研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第2章 研磨という技術

18話 スタンピードの報酬

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 シルフォードは、ヒロトシの提案に反対した。

「領主様。俺は前から思ってたんですが、俺にそんな大金を払うのなら、町の為に使ってくれたらいいです」

「しかし、これはいくらなんでも……報酬額が少なすぎる。君はもっと貰うべきだよ」

「いえ、ゴールドは1億ゴールドだけでいいです。その代わり何ですが……」

「なるほど!他に欲しいものがあるのだね」

「ええ!領主様はエリクサーを何本か所持していますよね?それを一本わけてほしいのです」

「そんなもので良いのか?」

「ええ。今の俺には、喉から手が出るほど欲しいものですよ」

「しかしだな……それにしても、報酬額が1億とエリクサーだけだとは、君の取り分が少なすぎる」

「少なすぎるなら町にとっても、その分予算が組めることになるんだからいいじゃないですか?」

「そうはいかん!」

「なぜです?多すぎると文句言われるならまだわかるけど、少なすぎると文句を言われるなんてなんかおかしいですよ」

「そういう意味じゃないんだよ」

「どういう意味ですか?」

「つまりだな。君がそれなりの報酬を貰わないと、今後困る事になるんだよ」

「なるほどね……俺が今回これだけの活躍したのに受け取らなければ、今後活躍した人間にそれ以下の報酬になるという訳か」

「そうだ……どんなに頑張っても報酬が少なくなればやる気は出ず、今回のように皆が協力しなくなるんだ。だから君にはそれなりというか、もっと報酬額を受けてもらいたいんだ」

「わかったよ。じゃあ2億とエリクサー1本それ以上はいらない」

「それでも少なすぎる……」

「はあ……貴族様は本当に厄介な人種なんだね……プライドの化け物だ。じゃあ5億!それ以上は貰えないしいらない!」

「わかったよ……それで妥協しよう。しかし、君はもっと強欲になった方がいいかもしれんな」

「俺は強欲ですよ」

「本当に君は冗談がうまい。ヒロトシ君が強欲なら、他の人間はどうなるというのだね」

「それはその人の価値観ですよ。俺はこれでも充分強欲だと思っていますよ」

 ヒロトシの言い分に、シルフォードは大笑いしたのだった。そして、シルフォードは、執事のクロードに言い報奨金とエリクサーを持ってこさせたのだった。

「こ、これでやっと……」

「なんだい?そんなにエリクサーが欲しかったのかい?」

「えぇ……これでやっとカノンを治してあげれる」

「ちょっと待ちたまえ」

「なんですか?」

「君は、エリクサーを誰に使うというのだね?」

「初めて鏡のオークションの時、俺のブースが大爆発があったのを覚えていますか?」

「ああ……あの時は、他の貴族達を救護してくれたのは本当に助かったよ。しかし、あの時君には……」

「えぇ……あの時、カノンという人間が俺を庇い大怪我をしました。その傷がまだ残ったままなんですよ」

「君は本当に、そのカノンという物にエリクサーを使うというのかね?その物は奴隷だったと記憶しているが……」

「ええ!カノンは物ではなく、俺の大事な家族の一人です。だから、俺はエリクサーが欲しかったんですよ」

 数年前だったか、ヒロトシの言ったことは本当だったと、シルフォードは驚き目を見開いた。

「あの時言っていたのは、冗談じゃなく本気だったのか?」

「当たり前です。本当は俺が、ダンジョンに行ってエリクサーを出したかったんですが、その余裕がなかったんですよ」

「君がダンジョンに潜るだと?商人の君が……君はタダの商人ではないな」

「そういう事です。しかし、その時間が取れなかっただけなんですよ。エリクサーが欲しかったんですが、オークションでもなかなか出ない一品ですしね……」

「まあ、そうだな……しかし、本当にエリクサーを奴隷に使う人間がいるとは……」

「領主様!それ以上言うと、いくら領主様でも許しませんよ」

「お~……怖いなあ。領主に対して、そんな事を言えるのは君ぐらいだよ。しかし、一応言っておくが、奴隷にエリクサーを使おうとするのは、世の中広しと言えど君だけだと思うよ」

「そうかもしれませんが、俺はカノンを奴隷とは思っていませんからね。あの子は、俺の家族で守るべき存在なんです」

「わかったわかった。そのエリクサーはもう君の物だよ。何に使おうが君の勝手だ。私はただ驚いただけだよ」

「まあ、いいです。俺の考え方が、世の中の常識からかけ離れているのも自覚はしてますから……それで、俺は帰ってもよろしいですか?」

 ヒロトシは、ここにはもう用はないと思い家に帰ろうとした。しかし、シルフォードはそれを許してはくれなかった。

「まあ、待ちたまえ。ヒロトシ君には、もう少し聞きたいことがあるんだよ」

「えぇ……」

 聞きたい事があると聞いて、ヒロトシは嫌そうな顔をした。それを見た執事のクロードは、クスリと笑ったのだった。

「そんな嫌な顔をするでない。これでも私は、この町の領主なんだぞ?」

「はい……そうでしたね。それで何が聞きたいのですか?」

「今回、君がガーラの町に行き、あんな短期間であの量の塩を手に入れたことだよ」

「ああ……それは秘密です。教える事は出来ませんよ」

「なぜだ?」

「あれは、俺の商人としての強みだからですよ」

「しかし、君の強みは研磨技術だろ?塩は関係ないじゃないか」

「その研磨技術で、塩を手に入れたからですよ」

「じゃあ、研磨技術をあの町に売ったという事かい?」

「馬鹿な事を言わないでくださいよ。研磨技術はそれこそ俺の強みですよ」

「だが……50tもの塩を1ヶ月で手に入れるとすれば……」

「それに俺は、ガーラの町に仕入れに行ったなんて言ったことはなかったはずですが?」

「そういえば……本当に作ったというのかい?」

「そうですよ。海まで行き塩を精製したんですよ。それに50tもの塩を、ガーラの町が俺一人に仕入れさすわけがないでしょ?」

「確かに、そこまでの貯蓄があるとは思えんし、あの町最大の塩問屋は逮捕された店だったよな」

「そういう事ですね。俺が売ってくれと言っても、あの店は今在庫が無いとか言って売ってくれなかったとおもいますよ」

「じゃあ、ヒロトシ君は最初から、闇ギルドがバックにいると思っていたのかい?」

「最初からというのは違いますが、あれだけ塩が不足になれば、目に見えない何かが動いていると思うのは当たり前ですよ」

「そ、そうか……どうしても教えてくれないのか?」

「まあ、無理ですね」

「なぜだ?私との仲ではないか。少しくらい教えてくれても……他言するつもりは、絶対にないから教えてくれないか?」

「領主様……」

「なんだ?」

「今回塩を作った50tもの塩はどうなりました?」

「それは君から、正規の値段で買い取ったじゃないか?今更、値上げと言われても無理だぞ?」

「いやいや、そうじゃありませんよ。普通に考えて、それだけの利益を1ヶ月であげる事は可能ですか?それも輸送費込みで?」

「まあ、無理だな……」

「そう!そんなでたらめな方法は、無理で俺だけの強みですよ。そんな自分だけの物を、商人がベラベラ喋るとおもいますか?」

「うっ……しかし、ヒロトシ君はもう一つの強みである魔道砲は見せてくれたではないか?あれは強みと言わないのか?」

「あはははは。あれは見せても、他人には作れないからですよ。仮に作ったとしてどうするというのですか?」

「そりゃ、作れれば販売するに決まっているじゃないか?」

「いくらでですか?」

「それは……」

 シルフォードが言葉に詰まった訳は、オリハルコンやアダマンタイトの値段である。あの量のオリハルコンを使った魔道具である。国家予算が吹っ飛ぶような、目がとび出るような値段でも買えるかどうかの商品だと想像できたからだ。
 そして、パラボラアンテナのカサの部分には、研磨技術とマジカル化が施してあり、5か月限定の+5効果の持った魔道具だった。つまり、見せても誰も製作すらできない物である。

「つまり、塩は誰でも製作可能な魔道具だという事かね?」

 シルフォードは、ヒロトシからヒントのようなものを貰ったと思いニヤリとして、勝ち誇ったように笑ったのだった。

「まあ、研磨技術があるならね」

 ヒロトシも、しまったと思いながらも平然を装い、素人には絶対に製作は無理だと付け加えたのだった。それを聞き、シルフォードは塩を精製する魔道具があり、それにも鏡のような技術が使われていると思い、ガックリと項垂れるのだった。

「領主様……ひょっとして、塩も町の特産にしようと思っていたのですか?」

 シルフォードは、ヒロトシに言い当てられてギクリとした。

「ああ……今回の事は、町にとって想定外だったんだよ。だから、塩がそんなに簡単に作れるのなら、その方法を教えてもらいたかったんだ」

「なるほどね……塩は、海の近くでしかとれないものな」

「しかし、ヒロトシ君のような技術があれば、塩の値段はもっと安くなるし、ミトンの町でももっと手軽に買う事が出来るし、ミトンの町で精製する事も可能になる。そうなれば、塩は買う物ではなくなり売る物になるのだからね」

 シルフォードは、塩が精製出来れば、2つ目のミトンの町の建設を考えていたのだった。これは、すぐには実現は無理だが、ヒロトシがこの町にいれば可能だと思っていたのだった。
 現実に、スタンピードを抑え込み、研磨技術で冒険者や平民が移住してきて、納税が増えてきていたからだ。町の予算に余裕が出てきたからこそ、そういう計画が持ち上がってきたのは言うまでもなかったのだ。

「まあ、それは諦めてください。俺は、この技術を他人に教えるつもりはありませんから……」

「くっ……どうしてもだめなのか?」

「どうしてもだめです」

 ヒロトシは、きっぱりと断ったのだ。それは当然であり、塩を精製した魔道具は、塩ではなくミスリルを抽出する為の魔晄炉だったからだ。これが、世に出たらオリハルコンの値が、簡単に下落するのが分かるからだ。
 ヒロトシは、魔晄炉のような魔道具で生活したいわけではなく、あくまでも研磨で武器を磨き、この町の人達と忙しすぎない生活をしたいだけだった。


 
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