聖脆弱Ⅴ》《即死耐性Ⅰ》
《呪耐性Ⅰ》《病毒系状態異常無効》《炎脆弱Ⅴ》
《死霊術耐性Ⅰ》《負の力Ⅰ》《聖域時弱体化Ⅴ》
《肉体ペナルティ軽減Ⅰ》《光魔法習得不可》《聖魔法習得不可》
《スタミナ不要》
説 明:
 生前の怨念が残った死骸に魔力が宿る事によって発生したアンデッドの一種。
 しっかりと埋葬や葬式をされなかった者達、生前に強い未練や恨みつらみがある白骨化死体が動き出した姿。


 ルトはウィンドウに書かれた「この種族で決定しますか?YES/NO」のYESを迷わずタップする。

「【蠢く骸骨スケルトン】で宜しいですか?」

「はい。お願いします。」

「それでは、【蠢く骸骨】で登録させて頂きます。
 次はスキルを選んで頂きます。スキルは最大で25個選ぶ事が可能です。
 選んだスキルや選ばれなかった残りの枠はゲームが開始すると変更出来ないので、注意して下さい。」

「多いですね。」

「はい。本ゲームは職業システムが存在しない事と、スキルの獲得手段が難易度が高い場合が多いので、この場で多く選んで頂きます。」

 なるほど、とルトが頷くとウィンドウが入れ替わる。
 新しいウィンドウにスキルの名前がズラッと並ぶ。
 ルトは悩みながらも必要そうなスキルや面白そうなスキルを選んで行く。

(魅力的なスキルや似てるスキルが多くてどれを取るか迷うな……)


スキル:
《魔力操作Ⅰ》《魔力自動回復Ⅰ》《魔力感知Ⅰ》
《闇魔術威力上昇Ⅰ》《気配察知Ⅰ》《体力自動回復Ⅰ》
《死霊術威力上昇Ⅰ》《呪術威力上昇Ⅰ》《死霊術Ⅰ》
《鑑定Ⅰ》《錬金術Ⅰ》《闇魔術Ⅰ》
《杖術Ⅰ》《隠密Ⅰ》《言語学Ⅰ》
《無魔術Ⅰ》《風魔術Ⅰ》《水魔術Ⅰ》
《工作Ⅰ》《呪術Ⅰ》《魔力上昇Ⅰ》
《精神強化Ⅰ》《魔耐強化Ⅰ》《知力強化Ⅰ》
《俊敏強化Ⅰ》


(うん、こんなものか。)

 出来上がった事を察したのか、ミコは口を開く。

「スキルは決まりましたか?不具合が無いか、もう一度ご自分の目でご確認ください。」

 ルトは間違いが無いかスキル一覧としばらくにらめっこした後、問題無い事を確認する。

「問題ありません。コレでお願いします。」

「了解しました。最後に、アイテムを支給させて頂きます。
 いくつか選べるようになっているので、ご自分で選んでみて下さい。」

 そう言うとウィンドウには装備やアイテム等が並ぶ。
 タップすると、骸骨ーーー恐らくルトのアバターと思われる、がマネキンの様に服を着たり剣や盾を持ったりする。

(こんな所か)


・初心者の木の杖
・初級冒険者の長袖シャツ
・初級冒険者の長ズボン
・初級冒険者の靴下
・初級冒険者の靴
下級負傷魔術薬レッサーダメージポーション×5
下級魔力回復魔術薬レッサーマナポーション×5


(どうやら、アンデッドの保有スキル《負の力》で回復アイテムでダメージを受けて、負傷アイテムで回復するらしい。説明を良く読んでおいて正解だったな。)

「これでお願いします。」

「了解しました。では、次にチュートリアルを開始します。宜しいですか?」

 現れたウィンドウには「チュートリアルを開始しますか?YES/NO」という文字が書かれている。
 ルトはYESを押し、お願いしますと軽くミコにお辞儀をする。

「それでは、チュートリアルに移行します。」

 ミコがそう言うと、景色が一気に移り変わる。
 コケの生えた石造りの閉鎖的な、トンネルの様な場所。
 壁には松明が設置されており、周りを薄暗く不気味に照らしている。
 一言で表すならば「ダンジョン」と言う言葉が良く似合う場所だ。

「では先ず、ルト様は人外プレイヤーと言う事で、自分の体に慣れて貰います。」

 ミコがそう言った瞬間、ルトは全身の感覚に違和感がある事に気づく。
 肉や皮の感覚が無いのに体は動く何とも言い表しづらい不思議な感覚だったが、ミコの指示通りに軽い運動や体操をする事で少しづつ違和感は消え、馴染んでいった。

「では次に、ルト様は魔術を扱うという事なので、魔術の練習をさせて頂きます。
 なお、チュートリアルなのでスキルに経験値は入らないので、そこは御理解下さい。」

「分かりました。」

「では、先ずは自分の体の中に流れる魔力の流れを感じてみて下さい。」

「魔力の流れ、ですか?」

「はい。肉体の無いルト様でも、血の循環の様な感覚があるかと思います。それを感じるのです。」

 いきなりそんな事を言われても、とルトは思うが、直ぐにミコが言う体の中を巡るナニカの感覚を感じ取る。
 やがてそれが粘り気のある液体を掴む様な感覚で、形作る事が出来る事に気が付く。

「おお、中々良い線ですね。普通はもっとかかるものなのですが。」

「いえ、このゲームの前にやっていたゲームでも魔法職だったので、感覚は少し違いますが似た物があったので。」

「なるほど。では、そのまま魔術の発動まで行きましょう。魔力を手のひらや杖の先に送るのをイメージして下さい。
 そのまま流れる水や燃え盛る炎等、発動したい魔術のイメージをするんです。
 今回発動するのは闇魔術の初級魔術、<闇球ダークボール>です。影が玉になり、相手に当たるイメージをするのです。
 魔術は詠唱を行わなければいけませんが、普通はイメージすると詠唱句と発動句が頭に浮かんで来るはずです。」

 ルトは早速、言われた通りに想像してみる。
 すると直ぐに紫と黒の霧の様なモノがルトの手のひらに集まっていき、握り拳より少し大きめの球体が出来上がる。

「では、あちらの的に向かって発射するイメージで発動してみて下さい。」

 いつの間にか立っていた棒に大きな円形の的がついた物体を指差してミコは言う。

「闇よ、球となって敵を撃て!<闇球ダークボール>!」

 手のひらから放たれた球体は飛んで行き、的の中心より少しズレた位置に当たり、的にヒビを入れて消えていった。

「おめでとうございます。今のが魔術です。では、次の項目ですが、スキル《杖術》をお選びになられた様なので、杖の使い方についてになります。」

 ミコは説明を続ける。

「杖は、打撃系統の武器、及び魔術の発動を手助けする魔術補助具と呼ばれる物となります。
 使い方としては、敵にバットの様に振りかざして殴打する、魔術を手のひらではなく杖から発動させる事によって、同じ魔術でもより高い出力をする事が可能です。」

 実際にやってみて下さいと微笑むミコの隣に、頭上に【子供小鬼人リトルゴブリン】と書かれた小さなウィンドウが浮いている異形が現れる。
 肌はくすんだ緑、二つの角の様なコブ、猫の様に縦に割れた瞳孔に黄色の目。
 背丈は人間の子供ほどで、痩せているが筋肉はついているといった印象を受ける。
 口にはボロボロの牙が生えており、ヨダレを垂らしながら「ギギャググャ」と気味の悪い汚い鳴き声を上げている。
 手には不格好な棍棒の様な物が握られており、あれで敵を殴るのだと一瞬で理解出来る。

(いかにもThe・ゴブリンって感じだな。)

「準備は宜しいですか?では、戦闘チュートリアル、スタートです!」

(え!?戦闘?聞いてないですけど!)

 焦ってオドオドするルトとは対照に、リトルゴブリンはルトへ勢い良く突進する。

「チィッ!ええいままよ!」

「ギャギャッ!」

 幸い、ルトの持つ杖の方がリーチが長かった為、ゴブリンを先制攻撃する事が出来た。

「ギャグッ、!」

 ゴブリンは叩かれて痛そうにするが、物理に貧弱なスケルトンの体では、ゴブリンを一撃で仕留める事は出来なかった。

「グッギャギャルッ!」

 反応に遅れたルトに、間合いに入ったゴブリンがすかさず肋骨の辺りに棍棒を振るう。

「グハッ?!」

 ルトは痛みを感じないものの、あまりの衝撃に思わず声を漏らし、よろけて後退りしてしまう。
 ゴブリンは殴られた相手が苦しむのを見て喜んでいるのか、グギャグキャと笑っている。

「あんまり調子に乗るなよ!」

 ルトはそう言うと構えを取る。
 神経を集中させ、魔力を杖へと送る。

「闇よ、球となって…………」

 ゴブリンはルトの様子がおかしい事に気付き、慌てて距離を詰めて殴り掛かる。

「……<闇球ダークボール>!」

 しかし、ゴブリンの棍棒が届くより僅か先に、ルトの闇球が発動する。
 至近距離から放たれた魔術にゴブリンは吹き飛び、全身がポリゴン状のエフェクトに包まれて消えていった。

「お疲れ様です。ルト様。【子供小鬼人リトルゴブリン】の討伐、おめでとうございます。」

「ありがとうございます。」

 ぐったりした様子のルトに、ミコは語りかける。
 スケルトンの体にスタミナや呼吸と言う概念が無いが、精神的なモノや焦りからの解放等、慣れないルトはどうしても少し疲れてしまう。

「お疲れの様ですが大丈夫ですか?以上でチュートリアルは終了となります。お疲れ様でした。」

「大丈夫です……(貴方の所為なんですけどね。)
 ……お疲れ様でした。所で、今が何時か分かりますか?」

「分かりますよ、AIなので。」

 ミコは良く分からない事に胸を張りながら指パッチンをすると、ルトの目の前にデジタル時計の書かれたウィンドウが現れる。

「現在の時刻は8時59分。後ちょっとでゲームの正式サービスが開始となります。」

「ありがとうございます。」

 ルトはまだそんなに立っていなかったのかと考えたが、直ぐに時間加速でゲーム時間は現実時間の三倍という事を思い出す。

「では、そろそろお時間です。我々はプレイヤーの皆様のより良いゲームライフを、心よりお祈り申し上げます。それでは。」

「はい、ありがとうございます。お世話になりました!」

 別れの挨拶をミコに告げると、再び涼真の視界は暗転し、意識が途切れた。
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