完結 これは不実な恋ですか?

心夏

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彼が去ったあとはいつもきちんとかたづけられて、情事の跡を残すようなものは、全部洗濯されている。


好きだと言われて付き合い始めたものの、外でデートをすることはほとんどない。

最初の頃は、食事くらいはしていたけれどそこでの結城さんはまるで他人行儀でまるで落ち着かなかった。

それでも毎回、予約してある高級ホテルでは恋人同士の甘い時間があった。それも、結城さんの懐具合が心配で家に誘うようになってからは途絶えている。


最近は、SEXだけして帰って行くこともおおい。


(まるでセフレだ)


結城さんは"既婚者じゃないか?"そんな疑念を持つようになったのはいつからだろう。


考えてみれば朝まで一緒にいたのは、あのパーティの日だけだ。

家にも行ったことがない。行きたいと強請ってもうまい具合にはぐらかされる。

そう言えば土日や祝日に会ったこともない。生花店にとって土日は繁忙期だからさして疑問にも思っていなかった。


思い当たる節ばかりだったけど、僕はどうしても問い詰めることが出来なかった。

それをはっきりさせてしまえば二人の関係が終わってしまうのが目に見えているから。




僕の職場は都内にいくつも店舗を持ちブライダルから葬祭の装花、フラワーアレンジの教室まで手広く手掛ける大手の生花店である。


僕の働く店舗はカフェが併設されて一段高くなった客席からは店内の植物がすべて見渡せるつくりになっている。


付き合い始めたあとも結城さんは時々カフェにやってきては一人で仕事をしたりしながら小一時間ほど時間を過ごしていく。

もちろん、店での結城さんの態度は今までと変わらない。むしろそっけなくなったくらいだ。

そして今日も、結城さんはカフェにいる。


「いらっしゃいませ。」


「早瀬さん、久しぶり。」


「あれ?田中さん、お店にいらっしゃるなんて珍しいですね。」


「早瀬さんの顔見たくなっちゃって。」


田中さんは近くのオフィスビルに本社を構える大きな会社の、総務部の社員さんだ。普段は大口の注文が多いから法人部から注文が降りてくることが多い。


「またまた、お急ぎのご注文ですか?」


「今夜の社長の会食のお相手に誕生日の方がいるんだそうで。アレンジメントお願いできるかな?」


予算やお相手の年齢やプロフィールを聞きながら花束を作っていく。


「ちょっとお時間いただくのでカフェの方でお待ちいただけますか?」


「ここで早瀬さんのお仕事見てていい?」


「それは別に構いませんけど、面白いことはなにもありませんよ?」


田中さんは気軽に話せるお客様のお一人だ。

そういえば、結城さんと会ったあの日のパーティも田中さんの会社のパーティだった。


「ねえ、早瀬さん今度一緒にご飯いかない?」


僕はじとっと田中さんを見た。


「田中さん、正直に言ってください。誰がお目当てですか?」


正直バイトの女のコも含めてうちの職場は可愛いコ揃いだ。

時々、こういうお誘いはある。本人を誘えないから僕に仲介を頼んでくるのだ。


「いやいや誤解だって。僕は早瀬さんと二人で、、、」


「すいません。これお会計。」


遮るような声に顔を上げると、結城さんが小さなサボテンを手に立っていた。


「あっすみません。ちょっとお待ちいただけますか?まりちゃーん。お会計お願いします!」


僕は奥からバイトのまりちゃんをよんだ。


(何も僕にわざわざ声をかけなくてもカフェの方でも会計できるのに。)


そんなことを考えているうちに田中さんの花束も完成して、『ご飯行かない?』の話は立ち消えになって僕はほっとした。
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