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しおりを挟む「こんなところで会うなんて偶然だね。」
「結城さん。どうしたんですか?」
急に声をかけられて驚いたけど見知った顔にほっともした。
「私も招待客だよ。こちらの社長にはお世話になっていてね。今日の装花は君が?」
「はい。店長がインフルになっちゃって。あ、デザインしたのは店長ですよ。僕はプラン通りに生けただけです。」
「謙遜することないよ。実際に生けたのは君だ。ほら見て?」
唐突に結城さんが耳元に唇を寄せてきた。
「女の子たち、写真撮ってる。」
メインの装花に目をやると、シャンパングラスを寄せて写真を撮っている女の子たちが目に入った。
結城さんが寄せた唇から漏れる吐息が耳にかかり顔が熱くなった。
「顔赤いよ?」
「あ・・・お酒弱くて。僕あんまり飲めないんですよ。苦いの苦手で。」
咄嗟にアルコールのせいにしてごまかした。
「じゃあ、あのオレンジベースのカクテルは?」
「えっ」
「グラス空になっているよ。」
結城さんはそう言うと、僕のグラスを奪ってウェイターに寄っていくと新しいカクテルを持ってやってきた。
「はい。どうぞ?」
「ありがとうございます・・・」
▲
適度なアルコールはコミュニケーションの助けになる。
「IT関係のお仕事か。イメージ通りです。結城さんの。」
なんていうか知的な大人雰囲気が漂っている。
「そう?早瀬くんもお花屋さんのイメージにピッタリだ。」
「お花屋さんのイメージってどんなですか?」
「可憐。」
「なんですかそれ?僕おとこですよ!」
予想外のイメージに思わず笑ってしまった。
花屋は見た目の華やかさに反して3Kだ。
「ほら、その笑い方。可愛い。」
「いやいや、花屋なんて泥んこ、手荒れは当たり前で。手なんかガサガサです。」
可愛い何て言われてどきどきしたのを隠すように荒れた手を見せた。
「本当だ。荒れてる。細い指で綺麗な手なのに。」
おもむろに手をとられて甲を撫ぜられた。
「僕おかわりとってきます!」
慌てて手を引っ込めるとグラスの残りを飲み干してその場を離れた。今夜の自分はどこかおかしかった。
▲
パーティーが中盤にさしかかる頃には僕はすっかり酩酊していた。気詰りだったパーティに長居してしまったのは結城さんに会ってしまったからだ。
僕は、人に興味がなかった。女にも男にも。
学生時代も、誰が誰を好きだ、くっついた別れたそんな話を聞きながら自分には関係ないと思っていた。
植物に触れている方がよっぽど安らいだ。
「ぼくは、そろそろしつれいします。」
これ以上飲んでしまったら帰れなくなってしまう。
「早瀬くん、呂律が怪しい。本当にアルコールに弱かったんだね。」
結城さんの眉が困った様に八の字に寄せられている。
「ふふっゆうきさん、まゆげはちのじ。」
「酔っちゃった?」
「ふふっよってます?ぼく?」
「ロビーに出ようか?」
結城さんに腰を支えられるようにして僕はロビーに出た。
「ごめんね。ちょっと飲ませすぎちゃったね。」
ロビーのソファに僕を座らせると頭を撫でてくれた。
「お水もらってくるよ。」
楽しかった。ふわふわと気持ちよかった。僕は幸せな気持ちでソファに凭れた。
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