雨の上がる時・・・

本条蒼依

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9話 気遣い

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 博也は、明美に近づき話しかけ気遣った。

「大丈夫だったか?」

「う、うん……」

「何か俺のせいでごめんな……」

「うんん……」

 明美は、慌てて首を横にふり、博也のせいじゃないと否定したのだ。

「でも、村田君どうしてここに?」

「お前いつもここに放課後ここにいるだろ?それに、今日はなんか思いつめた表情してたから……なんか気になってな」

 明美は、博也が自分を気にかけてくれていたことがなんか気恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

「む、村田君、ありがとね……」

「あ、ああ!気にすんな!」

「でも、何で久保田さんがここにきてたってわかったの?」

「あいつ等、いつも放課後はグランドの近くで集まっているのに姿が見えなくてな。そしたら、教室の窓にあいつ等が見えてさ……」

「えっ⁉それだけでここに来たの?ただ単に、あたし達が喋っていただけかもしれないじゃない?」

 明美の疑問は当たり前である。

「俺さ、自分で言うのも、あれなんだがこの見た目でモテるだろ?」

「村田君……それ自分で言っちゃうの?」

「つっこむなよ!俺だってそんな事普段は自分で言わねえよ」

 明美は、照れている博也を見て、くすくす笑っていた。

「だってぇ~」

「まあ、いいや。それで、前にも同じようなことがあったんだ。立花は、今日思い詰めた感じだったし、同じ状況だったからな」

「久保田さんって、前も同じようなことしたの?」

「あ、久保田さんは初めてだよ。だけど、前の女子も同じような感じの女の子だったからさ……」

「それで……」

「それに立花って人見知りじゃないか!お前が他のクラスの女子、それもあんなに派手な女子と話をするとは思えんしな」

「確かにそうだけど……あたしだって話ぐらいは……」

「確かに最近は、みんなとうちとけてきたとは思うけどな。だから、ここにきて普通に仲良く話しているだけなら、こんな風に出てくることはせず部活に戻ったよ」

「そっか、村田君ありがとね」

 すると、教室に一人入って来た。

「村田ぁ~~~!こんなとこで部活サボって、彼女とお話しとはいい身分じゃねえか!」

「せ、先輩!こ、これは違うんです!」

「何が違うだ!ペアで、パスの練習中にどこに行ったかと思ってきてみたら、お前と言う奴は!覚悟はできてんだろうな!」

「違うんです!これには本当に事情が!なあ?立花も説明してくれよ!」

「先輩さん!村田君はあたしの為に!」

「ああ、いいよいいよ!コイツのフォローしなくても、事情があろうがなかろうが、先輩を放って置いて部活を抜け出した事実は変わらんからな!」

「で、でも……」

「先輩……本当にすいません。だから……」

「くっくっく……村田君には、サボるほどの余裕があるみたいだから、今日はこの後お前だけレギュラーも泣きだす特別メニューだからな!」

「ちょっと待ってください!」

 博也は、先輩に教室から引きずり出されて、グランドに連れて行かれてしまった。明美は何も言えずその場に固まっていた。

「先輩!本当に……だから特別メニューだけは!」

「ああ!村田、お前はよくやったよ。あの子を虐めから守ったんだろ?」

「先輩?さっきの話を聞いていたんですか?」

「お前にしちゃよくやった。褒めてやるよ!」

「だったら!」

 博也は、その功績を認めてもらい、特別メニューの回避を求めた。

「だったらなんだよ?」

「その功績に免じて、特別メニューだけは!」

「それはそれこれはこれだ!後輩が先輩を差し置いて、彼女とイチャイチャしやがって!これは万死に値する!」

「そんなむちゃくちゃな!」

「うるさい!お前は部活をさぼった事実に変わりはない!」

 博也は、理不尽な先輩の態度にブツブツ言ってしまった。

「先輩が持てないのが悪いだけで、完全に八つ当たりじゃないか……」

「村田!何か言ったか?」

「いえ!なんでもありません!」

 博也は、この日足腰が立たなくなるまで、先輩に鍛え上げられたのはいうまでもなかった。

 その日、明美は家に少し帰るのが遅くなると連絡をいれた。校門で明美は博也が部活が終わるのを待っていたからだ。

「先輩酷いっすよ!」

「今日は人助けと言っても部活を抜け出したお前が悪い!」
「「「「「そうだそうだ!」」」」」

「大体お前達も先輩と一緒になって!」

「博也ばっか、女にもててずりぃんだよ!」

「だからって、シュート100本連続で防ぐまで帰れませんって!俺のポジションキーパーじゃない!」

「まあ、今回いじめを阻止したことで、シュートが止められなかったけど、部活は時間通りに終わったじゃないか。普通なら後、3時間延長してもおかしくないんだぞ!」

「そんなキャプテン……」

 サッカー部の部員たちは、しごきではなく和気あいあいとした雰囲気で学校を出てきたのである。




 校門のところで、明美は博也を呼び止めた。

「あ、あの……村田君」

「あっ!立花。どうしたんだよ?」

 サッカー部の人間は、この様子に気を利かせ先に帰ることにした。

「村田!俺達は先に帰るから、また明日!」

「先輩!お疲れ様です!」

「おう!今日は、風呂に入ってマッサージをしろよ!」

「はい!」

 先輩や同級生がいなくなって、2人の間に無言の時間が流れた。

「立花、どうしたんだ?もう帰ったと思っていたよ」

「うん……あたしのせいで部活サボらせちゃって先輩にしごかれたんじゃ……」

「いや、先輩達はそんな酷い人間じゃないよ。今日の事もちょっとしたパフォーマンスで、立花のイジメの事をわかってくれてたしな!」

「そうなの?特別メニューだって連れていかれてたじゃない」

「みんな悪いやつじゃないしな。今日の先輩だっていつものコミニュケーションの一つだよ」

「そうなの?」

「ああ、俺自身が嫌がってないしな。それに最後先輩は俺の身体の心配をしてくれてただろ?」

「確かにそうね」

「立花は久保田達に囲まれた時、不安な気持ちだったろ?それとは全然違うってことだ」

「なるほど……」

「それよりもうすぐ花校祭だな?俺、このお祭りがあるから、この高校に入りたかった所もあるんだよな」

「へえ!そうなんだ」

「だって、春の学園祭みたいなんだぜ?普通は年に一回だろ?」

「でも、なんでうちの高校は年に2回も学園祭があるんだろう?」

「先輩に聞いたら、最初は花校祭って名前じゃなかったんだって聞いたぞ」

「じゃあ、最初はなんだったの?」

「学校が出来たばかりの時、新入生達の多くが部活に入部しなかったらしくて、当時の先輩達が入部させようと、部活紹介の一環として、出店を出したりステージを組んで出し物をしたのが花校祭の始まりだって言ってたよ」

「でも、今は新入生が入らないって事ないもんね」

「だよな!だけど、今はその風習を無くすのは勿体ないという事で、地域のお店も協力があって、本当にお祭りみたいだもんな」

「そういうあたしも楽しみなんだ!」

 博也と明美は、しゃべりながら二人で帰っていると、アオを拾った公園に近づいたところで、路地から人が2人の間に入り込んで来た。


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