研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第2章 研磨という技術

19話 口論

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 ヒロトシは、領主シルフォードから今回の謝礼を受け、家に帰ってきた。そして、その日はもう仕事が終わる時間だった。

「くううう……また仕事が出来なかった……明日は磨きの仕事をやらないとな……」

 ヒロトシは、明日は仕事をする予定で明日から頑張ろうと思い、自分の家に入った。

「旦那様おかえりなさいませ」

「ああ、ただいま。今日は何もなかったか?」

「それが、生産者達が店にやってきて、旦那様と面会したいと言ってきました」

「そうなんだ……それでどうしたんだ?」

「生産者達は、店で売っている武器のミスリルの出どころの事で話したいらしく、今度の店の休日に話を聞かせてほしいという事です」

「そうか。わかったよ」

「えーっと、只ならぬ感じだったのですがよろしいのですか?」

「ああ、いいよ。いずれ、生産者と言っても押し寄せたのは採掘者達だろ?」

「なぜそれを?」

「まあ、それは想定内の事だよ。むしろ今まで気づかなかった方が、俺としてはびっくりしているからね」

「ダンナ様は、採掘者が何を言ってくるのかわかっているのですか?」

「というか、分からないほうがおかしいだろ?」

「えっ?」

「セバスは見当がつかないのか?」

「私にはちょっと……」

「嘘だろ?㋪は、ダンジョン前に捨てられる鉱石をタダで持って帰り、㋪でミスリルの武器を格安で売っているんだよ。そうなれば苦情を言いに来るのは当然じゃないか」

「ギルドじゃなく、何で生産者が?」

「この場合生産者じゃないな。採掘者だよ。考えて見なよ。採掘者はダンジョンから危険な目に遭いながら、ミスリル鉱石を持って帰って来るんよ。その鉱石からは少量のミスリルしか抽出できないから、採掘者は泣く泣く捨てているんだよ」

「なるほど……その捨てる鉱石を拾い、ミスリル製の武器を作り元手をかけず、㋪だけが大儲けしているのが気に入らないと……」

「そういうことだな」

「では、どうするのですか?」

「どうもしないよ。納得して帰ってもらうだけだよ」

「納得ですか?……」

「ああ。納得してもらうしかないよ」

「そんなに上手く行くものなんですか?」

「わからん」

 セバスの心配をよそに、ヒロトシは他人事のようにあっからかんとした様子だった。

「そんな事よりお腹すいたな……今日は、領主様と話しをして疲れたよ。お偉いさんと会話すると気疲れだけして精神が削れるから、家で仕事している方がいいよ」

「やはり、魔道砲の設置を求められていたのですか?」

「ああ……本当に聞き訳が無くてな、特に役員がうるさかったよ」

 ヒロトシは、スタンピードで大活躍した魔道砲を、城壁の上から取り外していた。それを不服に思った町の役員達が、ヒロトシに訴えていたのだった。
 役員達が、文句を言うのは当然だった。スタンピードを退けたような兵器とも言える魔道具が、ヒロトシに許可を得ないと出してもらえないからだ。

 ヒロトシは、この魔道砲を町の所有物にはしたくなかった。それに、あの城壁の上に設置したままだと磨きのメンテナンスが欠かせないからだ。
 それならば、磨きをしてヒロトシ自身のインベントリに保管しておけば時間経過は無く、いつでもすぐに万全な状態で保管できるからである。

 今回セバスに預けたのは、ヒロトシがガーラの町に出張したからであり、ヒロトシが町にいれば預ける事もなく、本来なら+5の状態で魔道砲を仕様で来たのだ。

「まあ、どっちにしても魔道砲は威力がありすぎるからな。そんなのを常時町の城壁に飾っておくのは危険だ」

 ヒロトシは、この魔道砲をあの場所に放置するのは危険と言い、常に見張りをつけないといけないと言って断り、インベントリに収納してしまっていた。
 今回、役員達がその交渉をヒロトシにしてきて、とても精神がすり減ってしまったのだった。

「ご主人様。そんな時はお風呂に入ってゆっくりしてください。今お湯を沸かしましたので」

 そう言って話しをしてきたのは、メイドのアヤだった。今までは風呂の湯沸かし器の操作はヒロトシがしていた。市販されていたのは魔力量がとんでもなく多くいり、他の者が操作が出来なかった。
 しかし、ヒロトシが魔道具を作れるようになり、魔力消費の少ない物に作り替えたのだ。作り替えたというより、部品を磨き魔力電動効率を伝えやすくしただけで、少しの魔力で起動することができるようになっていた。そのおかげで、普通の人でも十分に風呂の水を温めれる様になったのだ。

「アヤ。ありがとな。晩御飯前にゆっくりさせていただくよ」

「はい。ゆっくりしていてください。お風呂から上がる頃には、晩御飯が出来ると思います」

「いつもありがとな」

「とんでもありません。わたし達の方こそ、いつもご主人様に感謝しています」

「それでもありがと」

 そう言ってヒロトシは、お風呂に入るのだった。

「アヤ……私達は、本当に旦那様に仕える事が出来て幸せ者だな」

「セバスさん、本当にそうですね」




 そして、ヒロトシが風呂から上がると晩御飯が用意してあり、マイン達も席の前でヒロトシを待っていた。

「ごめんごめん!ちょっとゆっくり浸かり過ぎてた」

 ヒロトシが席に着くまで、セバス達は自分の席の前で直利不動で待っているのはいつも後景だった。前からヒロトシは席に着いて待っていてくれと言ったのだが、頑なにみんなはそれを拒否していた。

 ヒロトシの仕事は、研磨作業なのでどうしても風呂が長くなるので、ずっと立って待っていると悪いと言ったのだが、セバス達は本来ならば奴隷の身分で、主とテーブルを同じにするのでさえ恐れ多いのに、先に自分達が座るなんてとんでもないと反論したのだ。

 それからずっとこのスタイルである。

「旦那様、謝る必要はありません」

「でもなあ……いつも悪いと思っているんだぞ?」

「そんなこと思う必要もありませんよ」

「まあ、いいか……みんな早く座ってくれ」

 ヒロトシが席に着くと、みんな一斉に席に着いた。しかし、今日はこのまま食事する事は無く、ヒロトシはカノンを呼び寄せた。

「あ~!みんな、今日はもうちょっと待ってくれ」

 ヒロトシはそういうと、みんながヒロトシに注目したのだった。

「カノン。ちょっとこっちに来てくれ」

「はい……」

 カノンは、ヒロトシに呼ばれて席を立ちゆっくり側に行った。あの大爆発で羽根が無くなり、体の重心が傾きゆっくり歩かないとすぐに転倒してしまうからである。

「長い間、待たせてしまってごめんなさい」

「えっ?」

「これを飲んでくれ」

 ヒロトシは、エリクサーをカノンに渡したのだった。

「こ、これは?」

「エリクサーだよ。今日手に入ったんだ」

「どうやってこれを……」

「今日領主様にもらったんだよ」

「嘘です!領主様が、エリクサーを譲るだなんて……貴族様は、普通は万が一の時の為に、何本か用意しておくものです」

「いや……本当だって!」

「このエリクサーはどうしたのですか?購入したのですか?」

 カノン達は、ヒロトシの活躍により、ヒロトシが領主に無理を言って、大金を叩いて購入したと思っていた。

「いやいやいや、これは本当に貰ったんだよ?今回、領主様に会ったのはスタンピードを撃退した謝礼でお招きして頂いたんだ。しかし、その謝礼金は100億ゴールドだったんだ」

「「「「「ひゃ、100億ゴールド⁉」」」」」

 100億と聞き、この場にいる全員が身を乗り出し大声を出したのだ。

「そんなお金を、ご主人様は受け取ったのですか?」

「いや……それなんだがな……」

 ヒロトシは、そのお金を分割にしてほしいと、領主から言われた事を説明した。それで、自分はそんな大金貰ってもしょうがないから、5億とエリクサーにしてもらったと言ったのだった。

「はぁあ⁉ご主人様は、私にエリクサーを飲ませる為に、95億で購入したと言うのですか?何を考えているのですか!」

「何を怒っているんだよ……」

「そんなエリクサー……頂く事なんかできるはずないでしょ……」

「なんでだよ?これは、カノンの為に貰って来たんだ。カノンが飲まないと意味が無いだろ?」

「旦那様……」

「何だよセバス、今大事なことを……」

「そのエリクサーは、旦那様が万が一の時の為に保存しておいてください」

「何を馬鹿な事を!」

「馬鹿はご主人様です!」

「なっ……」

 カノンは、ヒロトシが自分の為に大金を使って、エリクサーを手に入れてきた事は本当に嬉しく思ってはいた。しかし、奴隷の為に貰えたはずのお金を断り、エリクサーを手に入れてきた事に、どうしようもない罪悪感が生まれていたのだった。

