研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第5章 意外なスキル

19話 ドラゴン焼き?

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 行商人が帰った後、マインはヒロトシにベックの事を伝え、明日の朝10時にもう一度訪問する事を伝えた。

「ほう!うちに売り込みに来るなんて珍しいな」

「いえ、㋪美研ではなくサンライトの方で使ってほしいものみたいです」

「って事は食材かなにかかな?」

「ええ、この地域では珍しいものだと言う事で、誰も買ってくれないと……」

「なるほど!それで人気店のサンライトで使えば他の店でも、買ってくれるかもしれないということか」

「なるほど!商人の考える事はすごいですね」

「使えるかどうかわからないけど、その食材は楽しみだな」

 そして、次の日ベックが再び㋪美研に訪れた。マインはベックを客室に案内して、セバスがお茶とケーキを出して対応していた。

「ほう!これはサンライトで出しているケーキですな。本当においしい」

「ベック様は、サンライトでケーキを食されたのですか?」

「まだだ。クッキーという物とシュークリームを頂いた。今日の帰りにでも、このショートケーキを頂くつもりだったので得した気分だな。あはははははは」

 ベックは、ミトンの町に3日滞在しているようだった。そして、ゆっくりしてパルランの町に帰るつもりだった。ただ、ベックはこの商談に命運をかけていたのが、セバスから見てもよくわかるほどだった。
 ここが行商の怖いところでもあった。要は当てが外れたのだ。珍しいものを持ってきたのに、この町の人間にとってその商品の魅力が伝わらず全く売れていなかった。
 するとそこに、ヒロトシが部屋に入ってきた。ベックは、ヒロトシの姿にびっくりしているようだ。

「これはこれは、何回もご足労していただき申し訳ありません。俺がこの屋敷の当主のヒロトシと言います」

「これはご丁寧にありがとうございます。私はパルランを拠点に行商をしているベックと申します。以後、お見知りのほどをお願いします」

「ベックさんですね。こちらこそよろしくお願いします」

「それにしてもビックリしました。ヒロトシ様がこんなにも若い方だとは思いも知りませんでした」

「そ、そうですか?」

「ええ。噂で聞いていましたが、国王陛下とご友人でいられると聞いていましたので、国王陛下と年が近いとばかりおもっていました」

「なるほど。俺の事を知らない人は、そう思っていても不思議ではないですね」

「はい。だから、今会えてビックリしていました」

「なるほど。確かに俺はこの町から出たのは数えるぐらいしかないもんな。他の町はほとんど知らないしな」

「まあ、町を渡り歩くのは行商人ぐらいですからね。商人としてはヒロトシ様が普通ですよ」

「たしかに。あはははははは」

 ヒロトシとベックの第一印象はお互いいいもので話が弾んでいた。そして、ベックは気合を入れ直したのだった。この商品が売れないとここまで旅が無駄になってしまい、大赤字になってしまうからである。

「それで、今日はサンライトで使って頂きたいものがあるのです」

「それは食材で合っていますか?」

「はい。私が持ってきたのは赤豆というもので、パルランよりさらに南にある小さな村で栽培されている食材です」

「パルランの産物ではないのか?」

「パルランでは胡椒が有名ですが、パルランでもあまり知られてないものです」

「なるほど。それで全く知らないミトンの町に持って大儲けをしようと思って当てが外れたと言う訳だな」

「うっ……今ミトンの町はいろんな行商人が集まってきています。この波に乗れればと思ったのですが、どこに行っても家畜のえさだと言われてしまって……お願いします!一度検討して頂けないでしょうか?」

「まあ、家畜のえさって……それをサンライト出すのはなぁ。まあ、まずは物を見せてよ。話はそれからだよ」

「あっ!申し訳ありません。商品はこちらです」

「こ、これは!」

「はい、これが赤豆と言いその村では、粉にして焼いて食しているのですが、とっても美容や体にいいとされているそうです」

(これは、小豆じゃないか。砂糖と一緒に使えばあんこができるな)
「これはどのくらいの量があるんですか?」

「40kg程なんですが、全部とは言いません半分の20kgでもいいので買い取ってもらいませんか?」

「いいよ。全部買い取ろうか」

「えっ⁉」

「うん。だから、全部買い取るよ。ベックさんもその方が儲けが出るんじゃないのか?」

「あ、ありがとうございます!これで大手を振ってパルランに帰れます」

「に、してもこれを家畜のえさだとは……本当に知られていないんだなあ」

「まあ、こんな硬い豆はまずすり潰さないと食べれないですからね。説明をしてもなかなか受け入れてもらえませんでした……」

「まあ、パンのように小麦をすり潰すとはわけが違うからな……」

「いやぁ……本当に助かりました。これで首をくくらなくて済みます」

「次来たときには、この赤豆をミトンの町で流行らせておくよ」

「ほ、本当ですか?では、また行商しに来ますよ」

「ただ使えるのは、取り敢えずうちのサンライトだけだと思うけど。いろんな料理に使えるのは確かだよ」

「それはありがたい!」

 ヒロトシは、ベックの言値で全部買い取った。これはベックに自分の印象をよくする為だ。これで、ベックはこの赤豆をサンライトに、必ず卸してくれるようになるからだ。

 ベックは、商談を終え笑顔で帰っていった。

「旦那様。全部買い取って本当に良かったのですか?」

「ああ!構わないよ。これでどら焼きが出来るからね」

「どら焼きですか?」

「そうどら焼きだ!まずはこの小豆……いや、赤豆だったな。これを柔らかく煮ないといけない」

「こんな硬い物が柔らかくなるのですか?」

「まあな」

 ヒロトシは厨房に行き、セバスもついてきた。そして、赤豆を水で丁寧に洗い、鍋で煮詰め始めた。厨房にいたアヤは不思議そうに見つめていた。
 
「えっ?ここで放置するのですか?」

「ああ。20分ほど蒸らしておくんだ」

「料理中に放置するとは思いもしませんでした」

 その後、ヒロトシは湯きりをした。

「あああ!何で捨てちゃうのですか?」

「いやいや。これは渋切りというものだよ。そして、もう一度こうやって煮詰め直してアクを取っていくんだ」

「手間がかかるのですね……」

「まあな。硬い物を柔らかくするんだ。手間もかかるという物だよ」

「えええ!また30分も放置するのですか?」

「そうだよ。これで全体の豆が柔らかくなるよ」

 そして、ヒロトシは鍋のふたを開けて砂糖を投入し素早くかき混ぜた。最後に塩を少し入れて味をしめる。そしてできたあんこを別容器に入れて冷ましたのだった。

「味見して見るか?」

「はい!」

 アヤは味見をすると驚いた。あんなに硬い豆が柔らかくとてもおいしかったのだ。

「どうだ柔らかく美味しいだろ?」

「は、はい!本当に柔らかくて甘いです」

 ヒロトシはホットケーキミックスが無いのを思いだした。

「しまった……皮の部分は何で作ろうか……小麦粉だけじゃなんかなあ……」

 ヒロトシは、家畜のえさに使われている米を使う事にした。米は普通にミトンの町にもあるが、米も食べられていない。小麦でパンが主流となっていたからだ。
 ヒロトシもそんなに米に執着があるほうではなく、どちらかと言えばパンの方が好きだった。なので、ヒロトシは米粉を使う事にしたのだ。

 そして、皮を作りそれをあんこを挟んだ。

「これがどら焼きだ!」

「えっ?」

「えってなんだよ?」

「何でそんな名前なのですか?てっきり、ドラゴンの由来があるのかと思っていました。これじゃあ、なんかスライムのようですね」

「いやな事言うな!俺もなんで名前がどら焼きというのか知らん」

「へええ……ご主人様でも知らないことがあるのですね」

「当たり前だろ。そんな事はいいから食べて見な」

 どら焼きを食べたメイド達は、全員幸せそうな顔をしていた。あんこの甘さと食感が、今までにないものでとても好評だった。

 そして、サンライトでは期間限定スイーツとしてどら焼きを販売したが、何故か客の間ではドラゴン焼きと名付けられていた。
 これもビアンカのせいでもあった。小さい子竜がどら焼きと言ったもので、いつの間にかドラゴン焼きと定着してしまったのだ。

 ドラゴン焼きは3種類で販売される事になった。一つはノーマルであんこしか入っていない分で、後の2つは生クリームが入った分とイチゴの入った物である。

「やっぱり生クリームの分がいいわ。甘さがまろやかになって」
「やっぱりイチゴだろ?甘酸っぱくてうまいぜ」
「あたしはノーマルがいいわね。甘さがダイレクトに味わえるわ」

 お客には3種類どれも好評だった。しかし、このスイーツは期間限定なのが、客にとって不服みたいだった。つまり、この期間内に味わえなかった人間がたくさんいたからだ。当然だが、早く次の期間限定として販売して欲しいと言う声が上がっていた。

 サンライトの店長を任されていたリサは、お客に丁寧に説明をしていた。

「なあ、俺はドラゴン焼きを食べていないんだ」
「あたしもよ!」
「何とかもっと販売してくれよ」

「申し訳ありません。中に入っている材料がもうないのです。作りたくとも材料が無いのでは、お出しすることが出来ないのです」

「じゃあ、いつ入荷するんだ?」

「あの豆は、この間入荷したばかりのもので、次いつ入るかわからないのです。本当に申し訳ありません」

 リサは、お客にいちいち説明をして断っていた。そのたびにお客も材料が無いと言うのならしょうがないと諦めるしかなかったのだった。


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