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第8章 Freedom国の設立!

13話 生産ギルド

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 ケンジが出て行った部屋で、マイとセバスは不安になるのだった。ケンジがテンペの町はいずれ無くなるというのである。
 いつも先を見通して行動をするケンジであった為、こういったケンジの予想は、不気味なものがあったのである。

「ねえ、セバス……本当にテンペの町はなくなるとおもう?」

「私にはわかりかねます……ただ、ご主人様がそういうのならひょっとしたら……」

「だったら、どんな風に?やっぱりスタンピードなのかな?その時、あたし達は何をすれば……」

「マイ様、落ち着いて下さい。まだ本当にテンペの町が滅亡すると決まった訳じゃないんですし」

「そ、そうよね。ただ、ケンちゃんが言っているだけだものね……」

 そういいながら、二人はどうしようもないほどの不安が押し寄せていたのだった。




 そして、ケンジからアドバイスを受けた受付嬢3人は、早速ギルドに報告したのだった。

「今日の会議を始める!何かいい案のある者はいないか?」

 ギルドマスターが、重苦しい雰囲気で会議を進行し始めるのだ。そこで、受付嬢がケンジからアドバイスをもらったことを発表したのだ。

「今、地上で働かせている、ギルド所有の奴隷達を、初級ダンジョンに行かせてみてはいかがでしょうか?」

「ばかな!そんな事をしてもすぐに死んでしまうだけではないか!」

「そこは、監督係を何人か選抜させ、初級ダンジョンに行くのです。そして、その護衛に冒険者ギルドに協力を依頼したら、今よりはオリハルコンの含有量の多い鉱石が手に入るのではないですか?」

「な、なるほど!」

「町の結界の事なので、冒険者ギルドも無下にはしないはずですし、今のこの状況を打破するにはそれしか!」

 この案聞き、ギルドマスターや幹部連中は、笑顔を見せるのだった。確かに魔物が強くなってきたとはいえ、初級ダンジョンの5階層なら、ベテラン冒険者を護衛につけたら、オリハルコンが手に入るはずであると、確信が持てるのである。

「よく、そんな案を思いついたな!でかしたぞ!」

 ギルドマスターは、受付嬢がそんな案を持ってくるとは思いもしなかったようで、すこぶる機嫌がよくなったのだった。

 そして、ギルドマスターは早急にその計画を実行に移したのだ。

「くくくっ!ケンジの奴なんかに頼らなくても、これで自力でインゴットを大量に採掘が出来る!」

 会議が終わって、ギルドマスターの部屋からは笑い声が聞こえていたのだった。だが、会議中に受付嬢は、ケンジの言った調子に乗るなと言った言葉を伝えていなかったのだ。
 受付嬢もまた、この計画がうまくいけば自分の身は安泰だと浮かれていたのである。
 後につなげるというケンジの言葉は、やはり伝わっていなかったである。そして、これを機にテンペの町は、将来滅亡の道を歩む事となる。



 それから、一か月ギルドでは採掘作業が、急ピッチで行われていたのである。その結果オリハルコンとアダマンタイトのインゴットの在庫が、計算上ギルドに常時1本づつは残る様になったのである。

 そして、余裕が出来ると人の心は大きくなるのは、世の常である。ギルドマスターは赤字を取り戻すべく、奴隷達を酷使しだしたのである。

「ギルドマスター!なんでまた、採掘に行かせたのですか?この間帰って来たばかりではありませんか?」

「何を言っているのだ?こんなに調子よくインゴット鉱石が手に入ったではないか?」

「ですが!帰ってきたばかりで又、すぐにダンジョンに行かせるなんて……最低でも2週間は休憩させないと!」

「何言っているのだ?奴隷に休憩だと?それよりも、今までの赤字分を取り戻す方が最優先事項だろう!」

「それも大事だとは思いますが、今回上手くいったこともあり、そんな赤字なら無理をさせずとも、すぐに取り戻せるではありませんか?」

「ぐっ……」

「それより、採掘師の奴隷を無理をさせて今、危険な目にあえばどうなる事か。ダンジョンで失う事となったらどうするのですか?」

「初級ダンジョンではないか!確かに魔物の強さは強くなってきているが、護衛に選んでいる冒険者達はAランクなんだぞ。」

「確かにAランクですが、冒険者の方も生活が苦しくなってきているのです。初級ダンジョンに潜るだけで、大金がもらえるというだけで飛びつくような質の悪いAランクです。いざとなったら、自分可愛さに、護衛を見捨てるような質の悪い冒険者だと何故わからないのですか?」

