14 / 48
14
しおりを挟む
去って行く車を呆然と見送ってからどうやって店まで帰ったのか記憶がない。
お客様の前に出るほどに気持ちが落ち着かず、バックヤードにまわしてもらった。ループリボンをつくりながら、事態を整理しようとなんとか頭を働かせた。
ニットにジーンズと言うラフな出で立ちだったけどあれは間違いなく結城さんだった。そして上品なワンピースを着た女性とはどう見ても新婚夫婦に見えた。
(結婚してるってこと?)
“これで私達本当の家族になれる“
女性の弾んだ声が鮮明によみがえった。話の内容から推測するに、二人には子供ができたのだろう。
彼としか付き合ったことのない自分と違って、いい年をした大人であれだけ魅力的ならば過去に恋人の一人や二人はいただろう。
でも不思議とそれは男だと思いこんでいた。
(結城さんのことなんにも知らない。)
今更ながらに結城さんについて何も知らないという現実に気がついた。もし本当に結婚しているなら僕はどういう立場になるのだろう。恋人、愛人、浮気相手。
気がついたときにはピンクのループリボンばかりが山になっていた。
▲
あれから2週間、結局僕は結城さんになにも聞けずにいる。結城さんはいつもどおりにカフェに立ち寄るし、家にもやってくる。
なにも変わらない。いやむしろ上機嫌と言ってもいい。
相変わらず日付の変わらないうちに帰って行くけど、僕が帰る前に家に来てはご飯を用意してくれたりする。
今日も彼は僕の家にいる。僕を膝の間に座らせてくるくると髪の毛をいじっている。
「ねぇ蒼。この間の話だけど。」
「なに?この間の話って。」
「一緒に住むって話だよ。」
言われなくてもわかっている。“だってあなたには家庭があるものね“そう喉まで出かかった。
「来年には一緒に住めそうだよ。」
「え…」
予想だにしなかった言葉に身体がこわばった。
奥さんは、赤ちゃんは?聞きたいことがぐるぐると頭の中をまわる。胃が焼けるように熱くなり、僕は結城さんを振り払ってトイレに駆け込んだ。
その日に食べたものは全部身体の中から出ていった。
とんとんとトイレのドアが叩かれる。
「蒼?大丈夫?」
「大丈夫。そう言えばお店で胃腸の風邪が流行ってるって。だから今日は帰って。うつしたらいけないから。」
「でも、心配だから …」
「お願い!おねがいだから今日は帰って…。」
不倫という現実が押し寄せてきて、吐き気がした。
あの幸せな空気に満ちた空間を思い出した。僕は人の幸せを壊そうとしていることに愕然とした
お客様の前に出るほどに気持ちが落ち着かず、バックヤードにまわしてもらった。ループリボンをつくりながら、事態を整理しようとなんとか頭を働かせた。
ニットにジーンズと言うラフな出で立ちだったけどあれは間違いなく結城さんだった。そして上品なワンピースを着た女性とはどう見ても新婚夫婦に見えた。
(結婚してるってこと?)
“これで私達本当の家族になれる“
女性の弾んだ声が鮮明によみがえった。話の内容から推測するに、二人には子供ができたのだろう。
彼としか付き合ったことのない自分と違って、いい年をした大人であれだけ魅力的ならば過去に恋人の一人や二人はいただろう。
でも不思議とそれは男だと思いこんでいた。
(結城さんのことなんにも知らない。)
今更ながらに結城さんについて何も知らないという現実に気がついた。もし本当に結婚しているなら僕はどういう立場になるのだろう。恋人、愛人、浮気相手。
気がついたときにはピンクのループリボンばかりが山になっていた。
▲
あれから2週間、結局僕は結城さんになにも聞けずにいる。結城さんはいつもどおりにカフェに立ち寄るし、家にもやってくる。
なにも変わらない。いやむしろ上機嫌と言ってもいい。
相変わらず日付の変わらないうちに帰って行くけど、僕が帰る前に家に来てはご飯を用意してくれたりする。
今日も彼は僕の家にいる。僕を膝の間に座らせてくるくると髪の毛をいじっている。
「ねぇ蒼。この間の話だけど。」
「なに?この間の話って。」
「一緒に住むって話だよ。」
言われなくてもわかっている。“だってあなたには家庭があるものね“そう喉まで出かかった。
「来年には一緒に住めそうだよ。」
「え…」
予想だにしなかった言葉に身体がこわばった。
奥さんは、赤ちゃんは?聞きたいことがぐるぐると頭の中をまわる。胃が焼けるように熱くなり、僕は結城さんを振り払ってトイレに駆け込んだ。
その日に食べたものは全部身体の中から出ていった。
とんとんとトイレのドアが叩かれる。
「蒼?大丈夫?」
「大丈夫。そう言えばお店で胃腸の風邪が流行ってるって。だから今日は帰って。うつしたらいけないから。」
「でも、心配だから …」
「お願い!おねがいだから今日は帰って…。」
不倫という現実が押し寄せてきて、吐き気がした。
あの幸せな空気に満ちた空間を思い出した。僕は人の幸せを壊そうとしていることに愕然とした
5
あなたにおすすめの小説
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
嘘つき王と影の騎士
篠雨
BL
「俺の役割は、貴方を守ることだ。……例え、貴方自身からも」
国の平穏を一身に背負い、十二年間「聖王」という偶像を演じ続けてきたセシル。
酷使し続けた心身はすでに限界を迎え、その命の灯火は今にも消えようとしていた。
そんな折、現れたのは異世界からの「転移者」。
代わりを見つけた国は、用済みとなったセシルからすべてを剥奪し、最果ての地へと追放する。
死を待つためだけに辿り着いた冬の山。
絶望に沈むセシルの前に現れたのは、かつて冷徹に王を監視し続けていた近衛騎士団長、アルヴィスだった。
守るべき王も、守るべき国も失ったはずの二人が過ごす、狭い小屋での夜。
無価値になり、壊れかけた自分を、なぜこの男は、そんな瞳で見つめるのか。
なぜ、そんなにも強く、抱きしめるのか。
これは、すべてを失った「聖王」が、一人の男の熱に暴かれ、再生していくまでの物語。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる