完結 これは不実な恋ですか?

心夏

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結城さんは僕の勤める花屋の常連だった。

初めて店に来たのは2年前の春だった。





産休に入る部下の女性に花束をとやってきた。


「えっと、赤ちゃんの性別ってわかりますか?」


「うん?男の子って言ってたかな。」


「じゃあ、ブルースターいれましょうか。花言葉は信じ合う愛。」



出来上がった花束を渡しながら


「ベイビーブルーは男の子のラッキーカラーです。生まれて来る赤ちゃんが幸せでありますように」


と営業用スマイルでにっこり微笑った。


結城さんは一瞬目を大きく見開いた。


(驚いてる?)


ちょっと格好つけすぎただろうか。

急にさっき言ったセリフが気恥ずかしくなり俺は俯いた。


結城さんはそんな僕を覗き込むように


「ありがとう。」


と囁いた。





それからしばらくして、店に併設されたカフェでたまに結城さんを見かけるようになった。

カフェで珈琲を飲みながら仕事をして帰りに決まって花を買っていく。


顔を合わせると他愛もない話をした。店の近くを寝ぐらにしている野良猫の話、最近はまってるコンビニスイーツの話。

会話するたびに親しくなれた気がした。



結城さんは【大人の男】を体現したような人だった。話題が豊富で、洗練されていて・・・

僕は結城さんが店に来ることが楽しみだった。


そんな日常が数カ月、繰り返されるうちに毎月決まった日に彼が小ぶりのブーケを買っていくことに気がついた。


ある時、


「15日にはいつもブーケを買われますよね?記念日なんですか?」


とさりげなく聞いてみた。


結城さんは、


「あぁ、うん・・・」


と曖昧に笑うだけでこたえなかった。


「はい!どうぞ!」


出来上がった花束を努めて明るく渡した。


(彼女かな?)


毎月、彼に花を送られる可憐な女性を想像するとなぜかチクリと胸が疼いた。





その日僕は、季節外れのインフルエンザにかかった店長のかわりにお得意様の周年パーティーの装花を届けにホテルに来ていた。


「ありがとうございました。これで今日の作業は終了です。」


「店長さん、インフルだって?早瀬くんも大変だったね。」


「こちらこそ、ご迷惑おかけしました。」


「いやいや急な代打なのに、なかなかどうしていい出来だよ。パーティー楽しんで行って。」


「えっと僕は今日はこれで……」


「え~そんなこと言わずにお祝いだから。ね?楽しんでいってよ。」


そう言うと田中さんは僕の答えを待たずに去っていった。


仕方なくアシスタントと店の車を先に返すことにした。


ホテルでの作業では出入りの業者にもドレスコードがある。

今日は、一応ジャケットスタイル、予備の花材で作ったコサージュを胸に挿した。これでそれらしく見えるだろうか。


担当の田中さん以外知り合いのいない僕は所在無く壁に凭れた。


(とっとと帰ろう。)


乾杯で配られたシャンパンを一気に飲み干した。


その時、肩をポンポンと叩かれた。

振り向くと結城さんがにこにこと笑っていた。
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