 
 冒険者ギルドでも、頭の良い冒険者達はギルドを通さず町の人達と交流し、暮らしを少しでも安定させているのである。
 そういった冒険者は、わざわざギルドの依頼を受けずとも、生活が安定しているのだった。
 今回、冒険者ギルドの用意した冒険者達は、上級に潜れなくなって日頃くすぶっているような人間で、町の人達と交流を重ねて、日頃の積み重ねで生活を安定させるというより、一獲千金を狙うような人間だったのだ。

「だとしても、Aランク冒険者が初級ダンジョンでピンチになるなんて事、そうそうあるわけないだろ?」

「そうかもしれませんが、そう言い切れないのがダンジョンではありませんか?」

「う、うるさい!俺が決定した事に口出しするな!」

「でも……」

「少しいい案を出したくらいで、いい気になるんじゃない!その案を実行に移せるのは、ギルドマスターである俺の力があってこそなんだ!」

「そ、そんな……私は、只ギルドが少しでも良くなればと思ったからで、いい気になっているつもりなんて……」

「う、うるさい!もういいからさがれ!」

 受付嬢は、ギルドマスターに怒鳴られ部屋を後にしたのだった。

「ねえ、レーラどうだった?」

「だめでした……反対に怒鳴られました」

「ええ!なんで?」

「ギルドマスターは、今までの赤字分が気になって早く取り戻したいようよ」

「あっ……なるほどね」

「でも、もしこの計画が失敗したらどうなるのかな?もっと慎重に行動した方が……」

「私もそう思うんだけど、ギルドマスターには逆らえないし、奴隷達が無事帰って来るのを祈るしかないわね」

 そして、2週間後マジックバックが鉱石でいっぱいになったので、無事奴隷達が帰って来たのだった。

「みてみろ!やはり俺の思った通り無事帰って来たではないか?」

「ですが、もし不測の事態になった時の事を考えると、体力の回復はした方が良いと思います。今回たまたま無事だったのかもしれないし!」

「いいや、ここは取り戻せる時に取り戻す事が重要なのだ!」

「そ!」

「まあ、待て!レーラお前の言う事はもっとなのも確かだ!今回成功した事もあるし、次の出発までは休憩を挟むことにするから安心しろ」

 それを聞いたレーラと部下の受付嬢達は、ホッと安堵するのだった。オリハルコンのインゴットを5本作るのに、普通は5回に分けてダンジョンに挑戦するのである。ケンジがいかに化け物級の採掘士だとわかるであろう。

 つまり、普通の生産者はオリハルコンの依頼を受けた時、依頼の納品数を揃える為に、一回潜ったら2週間ほど休暇を挟み5回のわけて潜るのである。
 納品数を揃える為に、無理をした状態でも3か月という時間をかけて納品するのだ。ダンジョンという危険な場所に潜り、成功する確率は40%もないのである。
 時には、魔物から命からがら逃げることもあり、1回潜っただけではオリハルコンインゴットが1本できない事もざらにあるのだ。そう考えると、一人の生産者が納品できるのは早くて半年に一回なのである。

 今回ギルドの所有している奴隷は、採掘士のレジェンダリーが5人である。つまり、一回潜れば上手くいけばケンジの様に5本揃える事が可能なのだ。
 しかし、レジェンダリーの採掘士の奴隷などそうそういないので、犠牲になった時の事を考えれば、レーラが心配するのは無理もなかったのである。

 今回のミッションで、ギルドマスターはオリハルコンとアダマンタイトのインゴットを5本づつ揃える事ができてすこぶる機嫌がよかったのである。

「やはり、無理をしないといけない時の見極めは、俺の方が上手だったようだな!がははははは」 

 ギルドマスターは、それから1週間後にまたダンジョンに、奴隷達を行かせようとしたのだった。これには幹部達も反対し、少なくともあと1週間は期間を開けるようにと進言したのだった。
 ギルドマスターとしては予備であるインゴットを早急に手に入れたかったのだ。不測の事態の時、すぐに用意できる力のあるギルドを見せたかったのだ。

 だが、そんな見栄だけの為に、危険を冒す事はできないとみんなが止めたのだった。もしインゴットが必要な時が来れば、ケンジの店で少し高いかもしれないが買い付けすればよいと、幹部から言われてしまったのである。

 これには、ギルドマスターも気に食わなかったが、同意するのしかなかったのである。だが、ギルドマスターは早くケンジには、頼らないようにしたかったのだ。
 インゴットや、保管庫等ギルドの商品を上回る商品で、ギルドをピンチにしたケンジが忌々しくて癇に障るのだ。
 しかも、Fランクの依頼ばかり受けて、ケンジはギルドの役に立たないとまで思い込んでいた為、腹が立ってしょうがなかったのだ。

 ケンジが、インゴットの依頼を受けてくれていたら、ギルドマスターの心証も良かったのだが、ことごとく反抗ばかりしていた為、Fランクの仕事を受けていたのにもかかわらず、ギルドマスターにとっては役立たずのレッテルを張られていたのだ。



「ご主人様!今日は何の依頼を受けるのですか?」

「今日は、城壁の資材、家の建築現場の資材への運搬、家の溝掃除3件だな」

「私達は、溝掃除の方に先に言っていたらいいですか?」

「ああ!頼むよ」

 本来なら、ケンジも一緒に行かないとギル達奴隷だけで行っても、家主に通報されるのだが、テンペの町ではギル達がケンジの奴隷だという事が知れ渡っている為、ギル達だけで先に始めていても、家主の人達はお礼を言い、仕事が始められるのである。
 当然だが、これはケンジだから出来る事で、他の主人が自分の奴隷達だけで行かせたとしても、主人を連れてきてくれと言われるのである。




「今日は、この依頼をお願いします」

「またFランクの依頼なのですか?」

「Fランクが又、貯まっていたからな」

「ケンジ様、Fランクの依頼も他の冒険者や生産者達が受け始めて、独自の交流を初めて、前より貯まる事がなくなってきたのですよ」

「ほう!良い傾向にあるじゃないか」

「だから、ケンジ様にはもっと、ランクの高い依頼を受けてほしいのです」

「どの依頼を受けようが、俺達構成員の勝手だと思うんだけど」

「それはそうですが、言い方が悪いかもしれませんが、ケンジ様を遊ばせておく事は、ギルドとしても損失が大きいのです」

「そんな、うるさく言うと王都やガーライの、ギルドの依頼しか受けなくするけどいいのか?」

「そ、そんな……」

 すると、後ろからギルドマスターが出てきたのだった。

「レーラ!もうよいではないか!そんな役立たずに頼らなくとも、インゴットは手に入るようになったのだ。好きにさせてやったらいいじゃないか!」

「ほう!それはよかったですね。なら、俺が出張る必要は無くなったという訳だ」

「ああ、そうだ!お前は自分の国で、高額なインゴットを売りつけていればいい、そして在庫の山となるだけだよ」

 ギルドマスターは、ここぞとばかりに、ケンジに嫌味を言ってくるのだった。

「なんだ、受付嬢さん。俺が採掘行かなくともいいじゃないですか」

「そ、それは!違うんです!」
「ちょっと、ギルドマスター!なんて事言うんです。私は少しでもギルドが楽になると思えばこそ、協力を募っているのに!」

「なに、そんなに慌てているんだ?ギルドが、生産者に頭など下げるもんじゃない!生産者が仕事を下さいと言ってくるのが当然だろうが!」

 ケンジは、ギルドマスターはもう終わるなと心の中で思うのでだった。

「もう、いいから!奥に行ってください‼」

 レーラは、ギルドマスターを奥の部屋に追い返すのだった。

「受付嬢も大変だね」

「ケ、ケンジ様、申し訳ありませんでした。ギルドマスターの言う事は気にせず、なんとかインゴットの依頼を受けてくれないでしょうか?」

「まあ、普通に考えて無理でしょ?」

 レーラは、ギルドマスターの部屋の方を向いて、苦虫を噛みしめたような顔をするのだった。

「だけど、あんたには好感が持てるよ。本当にギルドの為と思い、働いているのがわかったからね」

「じゃあ!」

「早とちりするなって!俺のスタンスは変わらないよ。だけど、あんたがピンチの時は、俺を頼ってくるといいよ。なにが出来るかわからんが力になるよ」

「だったら、今……」

「そんな事より、早く依頼の受付をしてくれ!量が多いから時間が欲しいんだ」

 レーラは、ケンジに言われてしょうがなしに受付をすませたのだ。そして、ケンジはさっさと運搬の仕事に行ってしまったのである。


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