「ご主人様は本当にお優しい方です。私の為にエリクサーを貰ってくれたことは本当に嬉しいです」

「だったら何でそんなに怒っているんだよ?」

「ですが、私はご主人様の奴隷です。そんな所有物に95億だなんて……何を考えているのですか?」

「黙れ!それ以上言うと俺はお前を許さないぞ!」

 ヒロトシは、カノンが自分の事を所有物と言ったことに腹を立てた。家族だと思い、どんなことをしてでもカノンの傷を治したかった。

「何を言っているのですか?明らかにご主人様の行動は異常です。どこの世界に奴隷に95億ものエリクサーを使う人間がいるというのですか?」

「そんなのしらん!どこにいるいると聞かれるのならここにいる。俺が、カノンの傷をどんなことをしても治すと言ったじゃないか?それの何が悪い?」

「ご主人様は、95億を捨てたのと一緒なのですよ?私のせいで、ご主人様が手にいるはずだった物を無駄にさせたのですよ?」

「はっ!馬鹿な事を……このエリクサーで、カノンは元に治るんだ。全然無駄じゃないだろ?」

「しかし!」

「しかしもかかしもない。俺がもらった金をどう使おうが、勝手じゃないか?それとも、カノンにいちいち許可を得ないと、物も買えないというのか?」

「そんな事を言っているのではありません!」

「もし仮に、この買い物で俺が無理をして奴隷に落ちたとしたら、怒られるのも納得しよう。しかし、店は順調に売り上げを伸ばしている。借金など全くないじゃないか?」

「そうじゃなくて、奴隷にエリクサーなど!」

「じゃあ、いらないというのか?だったら、このエリクサーはこのまま……」

「はい、ご主人様の万が一の……」

「叩き捨てる!」

 ヒロトシは、持っているエリクサーを振り上げて、床にたたきつけようとした。それを見たマイン達は悲鳴を上げたのだった。

「きゃあああああああ!ご主人様、何をするのですか?」

 振り上げたヒロトシの腕を、カノンは必死に掴みかかり、エリクサーが破壊されるのを阻止したのだった。

「だって、いらないんだろ?俺も使う必要が無いからな」

「今は必要はありませんが、万が一の時にご主人様が使用したらいいじゃないですか?」

「今、必要なのはカノンだろ?その為に、俺はこのエリクサーを手に入れたんだ」

「ですが!」

「それに、俺は今までお前達を奴隷として扱ってはいないはずだろ?ずっと信頼できる仲間や家族として扱ってきたはずだろ?お前達はそれでも頑なに自分は奴隷だと言ってきたけどな」

「でも、奴隷というのは確かな事で……」

「じゃあ、俺は、今日からお前達を奴隷として扱うと言ったら納得するのか?」

「「「「「「「えっ⁉」」」」」」」

 マイン達が一斉に声を上げた。

「当然今食卓にある食事は、水っぽい具のないスープだけになり、風呂も無くなくなる。夜の12時まで働き詰めになし、ガイン達は当然夜中の3時まで研磨の修行で、朝は5時起きで働く事になるんだぞ」

「主!そ、それはちょっと待ってくれ……本当に死んでしまう」

「だが、奴隷というのは主人の思い方ひとつなんだろ?カノンは、今の状態で普通に俺の護衛が務まるのか?」

「そ、それは……」

「勤まらないんじゃ、ここにいても意味はないよな?」

「うっ……」

「俺はカノンたちをタダ甘やかしている訳じゃないんだぞ?家族として大切にしているが、みんなが協力して日々働いているからこそ、この生活が維持できていると思っているんだぞ?それともお前達が過労死したら、新しい奴隷を購入したらいいと本気で言うのか?」

「それは……」

「もし、それを推奨するならカノン……お前達を奴隷商店に売却して、俺は別の町に行き目立たず一人で、自給自足の生活をするよ」

「「「「「そ、そんな!」」」」」」
「旦那様、ちょっとお待ちください!」

「セバス、俺はこのまま小さな一人で住める家を、森に建てたらどうなると思う?」

「だ、だから……ちょっ、ちょっと……」

「この家には強力な結界が張ってあって、盗賊は一切入れないし安全だよね?森の中でも、同じ結界を張れば一人でも、自由に生活は可能だと思わないか?」

「旦那様!私達が悪かったです!お許しください!私達を、今まで通り旦那様にお仕えさせてください。どうかこの通りです」

 セバスは、ヒロトシに頭を深々下げたのだった。それに続き、他の者達も頭を下げたのである。

「ちょっと外に出てくる。お前達は、ご飯を食べて部屋に戻っていろ」

 ヒロトシは、そのままミトンの町に出て行くのだった。


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