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僕はトイレから出なかった。
かなり長い間、結城さんはトイレの前で待ってたと思う。
それでも、終電の時間が近づいてきて
「なんかあったら電話して。ほんと…心配だから。」
そう言い残して帰って行った。
結城さんの気配が消えたのを確認して部屋に戻った。さっきまで二人で座ってた場所に腰をおろして彼が買ってきたサボテンを眺めた。自然に涙が頬をつたい落ちていく。それは少しづつ大粒になり僕は我を忘れて号泣した。
▲
健康だけが自慢で、働き始めてから休んだことは一度もなかったのに初めて体調不良で休むことになった。
結城さんとはあれ以来会っていない。正確に言うと結城さんは相変わらず店に来るので顔は合わせているけど、彼が来たときにはなるべくバックヤードに入って接触しないようにしている。
メッセージアプリでの連絡にも最低限の返事しかしてない。
家の電気がついているのを見たら終電の時間まで外で時間をつぶした。そんなときには、家に帰ると必ず食事とメモが置いてあった。日々の他愛もない出来事の報告と“愛してる“の文字。それを見て、僕はまた泣きながら結城さんの作ったご飯を食べた。そしてまた吐いた。
▲
「田中さん、こう言うの電話とかメールとかでも発注できますよ?わざわざ来なくても。」
開店祝いの胡蝶蘭を手配しに来た田中さんに言う。
「早瀬さん、ご飯行こう?俺なんでも奢るよ?寿司でもステーキでも焼き肉でも!」
僕の問を無視して田中さんが言う。
「は?も~またぁ…」
応えながら、田中さんを見ると心底心配そうな顔で僕を見ていた。不意に手首を掴まれた。
「心配なんだ。こんな痩せちゃって。」
いつになく真剣な田中さんの態度にドキリとした。
「心配かけてすみません。そんなふうに心配してもらえるなんて思いませんでした。」
僕は田中さんにぺこりと頭を下げた。
「じゃあご飯行ってくれる?」
田中さんが満面の笑みで覗き込んでくる。
「それは行きません。」
「え~。そこは行こうよ」
二人で目を合わせて笑った。久しぶりに笑った。
「ありがとうございます。」
僕はもう一度頭を下げた。
▲
「早瀬くん、ちょっと話しいい?」
店長に呼ばれてバックヤードの事務室にいく。
「そこ座ってー。」
店長と向かい合って腰をかける。こんなふうに改まって話をすることなんてあっただろうか。
「早速なんだけど、早瀬くん。沖縄行かない?」
かなり長い間、結城さんはトイレの前で待ってたと思う。
それでも、終電の時間が近づいてきて
「なんかあったら電話して。ほんと…心配だから。」
そう言い残して帰って行った。
結城さんの気配が消えたのを確認して部屋に戻った。さっきまで二人で座ってた場所に腰をおろして彼が買ってきたサボテンを眺めた。自然に涙が頬をつたい落ちていく。それは少しづつ大粒になり僕は我を忘れて号泣した。
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健康だけが自慢で、働き始めてから休んだことは一度もなかったのに初めて体調不良で休むことになった。
結城さんとはあれ以来会っていない。正確に言うと結城さんは相変わらず店に来るので顔は合わせているけど、彼が来たときにはなるべくバックヤードに入って接触しないようにしている。
メッセージアプリでの連絡にも最低限の返事しかしてない。
家の電気がついているのを見たら終電の時間まで外で時間をつぶした。そんなときには、家に帰ると必ず食事とメモが置いてあった。日々の他愛もない出来事の報告と“愛してる“の文字。それを見て、僕はまた泣きながら結城さんの作ったご飯を食べた。そしてまた吐いた。
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「田中さん、こう言うの電話とかメールとかでも発注できますよ?わざわざ来なくても。」
開店祝いの胡蝶蘭を手配しに来た田中さんに言う。
「早瀬さん、ご飯行こう?俺なんでも奢るよ?寿司でもステーキでも焼き肉でも!」
僕の問を無視して田中さんが言う。
「は?も~またぁ…」
応えながら、田中さんを見ると心底心配そうな顔で僕を見ていた。不意に手首を掴まれた。
「心配なんだ。こんな痩せちゃって。」
いつになく真剣な田中さんの態度にドキリとした。
「心配かけてすみません。そんなふうに心配してもらえるなんて思いませんでした。」
僕は田中さんにぺこりと頭を下げた。
「じゃあご飯行ってくれる?」
田中さんが満面の笑みで覗き込んでくる。
「それは行きません。」
「え~。そこは行こうよ」
二人で目を合わせて笑った。久しぶりに笑った。
「ありがとうございます。」
僕はもう一度頭を下げた。
▲
「早瀬くん、ちょっと話しいい?」
店長に呼ばれてバックヤードの事務室にいく。
「そこ座ってー。」
店長と向かい合って腰をかける。こんなふうに改まって話をすることなんてあっただろうか。
「早速なんだけど、早瀬くん。沖縄行かない?」
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