死を見届ける者

大和滝

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一章 花の咲く死をあなたに

EP12 綿飴と寿命

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 新学期から早1ヶ月、今日は5月5日のこどもの日。俺と椿さんは何故か、いつもの広場にはピクニックシートを敷いてその上にコンビニスイーツを並べていた。
 事の発端は椿さんの「コンビニスイーツ制覇したい!!善は急げだから早速いくよ!」から始まった。そしてクーラーボックスを持たされ、片っ端からコンビニをまわり、各種スイーツを買い回った。そして今に至る。いったい何個あるんだろうか。種類は同じでも違う店のものなら買ったから、ざっと50は超えているように見えるが。
「あの椿さん、これ買うために今日いくらお金使いました?」
「9758円」
 どう考えてもコンビニに払う金額でなくてクラッと目眩が襲う。さらにそれを軽々しく言う椿さんのせいで頭も痛くなってきた。この財布の緩さは俺が今のうちに矯正しておくべきだろうな。
「椿さん、退院してお金が有り余っているのはわかりますけど、その金遣いの荒さは何とかしましょう?いざという時に使えなくなりますよ」
 椿さんは大きく首を横に振って言う。
「そのがいつ来るかもわからないし、来ないかもしれないじゃない。それだったらもう今使うしかないの。走馬わかってる?私はあと1年、いや半年持たないかもしれないの。そんくらいのお金くらいはあるから大丈夫だよ」
「そういう問題じゃなくないですか。ていうか最近椿さん、寿命のことを出したらなんでも大丈夫だと思ってませんか?前のクレーンゲームで大きいぬいぐるみをたくさんとった時だって、両替機に何枚も何枚も千円札入れてたじゃないですか。そしてその時もそんな感じのこと言って誤魔化したし」
 苦い顔をする椿さん、図星のようだった。
「でもさ、そんなこと言って毎回毎回付き合ってくれてる走馬も、大概だとわたしは思うなぁ。楽しんでるんでしょ?」
 あーあ図星だ。俺は返す言葉がなくなった。確かに俺も椿さんと出会ってからのこの1ヶ月は、去年のつまらなくただただ死を探す生活から一変した。椿さんのわがままに振り回されて毎日が充実している。きっとそれは終わるのがわかっているから楽しめるんだと思う。そのせいか毎回椿さんの言うことがわかって、強く言えない。今回もそうだ。もう既に丸め込まれてしまった。
「仕方ないですね。それ言われたらなんもいえませんから。じゃあ食べていきましょうか、そこまで暑くないけどずっと放置してたら悪くなっちゃうし、虫集まりますよ」
 俺が指差したところにはありがプリンの蓋に乗っていた。ギョッとした椿さんが蟻を手ではらい、急いでスプーンを持ってプリンの蓋を開け食べ始めた。俺もショートケーキを手に取り食べ始めた。
「どう?美味しい?それはサイフルマートの『フワフワスポンジの濃厚苺ショート』だね。生クリームが濃厚らしいけど、どうなんだい」
「どうなんだいって言われましても、よくわかんないです」
「え~なんでぇ」
 言いながら椿さんは他の店のプリンを食べ始めた。プリンが好きなのだろうか?
「椿さんの好きなスイーツってなんですか?プリン?」
「プリンも好きだけど、1番はやっぱり綿飴なんだよなぁ」
 プリンをすくってもくもくと食べながら言われてもと感じだが、綿飴とは意外に感じた。
「小さい頃にお母さんに連れて行ってもらったお祭りで買ったんだ。ザラメをなんか知んないけど糸にしただけの原価10円くらいなのにさ、食べたくて駄々こねたんだ。わたしのお母さんったら店員さんに、その袋はいらないから中身だけを100円で売って頂戴って言うの。通用するわけなくて結局300円払って買ってもらったんだ。それが本当に美味しくて綿飴が大好きになった」
 そうか、椿さんの好物っては全部入院する前の食べ物なんだ。あ、いや違う。そうしたいのかもしれない。入院前の生活を自分の中で煌びやかなものに美化したいのかもしれない。
 あ、そういえば綿飴といえば祭り…今年も夏祭りがあったな。そう思いながら俺は椿さんに言う。
「なら今年の8月の夏祭り、一緒に行きませんか?綿飴も食べれますし、いい思い出にもなると思いますよ」
 甘ったるい口で綿飴と口にするとなんだか吐き気がする。
 三つ目のプリンを食べ終えた椿さんは考えた末に手でOKサインを出す。
「いいね。行こう」
 明るく見せるため、それにのるがなんとなく考えていることがわかってしまったが、今のうちは秘するが花なのだと思い俺は素直に「楽しみですね」と返した。
 まだまだ眼科には甘ったるいものが広がっている。俺までどうにかなるんじゃないだろうか。椿さんはプリンを黙々と食べていた。
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