60 / 66
番外編
メリクリっ!! 健司と壮介篇
しおりを挟む『あ~彼女欲しいぃぃ。ひぃまぁぁ~』
『煩いぞ、健。仕事の邪魔だ、どっか行ってろ』
クリスマスだと云うのに予定が全く無い如月健司と、クリスマスだと云うのに仕事が詰まってそれどころでない立花壮介。
二人は壮介の書斎いた。
書斎と云ってもソファーベッドもあり、わりと広い。そこに暇だ暇だと喚きながら、健司がゴロゴロしている。
背後で煩くしている幼馴染みを無視することにして、壮介は今日中に脱稿せねばならない仕事をしていたのだが、何分少し前からどん詰まりだ。
もう暫くしたら編集者が原稿を取りに来てしまう。
『壮介~休憩とれよぉ~相手しろよぉ~』
『……』
気分転換に健司の相手をしてやらなくもないが、向こうは暇人であるのに変わり無い。相手をしたら最後、日付は簡単に変わってしまうだろう。
『そーすけー』
イライラしながら、健司を見る。
『今度は何だ!』
ニコニコして見てくる。
『?』
訝しんでいると、健司が、はい、と掌に乗った細長い物を出した。
『いつもありがと』
緑色の包み紙、赤いリボンが付いている。
『健?』
キョトンと壮介は間抜けな顔をしてしまった。
『なんだよ、気付けよ。仕事馬鹿』
『ばっ?』
『はいはい、私は馬鹿ではない~だろ?』
そう云って手にしていた物を乱暴に壮介に押し付けた。
『頑張って選んだんだから使えよ?』
『?』
赤いリボンを外して緑色の包み紙を広げる。
高価そうな黒い箱だ。
意外と軽い黒い箱を慎重に開けると、ワインレッドと金の万年筆が現れた。
『あ……』
『この前、なんかよく分かんない文学賞受賞したのに、なんのお祝いも出来なかったからさ、クリスマスと一緒だけど……』
いつものニコニコ顔だ。
壮介はそのニコニコ顔が大好きだ。
子供の時も大人になっても健司は変わらない。
『……ありがとう……』
あまりに小さい声だったから、幼馴染みにまで聞こえない。
首を傾げる健司についいつもの悪態をついてしまう。
『……そうだ。お前、少しは本を読めよ、この実験オタクが』
『はぁ? 壮介、人が折角プレゼントしたのに、なんだよ、その言い草は!』
返せ、と万年筆に手を伸ばすが、壮介は軽々とかわす。
『しょうがないから貰っておいてやる』
大切に懐に仕舞い込んだ。
『しょうがないってなんだよ!』
『ハハハ』
その日から壮介のペンケースにはワインレッドの万年筆だけが、我が物顔で鎮座するようになった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
25
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる