研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第5章 意外なスキル

25話 サキの心配事

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 リディアは呆然としながらヒロトシの部屋を出た。そして、気はここに在らずと言った雰囲気で大部屋に入ってきた。

「ねえ、リディアどうだった?」

「あっ、うん……」

「うんじゃわからないよ。ご主人様はなんて言ってた?」

「うん……もっと休んでおけって……」

「何で何も言ってこないのよ?普通奴隷にこんな扱いしないでしょ?」

「だから、ご主人様はわたし達を本当に奴隷だと思っていないのよ。だから、そう言った扱いを絶対にしたくないと言われて……今はまだ休んでおけって言ってくださったのよ」

「そんな事ってあるの?」

「信じられないけど、ご主人様は本当に私達の事を心配して下さっているわ。わたし、もう一度他人をいえ、ヒロトシ様を信じてみようと思う」

「でも……」

 リディアの言う事に、他の人間達は抵抗があった。

「あ、そうだ。サキさんご主人様が呼んでたわよ」

「えっ?何でわたしを?」

「それは何も言ってなかったわ。ただ呼んできてくれと……」

「まさか、こんな時間からわたしに奉仕を……」

「それはないと思うわ」

「何でわかるの?」

「うん……先ほどまでご主人様と話して分かったんだけど、私達の事を気にかけてくれているのが分かったから」

「そう……」

「怖いのなら、あたしも一緒に行こうか?」

 声をかけてきたのは、同じパーティーだったジュリだった。ジュリも又心を閉ざしていたが、サキの事を心配していた。

「うん……一緒に来てくれる?」

「ああ。構わないよ一緒にいこ」

 そして、二人は一緒にヒロトシの部屋に向かい、部屋の扉をノックした。

「あ、悪いね。部屋に来てもらってって、何でジュリも一緒に?」

「なんでって、サキが一人来るのは怖いって言うから……」

「そうか……付き添ってくれてありがとな。じゃあ、一緒にいてあげてくれ」

「はい……」

 ジュリはサキの肩を抱いて、二人そろって震えていた。それを見たヒロトシは盗賊達を本当に許せなかった。町に帰ってきて、生き残った盗賊達は衛兵に引き渡したが、当然鉱山送りになった。もう死ぬまで逃げる事は出来ないだろう。
 しかし、盗賊達のやった事は彼女達の心に傷をつけて、取り返しのつかない事をしたのである。ヒロトシはサキたちの姿を見て、完治したとしても数年いや十数年掛かってもしょうがないと思っていた。

「それで、サキに用事は何でしょうか?」

「いやな、その姿を見て何をしてほしいか聞きたくてな?サキだけとは言わないが、得に精神的にきつそうだと思ってな。何か気になる事があるのかと思ったんだ」

「そ、それは……」

「な、なんだ?何でも言ってくれていいぞ?俺が出来る事ならいいんだけど……」

「い、いえ、何でもないです」

「まあ、言いたくなければいいが言いたくなったら何時でも言いに来いよ」

「そ、それだけですか?」

「ああ。それだけだよ。無理に聞き出そうとはしないから安心してくれ。ただ、協力出来る事ならできるだけやってあげたいと思うからさ」

「なんでですか?私達は奴隷ですよ。ただ、わたしを働かせたらいいんじゃ……」

 ヒロトシは、リディアに言った事と同じ説明を丁寧にゆっくり説明した。

「だから、俺はお前達をいいように扱ったりしないよ」

「「そんな事!」」

「今は信じれなくてもいいよ。君達はそれだけの事を他人にされたんだ。信じれなくて当然だと思うからね」

「「……」」

「話はそれだけだ。部屋に帰ってもらってもいいよ」

 すると、二人は無言で部屋を出ていくのだった。その様子を見て、ヒロトシは相当根気よくしないといけないと思っていた。しかし、その夜ヒロトシの部屋の扉がノックされた。

「誰だ?こんな夜遅くに?」

 ヒロトシは、夜遅くにノックされ又、誰かが奉仕にでも来たのかと思った。しかし、部屋に入ってきたのはサキ一人だけだった。その姿は恐怖もありつつも、何か言いたいことがあるようだった。

「こんな夜遅くにどうした?」

「あの……昼間どんなこともしてくださると言いましたよね?」

「ちょっと待て!どんなこともとは言っていないぞ。できる事をやってやると言ったんだ。頼みを聞いてできない事もあるかもしれないだろ?」

「じゃあ、出来ないこともあると?」

「そりゃ俺だって人間だ。出来ないことだってあるさ。例えば、お前と一緒にいたパーティーメンバーを生き返らせろと言われても無理な話だろ?」

「そんな願いはしません……オサム達には申し訳ないですが、あれも運命です」

「じゃあ、何をしてほしいんだ?」

「そ、それは……」

「そう言いかけた所で、サキの身体がガクガクと震え出し、ショックで気を失ったのだ」

 それにびっくりしたヒロトシは、大声を出し助けを呼んだ。

「お、おい!サキ、しっかりしろ?おーい!誰か来てくれ!」

 すぐに、セバスとマイン達がヒロトシの部屋に集まってきて、その状況に驚いた。

「旦那様いかがなされましたか?」

「サキが精神的ショックで気を失った……」

 ヒロトシはみんなに説明をして、サキのベットに運んでもらい看護してもらった。サキがマイン達に運ばれてきたのを見てジュリ達も慌てていたようだった。
 夜遅くに部屋を出て言ったので、外の空気を吸いに出たのだろうと思っていたらしい。ここにいる12人は、同じ大部屋で一日中部屋に閉じこもっていたので、人目のなくなった夜にふらっと部屋を出ていたのだった。
 そうはいっても、㋪美研の敷地から出る事は無く、井戸の近くで夜風にあたるのが精一杯の行動だった。




 そして、次の日に目覚めたサキはジュリと一緒に、ヒロトシの所にやってきたのだった。

「ご主人様、昨日は申し訳ありません」

 研磨工房に入ってきたサキはヒロトシに昨日の事を詫びた。

「目が覚めたのか?」

「は、はい……」

 すると、研磨工房にはガインやその弟子たちがいっぱいいた事もあり、サキの顔は真っ青になっていた。

「ジュリ、サキを俺の部屋に連れていってやってくれ。ここにいると、また倒れそうになっているから、俺もすぐに行くから二人で待っていてくれ」

 ヒロトシに言われた二人は頭を下げ、研磨工房を出ていった。

「主、あの二人はまだ酷そうだな……」

「ああ、そうだな」

「主はあいつ等を見捨てないよな?」

「当たり前だろ。何言ってんだよ!」

「さすがそういうと思っていたよ。ワシは主に買われて本当に良かったと思うぜ」

「分かって言うな!」

 ヒロトシは笑いながら、ガインの頭を軽く小突いた。ガインも、今回救出した12人の事を心配していた。普通なら、役に立たない奴隷として主人は奴隷商店に気軽に売ってしまうのが普通だった。

 ガインは、ヒロトシがそんな事はしないとは思っていたが、昨日の夜サキが気絶したと聞き、思わず売らないよなと聞いたのだった。当然ヒロトシの答えは、見捨てないと言ったので、ガインは笑顔となったというわけだ。

 ヒロトシは、仕事の区切りのいいところまで終わらせて、ドロドロになった身体をクリーンの魔法で綺麗にして、部屋に戻ったのだった。

「遅くなって悪かったな」

「「いえ、仕事中に申し訳ありません」」

「それで昨日言いたかった続きでいいのか?」

「はい……」

「それで、俺に何を望む?」

「はい……私には血のつながらない妹がいるのです。私はその妹が心配でなりません」

「はぁあ?妹?心配って何?」

 サキには、親が再婚しその母親には連れ子だった娘がいたらしい。両親は魔物に襲われてもうこの世にはいないが唯一の家族がその妹だった。

「妹は身体が悪くて、あたしがその薬代を稼ぐために冒険者をしていたのです」

「なんで、そういう事は早く言わないんだ!」

 ヒロトシは先の言う事に大きな声を出した。その声にビクッと怯えたサキは身体を震わせた。

「ちょっとご主人様!」

「あっ……スマン……それでその妹は?」

「たぶん、1年ほどは生活できる生活費はあるとは思います……しかし、あの子は身体が強くなくて、普通に働けるとは思いません」

「じゃあ、その妹をここに呼び寄せたらいいんだな?」

「いいのですか?」

「なんだ?違うのか?」

「いえ……そんな簡単に願いを聞いて下さるとは思っていなかったから……」

「何言ってんだよ。妹の面倒ぐらい簡単にできる事じゃないか。それに妹だけを心配するって事は、お前達に頼れる人間はいないって事だよな?」

「はい……」

「それで妹の身体はどういう情況だったんだ?」

「完治とまではいきませんが、だいぶんと良くなっていた状況で……ですが、あくまでも予想ですので体調が悪くなれば寝たきりになると思います……」

「どこの町に住んでいる?」

「パルランです」

「分かったパルランだな?妹の名前は?住所は?」

「シャーロットです。番地は東通り5番地……」

「わかった。ちょっと商人ギルドに行ってくるよ」

 サキは一緒に行くと言ったが、㋪美研の敷地から出る事は出来なかった。通りには人がいっぱいいて恐怖を感じたからだ。盗賊に襲われた後遺症が出てしまったのだ。

「ご、ごめんなさい……」

「お前達は、部屋でゆっくりしておけ。後は俺に任せろ」

 二人を安心させ、ヒロトシは丁度側にいたカノンと一緒に、商人ギルドに出かけたのだった。


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