馬鹿な婚約者と自称ヒロインがまぐわっておりましたので、婚約破棄後に真実の愛とやらの行く末を見守りますわ

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これが私の、誠実のかたちでございます

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 試験初日。

 朝の空気はいつもより少し冷たくて、けれど不思議と背中を押してくれるような澄んだ空模様でございました。

 私はいつも通り、少し早めに登校いたしましたわ。

 重ねてきた日々が試される。そんな緊張が胸に忍び寄ってくるのを、深呼吸ひとつで押し返します。

 本日の試験時間割は以下の通りです:

 【一時限目】一般教養(文法・文章理解)
 【二時限目】算術応用
 【三時限目】貴族制度史

 どの科目も、貴族としての基礎的教養とされる重要な分野。気を引き締めて臨まねばなりません。

 ───

 一時限目 文法・文章理解

 内容は決して難解ではございませんでした。

 けれど設問の裏を読み、作者の意図を汲み取るには、読み手の感性と観察眼が試されます。

 周囲では、筆が止まる音、ため息、紙をめくる音。

 私はそれらに惑わされず、ただ目の前の問いと向き合っておりました。

 日々、黙読と筆写を繰り返してきた成果は、確かに私の指先に宿っているように思えました。

 ───

 二時限目 算術応用

 時間配分が問われる設問ばかりでございました。

 計算式の簡略化、出題の意図を読む視点、数値に現れない前提条件の見極め。

 私は、設問用紙の端に素早く整理メモを描きながら、ひとつずつ冷静に解いていきました。

 クラウディオ殿下の得意分野でもあり、同じ試験空間にいらっしゃることが、どこか励みにもなっていたのかもしれません。

 ───

 昼休憩 静かな満足と、気配りの言葉

「リア、前の問題、かなり速かったね。……もしかして満点狙い?」

 昼食後、ジークフリード殿下が柔らかく尋ねてくださいました。

「いえ……ただ、与えられた問いには誠実に向き合うべきかと存じまして」

 私がそう返しますと、クラウディオ殿下は、ほんの少しだけ目を細めて仰いました。

「誠実さは、時に力を凌ぐ。……その姿勢は、侮れないな」

 たった一言で、胸の奥が少しだけ、あたたかくなりました。

 ───

 三時限目 貴族制度史

 午後の授業時間いっぱいを使う長丁場。

 設問は、歴代の法令や通達、儀礼の変遷、他国との比較など多岐にわたっておりました。

 歴史は暗記だけでは語れません。

 背景を知り、変遷を読み解く視点と、現在にどう繋がっているかを見極める洞察が求められます。

 私は、祖父の書斎にあった古い資料や書簡を読み込んできた日々を思い出しながら、一問ずつ丁寧に、論述を重ねてゆきました。

 ───

 試験一日目・終わりに

 試験をすべて終えた頃には、空はすっかり夕暮れ色に染まっておりました。

 窓の外には朱色の光が伸びて、馬車の影を長く映しております。

 今日の結果は、明日には判明するのでしょう。

 けれど、後悔はひとつもございません。

 私は、私なりに、きちんとやれた。

 それだけで、今日はもう、十分でございます。

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