33 / 40
第33話 第二至上主義論者の夏休み③
しおりを挟む
「…どうも~」
誰だ?
大宙の呼びかけに応じて、図書棚にでも隠れていたのか見知らぬ一人の女性がひょっこりと姿を現した。そのスーツ姿を見るにこの学校の生徒ではなさそうだが、教師にしては少し若く見える。それにしてもこの女性、少々身なりがずぼらに見えて仕方ない。髪は寝癖が残ってぼさっとしているし、スーツも着ているが着慣れていない感じがひしひしと伝わってくる。眼鏡を掛けていることから真面目に見えなくもないが、その丸眼鏡同様に彼女の雰囲気も丸く穏やかに見えてしまう。
「…教育実習の先生か?」
「お!ご名答!さっき図書館の前で偶然にも会ったから呼んでおいたのさ」
「えへへ…。いや~、まだ教師じゃないですけど、生の生徒と交流するの貴重な機会ですから~」
そう笑いながらも、先生は机を挟んだ我々の前の椅子に腰掛けた。何やら頼りない雰囲気を醸し出す先生であったが、しかし彼女も一人の大人の女性であることからも我々には導き出せない答えを教授してくれるかもしれない。
「まずは、自己紹介から。私は“二階堂 次郎”です。それでこっちがご存知かもしれませんが、“九十九 大宙”」
「よろしく~。私の名前は“三日月 智秋”です~」
「それでは三日月先生。私の恋の悩みを聞いてください」
「ド~ンと来~い!」
かくかくしかじか。
「…というわけなのですが、いかが思いますか先生?」
私は4月からこれまでの期間における一条さんとの出来事を掻い摘んで説明した。“子どもの恋愛”も“大人の恋愛”も一条さんのお父様から出た言葉で個人の見解に過ぎないかもしれない。それを他の大人に聞いてもらうことで、その真偽を今一度図ろうと画策したわけだ。
「いや~、今時の高校生は難しく考えておるのですな~」
「え?」
しかし、三日月先生から返された言葉はのほほんとしたもので、少し拍子抜けしたものだった。
「む、難しい…ですか?」
「そうだよ~。別に一度付き合ったからと言って、死ぬまでずっと一緒にいないといけないわけでもないんだしさ~。もっと簡単に付き合ってみたら~?」
「し、しかしですね…」
「一緒に遊びに行くとか、手を繋ぐとか、キスするとか~。もっと気楽でいいんじゃな~い?」
「キ、キスもですか!?それは…ちょっと…」
「そう~?好きだな~って思ったら、してもいいんでない?そんで~、その人への好きが減ってきたら別れて~、また他の人が好きになったら付き合うとかさ~」
「そんな軽い気持ちでいいんでしょうか?」
「いいんだよ~、恋なんだからふわふわした気持ちで付き合わないと~。好きだから手を繋ぐんじゃん?好きだからキスするんじゃん?それを我慢してしないっていうのは、逆に“そんなことをする関係ではない”って相手に思われちゃうかもよ~?」
誰だ?
大宙の呼びかけに応じて、図書棚にでも隠れていたのか見知らぬ一人の女性がひょっこりと姿を現した。そのスーツ姿を見るにこの学校の生徒ではなさそうだが、教師にしては少し若く見える。それにしてもこの女性、少々身なりがずぼらに見えて仕方ない。髪は寝癖が残ってぼさっとしているし、スーツも着ているが着慣れていない感じがひしひしと伝わってくる。眼鏡を掛けていることから真面目に見えなくもないが、その丸眼鏡同様に彼女の雰囲気も丸く穏やかに見えてしまう。
「…教育実習の先生か?」
「お!ご名答!さっき図書館の前で偶然にも会ったから呼んでおいたのさ」
「えへへ…。いや~、まだ教師じゃないですけど、生の生徒と交流するの貴重な機会ですから~」
そう笑いながらも、先生は机を挟んだ我々の前の椅子に腰掛けた。何やら頼りない雰囲気を醸し出す先生であったが、しかし彼女も一人の大人の女性であることからも我々には導き出せない答えを教授してくれるかもしれない。
「まずは、自己紹介から。私は“二階堂 次郎”です。それでこっちがご存知かもしれませんが、“九十九 大宙”」
「よろしく~。私の名前は“三日月 智秋”です~」
「それでは三日月先生。私の恋の悩みを聞いてください」
「ド~ンと来~い!」
かくかくしかじか。
「…というわけなのですが、いかが思いますか先生?」
私は4月からこれまでの期間における一条さんとの出来事を掻い摘んで説明した。“子どもの恋愛”も“大人の恋愛”も一条さんのお父様から出た言葉で個人の見解に過ぎないかもしれない。それを他の大人に聞いてもらうことで、その真偽を今一度図ろうと画策したわけだ。
「いや~、今時の高校生は難しく考えておるのですな~」
「え?」
しかし、三日月先生から返された言葉はのほほんとしたもので、少し拍子抜けしたものだった。
「む、難しい…ですか?」
「そうだよ~。別に一度付き合ったからと言って、死ぬまでずっと一緒にいないといけないわけでもないんだしさ~。もっと簡単に付き合ってみたら~?」
「し、しかしですね…」
「一緒に遊びに行くとか、手を繋ぐとか、キスするとか~。もっと気楽でいいんじゃな~い?」
「キ、キスもですか!?それは…ちょっと…」
「そう~?好きだな~って思ったら、してもいいんでない?そんで~、その人への好きが減ってきたら別れて~、また他の人が好きになったら付き合うとかさ~」
「そんな軽い気持ちでいいんでしょうか?」
「いいんだよ~、恋なんだからふわふわした気持ちで付き合わないと~。好きだから手を繋ぐんじゃん?好きだからキスするんじゃん?それを我慢してしないっていうのは、逆に“そんなことをする関係ではない”って相手に思われちゃうかもよ~?」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】ルースの祈り ~笑顔も涙もすべて~
ねるねわかば
恋愛
悪路に閉ざされた貧しい辺境ルースライン領。
兄を支えたい子爵令嬢リゼは、視察に来た調査官のずさんな仕事に思わず異議を唱える。
異議を唱えた相手は、侯爵家の子息で冷静沈着な官吏ギルベルト。
最悪の出会いだった二人だが、領の問題に向き合う中で互いの誠実さを知り、次第に理解し合っていく。
やがてリゼが王都で働き始めたことを機に距離を縮める二人。しかし立ちはだかるのは身分差と政略結婚という現実。自分では彼の未来を縛れないと、リゼは想いを押し込めようとする。
そんな中、故郷の川で拾われる“名もなき石”が思わぬ縁を呼び、リゼの選択と領の未来を動かしていく――。
想いと責務の狭間で揺れる青年と、自分を後回しにしがちな少女。
すれ違いと葛藤の先で、二人は互いを選び取れるのか。
辺境令嬢の小さな勇気が恋と運命を変えていく。
※作中の仕事や災害、病、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。
※8万字前後になる予定です。
うわさの行方
下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。
すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。
戦場から帰るまでは。
三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。
ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。
たまこ
恋愛
公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。
ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。
※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。
あざとさを捨てた令嬢は、若き公爵に溺愛される
古紫汐桜
恋愛
婚約者の裏切りを目撃し、命を落とした“私”が目を覚ましたのは、
見知らぬ貴族令嬢の身体の中だった。
そこは、誰かの悪意によって評判を地に落とした世界。
かつて“あざとさ”で生きていた彼女の代わりに、
私はその人生を引き受けることになる。
もう、首を揺らして媚びる生き方はしない。
そう決めた瞬間から、運命は静かに歪み始めた。
冷酷と噂される若公爵ユリエル。
彼もまた、自らの運命に抗い続けてきた男だった。
そんな彼が、私にだけ見せた執着と溺愛。
選び直した生き方の先で待っていたのは、
溺れるほどの愛だった。
あざとさを捨てた令嬢と、運命に翻弄される若公爵。
これは、“やり直し”では終わらない、致命的な恋の物語。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる