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リヴァイアサン
しおりを挟む「なっ……」
倒壊した建物を見て言葉を失う。森の奥にひっそり暮らしていたからか、ここまで狂暴なモンスターは初めて見た。
隣に並ぶルナさんが沖に目を向けて、直後、波止場から出る一艘の船に目を留める。
「ずいぶん暴れてるが……向こうからミゼンの自警が行くらしい。オレたちも同行しよう」
「え? いや無理ですよ。もう出発してるし……って! わわっ」
言うや否や、ルナさんが私の腰をガッと掴んで荷物みたいに肩に担ぐ。あまりに驚きすぎて抗議すら忘れる。
けど、揺らされながら必死に振り返った先で、彼が向かってる方向に気付くと慌ててしまう。
「ま、待って! まさか」
「行くぞ。しっかり掴まってろ」
波止場の先で、いきなり踏み込みジャンプする。停められていた小さな船を経由して、今しがた出たばかりの中くらいの船にダイブした。
突然乗り込んだ私たちに、当然乗っていた人たちが驚く。荷を運んでいた青年がルナさんに声をかけた。
「アンタら、まさか冒険者か?」
「ああ。共に行くが構わないか?」
「むしろ助かるよ。ここに戦闘に長けてるものは少ないんだ」
状況を教えてくれ、と私を甲板に下ろしたルナさんが言う。青年が説明し始めて、二人で並んで歩き始めると私は一人ポツンと置いてかれた。
周りの人たちの視線が、一気に私へ集まる。
「……あ、あはは」
不自然に笑ってフードで顔を隠した。胸が緊張やらビックリやらで、ドキドキしっぱなし。一呼吸置く間もなく、急いでルナさんを追いかけた。
二人の近くに行くと、会話が聞こえてきた。ちょうどリヴァイアサンの話をしている。
「……捕獲まではいかないが、特殊な網を使って動きを止める計画になっている。今は別の奴らが追いかけ回しているせいか、町が攻撃されてないのが幸いだ」
「なるほど。なら、その引き付け役をオレたちがすればいいってことだな」
「え!?」
「ん?」
聞き捨てならない言葉に、思わず声が出てしまう。ルナさんに反応されて、慌てて首を振った。
いやいや、ルナさんはまだしも。私は引き付け役にはなれないでしょ。絶対。
でもこれ、私も人数に入ってるよね、ってルナさんを見上げたら、彼はリヴァイアサンを見ていた。
「リアナ、オレが先に行く。どのくらいで援護できそうだ?」
「援護……」
これって正直に話すべき? 戦闘経験ないし、そもそもそんなにすぐ発動出来るとは思えない。
いつも麻紙を前に一日中、頭を捻らせているのに。
けど出来ないって言ったら、なんで魔王討伐に志願したって責められそう。50万SRだって、取り上げられるわけにいかない。
私はドッドッドと騒ぎ立てる胸を押さえて、せわしなく視線を動かしつつ、小さく答えた。
「…………い、一時間くらい」
「一時間だと?」
「あ! いえ、30分……じゃなくて10分?くらいあれば」
ルナさんの反応に怯えつつ、適当に数字を言う。ルナさんが悩むように顎に手を添えて、何かを考える。それを緊張しつつ待つ。
体感、数十分。実際、数秒。
ルナさんは小さく頷いた。
「それくらいなら問題ない。折を見て船を近づけてくれ」
「ああ、わかった」
青年が答える。私は嫌な汗をかき始める。
どうしよう……本当に出来るかな。
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